第24話 空想を実現する才能
「ま、魔法で人を軽くしたり出来るのですか!?」
リノアは興味津々でアヴァロンに質問する。
「そんなにがっつかんくとも教えるから大人しくしとれ」
アヴァロンがそう言うと、リノアは元気よく返事をし、正座をする。
「あ、そういえば思い出したことがあってのぅ...。お主らは"魔法の境界"を知っとるか?」
アヴァロンは突然、真剣な表情になり、そう質問する。
ま...魔法の境界?なんだそれ...。
カラは今まで読んできた魔法を扱うラノベの記憶全てを漁っても、全く出てこない。...覚えてる限りではだが...。
「魔法の境界...?」
「な、何それ...」
「聞いた事ない」
どうやら俺だけではなく、ルヴラやリノア、更にはクゥロまで知らなかったようだ。
〝魔法にも、限界があるのでしょうか...〟
シフィがそんな疑問を口にすると、アヴァロンは
「そうじゃシフィ、正解じゃ」
そう言うと、アヴァロンはシフィに近づき、満面の笑みでシフィの頭を撫でる。突然撫でられたシフィは
「ふみゃぁ...」
と思わず声に出てしまう。
やっぱシフィ可愛いなぁ...なんてカラが心の中で癒されていると、アヴァロンは話の続きをし始める。
「...人体にも限界があるように、魔法にも限界と言うものがある。この世界では、その限界を魔法の境界と呼ばれておる。その限界は人の力ではどう頑張っても超えることが出来ない。と世界の理によって定められた物なんじゃ」
一同、聞いた事のない用語に驚愕し、興味津々になる。
「凄い...」
「そんなのあるんですね...!!」
各々が感嘆の声をあげている中、クゥロは
「なんで突然そんな話を?」
とアヴァロンに質問する。アヴァロンは少しだけ口角が上がる。
「もちろん、その質問が来ると思っておった。クゥロからのぅ。」
なんとなく予想してたかのように、アヴァロンはそういう。事実、クゥロは年不相応に賢い。だから、アヴァロンから一目を置かれているのだ。
「た、確かに、なんで突然...」
クゥロの発言に同意し疑問を抱く一同。そんな一同に対し、アヴァロンは答える。
「その理由は至って簡単じゃ。その魔法の境界と言うものは、妾の魔法が最も分かりやすい上に、この境界が魔王と関係しておるからのぅ」
笑顔から一転、真剣な表情になるアヴァロン。その表情の変わりように、カラ達はこの話が冗談では無い事を察知する。
「魔王と!?」
ルヴラはアヴァロンの発言に驚愕する。実際に俺も驚いた。頑張って堪えたけど。
「魔法の境界と言うものが、魔王と...?一体どんな関係があるの?」
クゥロはそう質問する。しかし、それが気になったのはクゥロだけではない。リノアも、シフィも、もちろんカラも気になっていたのだ。
「お主らは魔王と言う物をなんじゃと思っておる?」
「...え?」
アヴァロンは急に質問してくる。突然の質問に戸惑っていると、クゥロは即座に答える。
「魔物の王...じゃないかな...」
「わたくしも...そう思いましたけど...。」
一同はクゥロの答えに疑問を持たず、肯定する。そんな一同にアヴァロンは続けて質問をする。
「では、魔物とはなんじゃ?」
その問いに、クゥロは
「人々に害する存在...。魔を持つ生物。」
と、まるで辞書のような説明の仕方をする。
「うむ、その通りじゃな」
クゥロの答えを聞き、アヴァロンは笑顔で正解だと告げる。しかし、アヴァロンは続けてこう質問する。
「では、魔法とはなんじゃ?」
その質問にクゥロは続けて答える。
「本来、人には出来ないことを出来るようにする、物理法則とは違う法則...?」
え、この子9歳なのに物理法則とか使ってるよ...。地球にもいるのかな物理法則とか使う子。
などそんな事を思っていると、アヴァロンは
「ああ、そうじゃな。本来、人の体では出来ない事象を起こすことを指すのぅ...ならば何故、魔物には魔法が効くのか、そして何故上位の魔物は魔法を扱えるのか...。」
と、呟く。その呟きを聞き、確かにと思うカラ達。しかしクゥロはこれも答える。
「魔物が魔法に効くのは、人間に対して魔法が効くのと変わらないと思う。そして、上位の魔物が魔法を使えるのは、知能があるから...だと思うけど」
少しだけ冷や汗を流すも、真っ直ぐアヴァロンを見つめて答える。しかしアヴァロンは続けて
「ならば、魔王はどのように生まれるか知っておるか?」
と、質問する。アヴァロンがどうしてそのような質問を続けるのか、全く理解できないカラ達。
「え...?」
「どのように生まれる...?」
アヴァロンの質問が分かっていない模様。しかしクゥロはこの質問に対し、こう答える。
「...魔物の王だから、単純に強さで変わるんじゃないのかな...。と言うよりなんでこんな質問を私たちはされてるの...?」
アヴァロンの質問責めに堪えきれず、クゥロは質問する。そんな質問をされたアヴァロンは、クゥロを見るも、答えない。すると突然話し始める。
「妾の国にある古来の文献には、少し面白いものが書いておってな...。」
そう話しながら、アヴァロンは部屋を出て、何処かへと向かう。カラ達もアヴァロンについていくことに。
「一体何処に...」
「さぁ...何処行くんだろうね...」
「まぁ、着いてこれば分かるさ」
そう言われ、カラ達は何処に向かっているのか分からないまま、アヴァロンに着いていく。しかし、魔王に関する何かが見れると言うのは、アヴァロンの発言で何となく分かっていた。だからついて行く。もしかしたら弱点等も分かる可能性があると信じて。
「うわぁ...」
「何あの鉱石...。え、あれもしかして純度限りなく高い魔鉱石!?」
「ん?あぁ、そうじゃよ。」
「マージ!?すごーい!!」
カラ達がアヴァロンに着いて行ってから数分。城の地下へと入っていると、そこには洞窟が広がっていて、周りには純度の高い魔鉱石がそこら中にある。その光景に興奮しているルヴラ。
「よく一目で分かったのぅ...。専用機械か魔鉱査定陣が無ければ見分けは付かんはずじゃが...。」
「まぁ僕は天性の魔道具生成センスだからね!!」
そうドヤ顔で威張るルヴラ。しかし、ルヴラは本当に天才的なセンスを持っている為、否定をする事が出来ない。なので、
「事実、天才だからねぇルヴラは...」
「うんうん」
〝ルヴラさんの魔道具には助けられました...〟
ルヴラの発言を否定せず、そのセンスを素直に褒め称える。そんな皆の言葉に聞き
「え、えへへ...そ、そんな褒められると照れる...」
と顔を赤らめ、超絶照れるルヴラ。可愛いなコノヤロウ。なんて思いながらもアヴァロンについて行くカラ。
「その目があるのなら、そりゃあ天才的な魔道具開発センスがあるのも頷けるのぅ。何れ見てみたいが、今は洞窟内じゃから...」
アヴァロンがそう言いながら、明かりを探していると
「あ、ちょっと待ってて...」
ルヴラはそういい言い、謎の空間から魔道具を出そうと探る。
「え!?ち、ちょっと待って!!何それ」
「...な、なんじゃその...なんと言うか...なんじゃそれ」
一同、ルヴラが謎の空間に手を入れているのを見、驚愕する。その様子を見て、ルヴラは答える。
「あー、これはねぇ...僕がリュグシーラにいた時に開発した、空間を作り出す魔道具。」
「...え?」
一瞬何を言っているのか理解出来なかったカラ達。明らかに目が点になっている。なんならアヴァロンは驚きのあまり、唖然のまま硬直している。
「く、空間を作り出す魔道具とは...?」
〝その魔道具、どうやって作ったのですか...〟
シフィは当たり前の疑問が言葉に出る。どのような原理で空間を作り出す魔道具を作ったのか、どのような原理で空間を作り出してるのか...。
「そんなの僕だって言うほど理解してないよ...。突然ピンと来て、頭で思い浮かんだ通りに作ってるだけだし...」
ルヴラの発言に更に驚愕するアヴァロン、そしてカラ達。
「本当、ルヴラのその才能ってどうなってるの...」
「凄すぎるじゃろ...」
ルヴラの天才さに驚きを超え、むしろ引き気味になっているアヴァロン。
「そんなことよりも...っと」
周りの反応を気にせず、ルヴラは亜空間から魔道具を取り出す。
「何これ...?」
〝見たことない形してます...!〟
一同、ルヴラが取り出す魔道具に興味津々になる。
「なんじゃこれは...」
皆、ルヴラの出した魔道具をずっと見ていると、ルヴラが喋り出す。
「これはねぇ...こーするとっ!!」
ルヴラがそう言いながら、魔道具の周りにある金属の環を回転させると、突然、環の内側にあるガラス張りの球体が光り出す。
「うわぁ!!」
「凄!」
「光った!!」
魔道具が突然光るのを見て、驚くも目を輝かせるカラ達。そしてルヴラは光っている魔道具について説明する。
「これはね、周りの環がこの球体のスイッチになってて、この環が回転すると真ん中のガラスしかない球体が光るんだ」
クゥロはすぐさまルヴラに質問をする。
「え?今、この球体がガラスしかないって言ったよね?」
その言葉にルヴラはキョトンとした顔で
「え、うん。そうだよ」
と答える。クゥロは焦る。何故か、本来、光は電線等を使って発現させる物。魔法なら別だが、ルヴラは魔法を扱えない。そして何より、この魔道具を作る際での魔鉱石取りを見ていない。それにリュグシーラで作った。と言っていたが、ルヴラは一体いつ作ったのか。
「これ、制作にどのくらいかかったの?」
クゥロは恐る恐る聞く。すると、ルヴラは先程と同じ表情で答える。
「えっと...。多分11時間...かなぁ」
その答えに引くクゥロ。本当にこの子人間なの...?と。本来、これほどの物を作るのに数日はかかるはずだが、ルヴラはたったの11時間。理解不能である。
〝これ、魔鉱石を使ってるのですか?〟
「で、でも、シフィ...。この中よく見てみて...。空洞だよ...。」
まさかと思いつつもシフィにそう言うカラ。すると、ルヴラは
「魔鉱石は使ってないよ〜!」
「...え?」
「ならどうやって光らせてるの...?」
ルヴラの発言を聞き、頭の上にはてなマークが出ているように見えてしまう程、困惑しているリノア。
「うーん...。僕、頭が良い訳では無いから、どういう原理で魔道具が作動してるのか全く分からないんだよね...。だから、この魔道具もどうやって光ってるのか分からないんだよ...」
ルヴラはそう言いながら、その魔道具を浮かせる。
「...ん?あれ?浮いてるけど...」
カラが動揺しながらルヴラに質問すると、ルヴラは表情変えず
「あ、うん!この魔道具、回転してる時のみだけど、浮くんだよね〜!」
最早、困惑すら湧かない。それ程にルヴラの魔道具の仕組みが理解できない。
「凄いね...」
「もうなんでもありじゃのぅ...」
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