第26話 過去と記憶
「これが、
あまりの大きさに一同絶句する。
「お、大きすぎないですか...?」
上を見るが、目が見える範囲では果てが見えない。それ程に大きい。
「頂点が見えないなぁ...」
ジト目で三角の口になりながら上を凝視するルヴラ。
「そりゃあそうじゃろう...この樹はこの世界で1番大きい樹じゃからな。正確な値はしらんが、大体3000mあるらしいぞ」
「さ、3000...」
もはや驚きを通り越して、ドン引きしてしまうカラ。
「そんな大きさだと、上の方雪とか積もらないの?大丈夫?」
クゥロは
「
と、
〝あの...アヴァロンさん〟
アヴァロンの様子に気になった事があったのか、シフィはアヴァロンに質問をする。
「...ん?どうしたんじゃ?」
〝この樹は、生きているのですか...?〟
そんなシフィの質問に、アヴァロンは不思議がり、詳細を聞こうとする。
「生きとる...とはどういうことかのぅ?」
〝いや、アヴァロンさんの界憶の大樹の接し方が、まるで生きてるかのような感じだったので...〟
そういうと、アヴァロンは目が点になる。そしてその後、堪えきれず笑ってしまう。
「おもろいこと言うのぅ...しかしシフィ、お主鋭い。シフィが察する通り、
「え...!?」
アヴァロンの発言に、驚愕する一同。
樹が生きてる...か、日本では確かに、一定以上の歳をとると、妖怪化するとかあるけど、そういうのと似たような感じなのかな...
カラは
「ところで、どうやってこの樹から記録を見るの...?」
そうルヴラは質問する。クゥロは本題に入ったと安心する。
「実はこの更に下の階で部屋あってのぅ...。そこで記録を見ることが出来るんじゃ」
アヴァロンはそう言いながら、壁にあるスイッチを押す。すると、
「うおぉ...!!螺旋階段だ〜!」
「ほんとだ...螺旋階段...。」
カラ達は床が螺旋階段になった事に驚愕しつつも、目を輝かせ興奮する。
〝下...暗くて足場が見えないです...〟
シフィが少し肩を震わせながらそう言うと、カラはシフィの前に座り
「おいで?おんぶするよシフィ」
笑顔でそう言うと、ルヴラが突然
「ボ、ボクモコワイナー...」
と分かりやすく棒読みで、おんぶして欲しい感を出す。
「...ルヴラ」
アヴァロンは溜息を吐きながら名前を呼ぶ。
「もう、そんなのは良いから早く行く」
「あぁっ!?ちょ、ちょっと!僕もおんぶされたーい!!」
そう言い、クゥロはルヴラを強制的に連れていく。
「...行きましょうか。カラ様...」
「んしょっと...うん。行こうか」
カラはシフィを抱え、リノアと一緒に階段を下りる。
「シフィちゃんをおんぶしながら階段下りるって、普通に難しくないですか...?」
リノアがカラのことを少し心配しながら質問すると、カラは笑顔で
「大丈夫!いざとなれば能力使えばいいから!」
と答える。だが、そんなことを言われてもリノアは心配せざるを得ない。何故か?そんなの足元が見えないからに他ならない。何故、カラはそうまでして人助けをしたがるのか...。そう思い、リノアは思い切って聞いてみることにした。
「カラ様...」
「ん?どうしたの?」
「カラ様が人助けをしたい理由って何なのでしょうか...?」
そう聞くと、カラは少しだけ動きが止まったように見えた。だが、すぐに下り始める。
〝話したくないのでしたら、無理にとは言いませんよ...?カラさん...〟
カラにおぶられているシフィが優しくそう言うが、カラは
「いや、もうそろそろ話さなければな...カラの過去を」
と覚悟を決め、真剣な面持ちのまま階段を下りていく。そんなカラに着いていくリノア。後ろの様子が気になり、クゥロが後ろを向くとカラとシフィが来た為、よかったと肩を撫で下ろすと同時に、カラの真剣な表情を見て、心の中で疑問を抱く。
え...なんでそんな表情をするの...?リノアとの話しで何かあった...?でも喧嘩なんてするはずないし...。
そう思っていると、カラは喋り始める。
「後で皆に話がある。」
そう言い、カラはクゥロより先へと進んで行く。
「え...」
話...?
一瞬困惑で止まってしまう。が、クゥロは皆で集まってからならば、なにか大事な話をするのだろうと察し、無言で階段を下り始める。
「──ところでなんじゃが、
と、下りながらそんなことを話し始めるアヴァロン。
「重要な事...?」
なんだろう...?と考えつつ、話を聞くルヴラ。
「実はこの
冷や汗を垂らしながら、苦笑いでそう言う。
「え!?」
ルヴラは衝撃的な事実を知り、大きな声で驚いてしまう。
「ど、どうしたの...?」
ルヴラの声が聞こえたカラ達は、急いで階段を下りてきて、ルヴラを心配し見に来る。
「あ、いや...その」
ルヴラは自身のせいで皆が心配して来た事に少し罪悪感を持つ。そのせいで言おうとしても言い淀んでしまう。そんなルヴラを見て、アヴァロンが変わりに話し始める。
「記憶の部屋について話しておったんじゃよ」
「...記憶の部屋?」
アヴァロンの口からそんな単語を聞き、思わず口に出てしまうカラ。
「あぁ、記憶の部屋って呼んでなかったのぅ。先程言った
「それもそうだな...」
アヴァロンはカラに正論をぶつける。そして、正論すぎて反論出来ないカラ。
「んで、どうしてルヴラはあんな大声を?」
クゥロはそう質問するも
「それは妾が答えるとするかのぅ...」
と、アヴァロンが代わりに答える。
「もう少しで着くんじゃが、この螺旋階段を下りた先にある記憶の部屋には、特定の属性じゃないと扉が開かないように魔法が施されておってのぅ...。じゃから妾も記憶の部屋を見るのはかなり久しぶりなんじゃよ」
「そりゃルヴラも大声で驚いちゃうね...」
カラ達はルヴラの反応に、そんなこと言われたら驚くよなぁ...と納得する。
「じゃあ、その魔法の属性は何なのですか?」
「記憶の部屋を開ける為の属性は光属性じゃよ」
アヴァロンはリノアの質問にすぐに答えるが、一同、質問の答えに驚愕する。
「え...」
「光...なのですか...?」
「って事は...」
皆、一斉にリノアの方を見る。そして
「そう、リノア。お主こそ記憶の部屋を開ける鍵なんじゃよ」
そうアヴァロンが言うと、いつの間にか壁の前に立っていた。
「ほら着いたぞ。お主ら」
そんな事を言い出すアヴァロン。しかし辺りは壁1面。
「もしかして、罠の時とおなじような感じなのかな」
ルヴラがそう言うとアヴァロンは人差し指をルヴラに指し、ウインクして
「正解!」
と、笑顔で言うのだが、そんなアヴァロンの目が、なんだかしいたけ目みたいな目の形をしているように見えたカラ達。
そんな話をしていると、アヴァロンは何かを唱える。すると、扉が突然現れる。
「おぉ〜...」
「ほら、リノア。お主が魔法をこの扉に向けて打てば開くぞ」
アヴァロンがリノアの肩に手を置き、笑顔でそう言う。
「わ、分かりました...っ」
リノアは鍵開けを任され、少しだけ緊張する。
「大丈夫だよ...リノア。安心して。カラ達も見守ってるから」
緊張しているリノアを応援する。カラ達の応援を聞き、徐々に手の震えが治まっていくリノア。
「そうじゃ、落ち着いて扉に向けて魔法を打てば良い」
「...ふーっ...」
長く息を吐き、集中し、扉に手のひらを向けるリノア。少し待つと、リノアの下に魔法陣が現れる。
「...来たのぅ」
「そういえば、なんでアヴァロンはリノアが光属性の魔法を扱えるって知ってるの...?」
ルヴラが当たり前の質問をする。そんな質問にアヴァロンは当たり前のように答える。
「この国の王じゃからな。他の王からの情報は事前に持っておるんじゃよ」
「そうなの?」
カラはクゥロに質問すると、クゥロは頷き
「私が旅に参加してるから、旅の仲間は各国の王に事前に知らされてると思うよ」
と答える。そんな王の裏事情に驚いたり納得したりする一同。
「さて、来たぞ」
アヴァロンがそう言い、皆リノアの方を見る。
「行きます...ッ!!」
「ふっ...!!」
リノアの顔がクッと引き締まり、力を入れると、光の弾が扉に向かって放たれる。しかし
「ゴホッゴホッ...」
「埃が...」
「けほっけほっ」
「大丈夫か...シフィ...」
〝は、はい...大丈夫です〟
すると、埃まみれから突然光が出始める。
「光...?」
「さて、行くぞお主ら...
そう言い、アヴァロンは先へと進んでいく。しかし、カラ達は何も見えず、埃まみれのせいで噎せており、動けない。その為埃が無くなるまで待つことに。
「あ、見て!!開いてる!!」
数分後、埃が無くなり始めると、扉が開いてるのがみえる。そしてカラ達一同は、アヴァロンの後を急いで追う。
「あれ...?また階段だ...」
「この下に記憶の部屋があるんだよね...」
一同、ワクワクしながら先へ先へと進む。そして、また扉が現れる。
「また扉ですね...」
〝おそらく、この先ですよね...?〟
少し文句言いながらも、内心ワクワクしているカラ達。
「...それじゃあ、開けるね?」
カラが皆揃ったのを見て、そう確認すると、皆頷く。
「せーのっ...!!」
掛け声と共に扉を開ける。すると、
「何これ...」
「凄...」
〝これ...本当にこの世界のものなのですか...〟
「凄すぎでしょ...」
記憶の部屋の中は、大図書館みたいな部屋になっており、高さは凡そ東京スカイツリー相当かそれ以上。広さは東京ドームなんか比にならない程に大きい...。と、そんな想像以上の規模に、思わず驚愕し、感動する一同。
「というか、本が自動的に出されては何か書かれて元の位置に戻ってるんだけど...」
クゥロは困惑しながら目の前で起きている事をそのまま言う。その表情は自分の目が信じれないと言った感じだ。
「あぁ、それはこの部屋が記憶の部屋じゃからな」
アヴァロンはそう言いながら、上空からゆっくりと下りてくる。
「この記憶の部屋は、この世界の全てを記録し、永久に保存するために存在する部屋。じゃから、記録も保存も全て魔法によって行われておるんじゃ」
「凄すぎでしょ...」
「んで、階段下りる前に言ったじゃろ?」
アヴァロンがそう言うと、カラ達は一瞬困惑する。が、すぐに思い出す
「あ!」
「この
アヴァロンはシフィにウインクしながらそう言う。
「そういう事!?」
「この魔法って
「あぁ!そうじゃ!!」
ルヴラが目をキラキラと輝かさせながら質問するとアヴァロンは満面の笑みで答える。
「本当に凄いね...」
「んで、ここからじゃな。魔王についての記録は、
真剣な表情に一瞬で変わったアヴァロンは、歩き始める。カラ達もアヴァロンに着いていく。
「うわすご...」
アヴァロンが進む度に、目の前の本や本棚が避けていく。不自由ないように、まっすぐ進めるように
「ほんと、凄いね...」
「アヴァロンは何もしてないんでしょ?」
ルヴラがそう質問する、アヴァロンは後ろをチラッと振り返り、ドヤ顔をしながら
「あぁ、何もしとらんよ」
と、超自慢げに言う。
色々な物がカラ達を避けて、その真ん中をゆっくりと歩いていると、目の前に扉が見える様になる。
「あ...」
「もしかして、あの扉?」
「...そうじゃな」
表情が固くなり気を引き締めるアヴァロン。何故か。扉の両隣には何故か、とてつもなくでかい石像が居たからだ。
「な、何あれ...」
「動くのでしょうか...」
リノアは震えながらそう言うと、アヴァロンは
「あぁ、彼奴は動く。」
と答える。その答えに一同驚愕し、引いたり、怯えたり等、色々な反応をする。
「彼奴の名は
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