第23話 200年の関係

「大丈夫かのぅ...お主」

茶髪隻眼のその子は、横に倒れていた私をにっこり微笑みながらも顔色を伺って心配しているのが分かった。そんな子にそう心配されたから、私は正直に

「た、助けて...」

と、助けを乞うと、その子は私をヒョイっと持ち上げて背中に乗せてくれた。

「とりあえず、ルズシュバラまで行こうかの」

またも優しい笑顔でその子はそう言ってくれた。流石に今日のように殺人的な暑さならこうやって助けてくれる人もいるもんなんだなぁ...と思い、安心してその子におぶられながらそのまま気を失ってしまった。


目を覚ますとそこは見知らぬ部屋の中で、私が寝ていたベッドの横では、その子が座りながら寝ているのを見た。おそらく私が起きるまでずっと傍にいたのだろう...。私はありがとうと感謝を込めながらもその子の頭を撫でると

「...んぅ」

とその子が目を覚ます。

「起きたか...。どうじゃ体の具合は」

欠伸をしながらも私のことを心配してくれた...。ここまで助けてくれたからと私は素直に話す。

「少し体がダルい位です...。でも動けるくらいには...」

と話しながら立ち上がろうとすると、立ちくらみが来る。

「あ...れ...?」

するとその子はまた助けてくれて

「全く動けとらんじゃろう...っとに。大人しくしとらんか...」

「...はい」

私はそう叱られ、少しだけ恥ずかしくなった。けれど、人生でここまで優しくされたのは初めてで、本当に嬉しかった。心の底からこの人は良い人だなぁと感心していた。


そうして数日が経ち、私の体調も治り、その子とも仲良くなった。どうやらその子の名前はアヴァロンと言うようで、何故か親近感が湧いた。

「アヴァロンはさ、この国で何をしているの?」

「妾か?妾はこの国で王になろうとしとる」

「お、王に!?凄いね!!」

私はアヴァロンの発言に驚く。王だなんて、そんなの選ばれた人にしかなれないからだ。なのに、何故かアヴァロンは物憂げな表情をする。

「...どうしたの?」

「じゃが、この国...この世界では妾のような長命種は必ず迫害されるんじゃよ」

そこで私は事実を知る。そしてアヴァロンも私と同じ長命種だと。

「そうなんだ...」

「うむ...じゃから...」

けれど私は、そんな事よりも...

「私と一緒なんだ!!」

「うぇ!?」

私は、私と同じ長命種に会えた事の喜びの方が大きかった。

「お主と一緒とは...もしやお主も?」

突然の発言にアヴァロンは動揺する。そりゃそうだ。アヴァロンの為に私は私の全てを話す。

「私も、長命種でアヴァロンと同じ様に迫害されてたんだ。前いた国のレギヌスで。でも、そんな迫害されたことよりも、私はただ私と同じ種族を見つけれたことの方が嬉しい!!」

私は、そう大喜びしながらアヴァロンの両手をガッシリと握る。

「お、おお...。まぁたしかに、妾達の種族はその異常な寿命の長さから出会うことは早々にないが...。そこまで喜ぶことかのぅ...」

アヴァロンは少し困惑気味にそう聞くけど、私は

「私は超絶嬉しいの!!」

と、アヴァロンの手を握りながらピョンピョン跳ねる。

「フフフッ...ほんに面白い女子おなごよのぅ...」

アヴァロンはそんな私の喜びようをみて、笑みが零れる。


数時間後、ある程度治まり、私はアヴァロンの話を聞くことにする。

「っで、何を話そうとしてたの?」

アヴァロンは俯き少し考えたが、すぐに顔を上げ

「やはり王になるかのぅ!キャメロットと出会ってから馬鹿らしくなってしもうたわ!」

「...うんっ!!そうだね!アヴァロンならなれるよ!絶対!!」

上品ながらも少し砕けた笑い方をするアヴァロン。距離が近くなったからなのかは分からないが。


「ところでアヴァロンって何歳なの?」

平原を2人で歩きながら私はそう質問する。するとアヴァロンは

「妾に質問するよりも前に、まずお主が何歳か答えんか?それが礼儀じゃろうて」

と言う。それもそうだと思い私はうろ覚えながらアヴァロンに年齢を言う。

「私は今は...えーっと...。549歳だよ!多分!」

そう答えると、アヴァロンは笑いながら

「まだ若いのぅ」

と言ってくる。

「ぐ...わ、私は教えたから、アヴァロン答えてよ!!」

そんなアヴァロンの答えに、少し怒りながらそう質問すると

「妾の年齢はもうわからん...。生まれた時の記憶すらない」

そう言いながら、アヴァロンは空を見つめ、まるで何か物思いに耽るような表情をする。

「...おばあちゃんなの?」

思わずその言葉が口から出てしまう。しかしアヴァロンは

「おばあちゃんか...そうかもしれんな...。」

と笑いながら、だけどどこか哀しそうなそんな顔をする。

そんな中、国へと帰ると、人がザワザワしていることにすぐに気づく。

「何この人混み...」

「とりあえず行ってみるとするかのぅ...」

そうして、私とアヴァロンはその人混みの中に入り、無理やり人混みの中心に向かい、何があったのかこの目で見ることに。

「っとと...」

「大丈夫か?キャメロットよ」

「うん。何とか...って...」

人混みを抜けた先にいたのは、ルズシュバラの民の服装とは似ても似つかない、変な服を着た人。身長は...160cm位だろうか...そして見た目は成人男性ぽい...なんて思っていると、その人がこちらを見てくる。

「なんだ、わらべ達よ。拙者に何か用か?」

変わった口調でその人は喋りかけてきた。するとアヴァロンは

「お主、名は」

と聞く、周りにいる人たちは少し引きながら、その場を離れる。すると

「...拙者は、光、雷電らいでんひかりと申す。訳あって此方の国に馳せ参じた所存!以後お見知り置きを!!」

とその人は眩しい笑顔でそう答える。

「雷電...なんともまぁ...。ここら一帯ではあまり聞いた事のない、珍妙な名前じゃのう...」

「え、えっと...よろしくね...。ライデン...さん?」

軽く挨拶をし、握手を求めると、ライデンさんも握手を交わしてくれた。満面の笑みで

「あぁ!よろしく頼むぞ!童達よ!」


「───えっ?ちょ、ちょっと待って」

「ん?」

そう言い、話の途中でクゥロが止めに入る。

「どうしたの?クゥロ。僕もっと話聞きたいんだけど...」

ルヴラが文句を言うとクゥロは

「ごめんね...話の腰を折っちゃって、じゃなくて...。貴女達の出会いにライニグが関わってたの?」

と、少し動揺しながら質問する。確かに...と思いつつ口にするのも辞めるカラ。

「...うん。関係あるよ」

「妾とキャメロット。そしてライニグは切っても切れん関係じゃからな...」

キャメロットとアヴァロンはそう答える。

「というかやっぱ、ライニグはカラがいた国の人だったな...名前的にそうだと思ったんだよねぇ...」

カラはそう呟くと、ルヴラが目を輝かせ

「え!?良いなぁ!!ライニグと同じ国だなんて...!!」

とカラに近づく。ルヴラは続けてカラに質問してくる

「ライニグ程の英雄なら歴史とかに載ってるんじゃないですか...?」

「確かに!!」

リノアがそういうが...しかし、俺の世界での歴史には全くそういうのは乗っておらず、むしろ俺の方こそライニグの英雄譚を知りたいくらいだった。

「いや...載ってない...ね...。」

リノアの言葉にそう答えると、ルヴラは超絶驚愕し

「なんでぇ!?」

と怒る。

「ライニグは元の世界に戻った後、目立たずに静かに生涯を終えたんだと思うよ」

そんな様子のルヴラにクゥロがそう憶測する。俺もクゥロの意見には賛成だ。おそらく静かに人生を終えたのだろう...

「とりあえず...キャメロットと妾の話は終えたが...。ライニグの話でも聞くか?」

アヴァロンはそう質問する。おそらくルヴラは聞きたいだろうが...。

「聞くのならお風呂上がってからじゃない?もうそろそろシフィも逆上せそうだし...」

〝は...はいぃ...〟

そうカラは提案し、顔が赤くなっているシフィを背負い、風呂から出る。

「そうじゃな、みんな上がるとするか」

「大丈夫かなシフィ...」

リノアが心配するが、俺は

「大丈夫。ただの湯のぼせだから」

と言い、リノアを落ち着かせる。そして、シフィの体を皆で拭き、服を着させてカラが背負う。

「カラ以上に力ある人いないのかな」

ルヴラのそう疑問を口にする。確かにとカラも思う。

「アヴァロンとか力あるんじゃない...?」

するとアヴァロンはニッコリ笑い

「妾、力全くないぞ...?」

となんだか少し悲しそうな雰囲気を纏う。

「あ...」

「え!?そうなの!?」

アヴァロンの衝撃の事実に超絶驚くルヴラ。

「アヴァロンは本当に力がなくて、その力の無さに驚いて、私を拾った時どうやって背負ったんだろって思ったもん...」

「たしかに...どうやって拾ったんだろ...」

カラは思わず口に出る。事実、アヴァロンが力がないのであれば、キャメロットを拾える理由が分からない。そんな事を疑問に思っていると、すぐにアヴァロンの口から答えが出る。

「そんなの決まっておろうに...。魔法じゃ」

「魔法、なんですか...?」



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