第25話 隠された記録
「ところでこの魔道具なんて名前なの?」
城の地下を皆で歩いている最中、リノアは宙に浮いている魔道具を見ながら、ルヴラにそう質問する。その質問にルヴラは腕を組み、首を傾げる。
「問題そこなんだよねぇ...なんかいい名前ないかなぁ」
どうやら魔道具の名前が決まらないようだ。しかしカラ達もそんな突然聞かれても咄嗟に出る訳でも無く...
「んー...そうだなぁ」
「咄嗟に出るもんでは無いからのぅ...」
〝そうですね...〟
一同、魔道具の名前を考える。
「見た感じ、惑星に似てるから、光と組ませてプライット...とか?」
カラはそう提案する。するとルヴラは表情を変え、嬉しそうにカラの手を握り
「それ、良いねぇ!!採用!!」
「あ、これ良いんだ...」
カラはパッと思い浮かんだ言葉を口にした結果、ルヴラに呆気なく採用され少しだけ戸惑う。
「流石ですね!カラ様!!名前をつけるセンスもあるのですか!!」
「すごーい!」
いや...割と適当なんだけど...。なんてカラは思いながらも、褒めてくれたことに対し素直に感謝する。
「プライット...特徴的で覚えやすい名前じゃな!妾も良いと思うぞ」
「もうカラを褒めるのはいいから!早く進もう?」
カラは褒められすぎて恥ずかしくなり、話題を逸らす。
〝カラさんの顔が赤くなってます!〟
「うぇぁ!?み、見るな...!!」
シフィがそう発言すると、リノア達がカラの顔を見る。すると本当に赤くなっており、カラも顔を隠している。
「え!?ほんとだ!カラ様照れてる!!可愛い〜!!!」
「流石に今のは可愛すぎるよ、カラ...」
「可愛すぎる〜!!抱きついていい?」
カラが可愛すぎる様子を見て萌えまくる一同。
「ほれ、進むぞ主ら」
少し前にジト目でそう言うアヴァロンを見、カラはそそくさとそっちへ向かう。
「そうだね」
「行こーう!」
そうして、進み続けて5分が経過した。
「意外と長いんだね...」
「まぁ、城だからね」
ルヴラの発言に、そう答えるクゥロ。ルヴラはクゥロの言葉に納得する。
「そりゃそっか、城だもんね。そうだわ...」
「え、忘れてたの?」
カラがそう質問すると、ルヴラは舌を出し
「テヘッ☆」
と、まるでペコちゃんみたいな顔をする。そんな姿を見て少し腹が立ったカラであった。
「ところで、魔王についてって言っても、どんなことが書かれてあるの?」
ルヴラはそう発言する。確かに。とカラは思う。今のところ魔王について何にも知らないのだ。そんな状態だからこそその疑問が出る。するとアヴァロンはその疑問に答える。
「これまでの魔王の能力についてじゃ、魔王という存在は、代々変わっていくもんじゃ。じゃが、個体差があるのは身体能力だけで、肝心な魔王が持つ魔法については...まぁこの先着く部屋で分かる。とりあえず着いてくるんじゃな」
そういい、アヴァロンは前へ前へと進んでいく。そんなアヴァロンに着いていきながらルヴラは
「早く着かないかなぁ...。ねぇ、なんで先に行っちゃダメなの?」
といても立ってもいられない様子。しかし、アヴァロンは呆れながらも
「お主、妾が言ったこと覚えとらんのか...」
そう言うが、ルヴラは
「...えっと...なんだっけ...?」
と、覚えていない様子。
「アヴァロンはこう言ってたでしょ───」
そんな様子のルヴラにクゥロが教える。
「───城の地下へと向かうんじゃが、ここで1つ注意点じゃ」
そういい、アヴァロンは人差し指を立てる。
「...注意点...?」
たかが城の地下に行くだけで...?なんて思ってうカラ達だが、アヴァロンは眉を
「この地下はのぅ...侵入者対策で、道を知らんと罠にかかるんじゃが、その罠の殺意が高くてのぅ...」
一瞬戸惑う一同。
確かに重要な所に無断で入る人もいるかもしれない。だから罠をかけるのは分かる。だが、その罠の殺意が高いって...?
と、カラはさらに困惑する。
「その様子じゃと、あまり理解しておらんようじゃな...。ならついでに、不老不死の妾がここの罠がどんなものか見せてやろうか?」
アヴァロンはそういい、少しだけノリノリで前へと進む。一同困惑しながらもアヴァロンに着いていく...。
一連のことを思い出すルヴラ。しかし、
「───そういえばそんなことも言ってた気がする...」
と、うろ覚えの様子。
「...はぁ」
そんな様子のルヴラを見て呆れるクゥロ。
「んー...ここら辺じゃったはずじゃが」
そう言いながら辺りを見回すアヴァロン。
「...多分、というより絶対グロい光景が流れると思うから気をつけてね、皆」
カラは苦笑いで皆に注意喚起をする。皆、納得し、覚悟を決める。
「お、あったあった...」
アヴァロンは、罠を発見するや否や小走りになり、罠に近づく。
「え...?ここに罠あるのですか?」
何も無いように見える為、そんな事を呟くリノア。
〝何もないですよね...〟
「まぁ罠ってそういうものだからね...」
そんなことを話していると、アヴァロンが喋り出す。
「そこ、多分危ないからもう少し後ろ行った方がええよ?」
アヴァロンがそう言った為、一同、1歩下がる。
「ここ範囲内なのか...」
そしてアヴァロンがニコニコ笑顔で歩くと、アヴァロンの床が突然ガクンと下がる。あ、これ、多分ヤバいやつ。とすぐに察知したカラは、シフィに見せちゃいけないと思い、急いでシフィの両目を塞ぐ。すると、その瞬間、上下左右の壁から、突然剣が出てきて、アヴァロンをぶっ刺す。そしてその後、その後剣が一回転する。
その結果、文字通り、血は死ぬほどでているわけで、更に、剣が回転したことにより、肉が切れ、肉片となり辺りに散らばる。その間、クゥロは肉片が飛ばないように、前に氷の壁を張る。そんな光景を見たリノア、ルヴラは少しだけ吐きそうになる。
「まぁ...本来吐き気出るよね...。」
だって生血だもん...。そりゃ思いっきりグロいもんね...。
なんて思っていたが、クゥロの方を見ると、顔色が変わっていないのを見て、驚く。
「クゥロ、耐性あるんだ...すご」
思わず口に出るカラ。するとクゥロは、少し複雑な表情で
「当然だよ...。」
と言う。過去に何かあったのだけは分かったカラ。しかし、カラは
何か過去にあったんだろうな...。けど、クゥロが話さないと言う事は、俺たちにとってまだ関係がないし、話す気がないってことだ...。なら、今は触れない方がいいだろう。
と、そう思い、クゥロに触れずにアヴァロンの復活を待つ。
「アヴァロン、肉片そこら辺にあるけど、ここからどう復活するの...?」
「やめて、あんまり言わないで...想像しちゃう...」
「うん...。想像して吐きそうになる...。」
不老不死の復活の瞬間は今まで見た事がなかった為、疑問に思うカラ。そんなカラの発言を止めて欲しいと願うリノアとルヴラ。
〝ま、まだ大丈夫じゃないですか...?〟
シフィがそう質問する。しかしまだアヴァロンは復活しておらず、辺りは血や肉が飛び散っている。その為。
「まだ、もうちょっと時間かかるかもね...」
と少しだけ冷や汗を垂らし、苦笑いで言うカラ。すると、床に散らばった血や肉片が残った足に集まり始めている。
「うわグロ...」
そんな光景を見て思わず口に出てしまうカラ。
「これ...流石に私でも少しキツイ...。」
クゥロと言えど年はまだ9歳。流石にキツイ様だ。
「やられる瞬間より戻る瞬間の方がグロいのかぁ...」
引き気味でそう言うと、段々とアヴァロンの体が元に戻っていき...
「いやぁ...すまんのぅ。妾はこの国の罠の危険性を教えたかったんじゃ」
アヴァロンは遂に口が戻るまで行った。しかし口から上がない。そんな光景に
「怖いしグロいよ...」
とドン引きするカラであった。
「やっと妾が戻ったところで、主らとりあえず奥に行くぞ」
アヴァロンが元に戻り、カラ達はアヴァロンの後に続く。
「これで分かったか?罠が半端なーく危険じゃと」
「うん...分かった。」
「罠って一発で殺せるんだね...」
罠の威力を目の当たりにし、罠の危険性を理解するカラ達。アヴァロンの言葉に納得し、大人しくアヴァロンの後をついて行く。
「そんなことより、まだ着かないの?」
ルヴラはそう質問する。ルヴラ凄いな...強いなぁ...なんて思っているとアヴァロンは笑顔で答える。
「ん?ああ、もうそろそろ着くぞ?」
「この先を真っ直ぐに行けば、世界を記録した大樹、
「
ユグドラシルという名前自体は聞いたことがある。別名世界樹、北欧神話で出てくる名前だったな...。確か9つの世界を内包してるとかそんな話を見た気がする。
その名前を聞き、カラは心の中でうろ覚えながらに見た物を思い出す。
「そういえば大樹って言ってましたけど、そんなに大きいのでしたら、本来ここに着く前にわたくしら、もう気づいてますよね...?」
「確かに...」
リノアはそんな疑問をアヴァロンに言う。するとアヴァロンは頷き
「あぁ、そうじゃな。大樹なら本来気づくはずじゃ」
と答える。
「では何故...」
そう呟くと、アヴァロンは突然魔法について話す。
「そういえば、お主らに魔法について話とらんかったの」
「...魔法?」
「突然?」
一同、突然の魔法の話に戸惑うも一応話を聞くことに
「魔法は基本的に5種類に分けられておってな、攻撃魔法、防御魔法、回復魔法、強化魔法、弱体化魔法...の?」
「...うん。そうだね。基本的にその5つだね」
クゥロもアヴァロンの話を聞き納得する。
「しかし、例外が3つ存在しておってな」
「例外...」
「あれじゃない?禁忌魔法」
ルヴラがそう呟くと、アヴァロンは突然
「そう!!」
と大声を出す。カラ達はその声にびっくりする。
「うるさ...」
「...すまん。」
思いのほか驚かせてしまい、普通に謝罪するアヴァロン。
「んんっ...正解じゃ。例外の内の一つ、禁忌魔法。この魔法は本来、人間が触れる魔法の領域には無い、存在してはいけない魔法でな...圧倒的な破壊力を持つ魔法が多い。じゃから禁忌と呼ばれるんじゃ」
「そうなんだ...」
しかし、禁忌魔法以外にあと2つある。その2つが分からないカラ達。
「あと2つって...?」
そう質問すると、アヴァロンは答える。
「あと2つじゃな。じゃあ次を教えよう。」
「うん...」
「2つ目は神聖魔法じゃ」
「神聖魔法...」
クゥロもそう声に出てしまう。おそらく聞いたことがないのだろう。
「この魔法は、禁忌魔法と違い、普通の魔法でも到達出来る。しかし、そこに辿り着くまで、とてつもない努力と時間が必要じゃ」
〝そうなのですか...〟
「もしかして、ファイキュリアって...」
リノアがボソッと呟くと、アヴァロンは驚いた顔で
「今、なんと言った?」
と言い、リノアに近づく。
「え、えと...ファイキュリア...です...」
「どこで知ったんじゃその魔法...」
「え、あ...クゥロ様から聞きまして...」
アヴァロンの表情が急に変わり、動揺するカラ達。
「もしかしてアヴァロン、ファイキュリアを知ってるの?」
クゥロがそう聞くと、アヴァロンは落ち着き、前へ行く。
「...とりあえずお主ら着いてこい。その情報も
と言い、目の前にあったドアを開ける。
「あれ...もう着いてたんだ...。」
「意外と近かったね」
〝なんでしょう...この大きな穴...〟
「確かに」
ルヴラやカラ、シフィが各々喋っていると、アヴァロンは喋り出す。
「その前に、最後の魔法を紹介しておらんかったな」
「...え?」
「確かに...」
そう言うと、アヴァロンはその魔法を紹介し始める。
「最後の魔法は、禁忌でも神聖でもない。かと言って、なにか特別な魔法という訳でもない。ただなぜこの枠におるのか未だに分からん」
「改変魔法」
「か、改変...??」
その意外な魔法に困惑するカラ達。
「今から見せるのはその内の一つ、認識阻害魔法じゃ」
そうアヴァロンが言うと、目の前にある、巨大な穴から突然、大樹が発現する。その光景を見て、一同、驚愕を隠せない。
「な...っ」
「え!?ど、どうして...」
「お主ら、これが世界を記録する大樹、
俺らはその大きすぎる樹に口を開け、ただ呆然と眺める事しか出来なかった。
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