第22話 束の間の休息
「...んん...。」
厄災が消えてから4日後、ずっと寝ていたカラが目を覚ます。
「ここは...一体...」
そんな事を言いながら体を起こすと、突然ドアが開く。部屋に入ってきたのはリノア。しかしリノアは目が点になり硬直する。
「あ、リノア...おはよう」
ずっと寝ていた弊害でずっと閉じていた重い瞼をほんの少し開きながら、優しい笑顔でそうカラが言う。その光景をやっと飲み込めたのか、リノアはカラに近づきながら泣く。
「カ、カラさまぁ...」
「リ、リノア!?大丈夫?」
「大丈夫じゃないですよぉ...」
リノアは泣きながらもカラに少し文句を言う。その泣き声に引き寄せられるように、アヴァロン達がカラの部屋にやってくる。
「だ、大丈夫!?リノ...ア...。」
アヴァロン達も硬直する。
「カラ...やっと起きた...」
少し涙ぐみながら笑みを零すクゥロ。
「カラぁああああ」
リノアと同じく大号泣しながら叫ぶルヴラ。そんな皆の様子に慌てていると、無言で近づいてきて、抱きつくシフィ。
「シフィ?」
そう聞くが、シフィは顔を上げずに
「...ん」
と抱きつく力を少し強める。
「...ごめんね。シフィ。起きるの遅くなっちゃった」
そう言いながら頭を撫でると、シフィはぷるぷる少し震えながら小さく震えた声で
「ん...」
と言い小さく頷く。
「良かった...カラさんがこのまま目覚めなかったらどうしようかと...」
そう言ってアーサーは安堵すると、アヴァロンはアーサーを睨みつけ
「当たり前じゃろう!?妾が目覚めるって言うたんじゃから目覚めるに決まっておろう!?」
と超絶ブチギレる。
「で、でも師匠たまに外すじゃないですか...」
そんなアヴァロンに反論するとアヴァロンは更にブチギレ
「そんな事よりまずはこの部屋から出るんじゃな!!妾達今から風呂に入るんじゃから!!!」
そう言い、アヴァロンはアーサーを思いっきりぶん殴り、無理やり追い出す。
「わ、分かりました!!」
アーサーは慌てながら外へと出る。
とは言っても俺も一応中身自体は男なんだけどなぁ...。まぁロリに欲情する人じゃないからいいけど、それに、この場で俺だけ外に出るのもおかしいしな...。
なんてカラは思いつつ皆と一緒にお風呂場へ行き、一緒に着替える。しかし、若干気まずいカラ。
「うわぁーお...カラって意外とあるんだ...」
ルヴラが急にそう言い始めると、皆カラを見る。
「な、何...?」
カラは体をタオルで隠しながら怯える。
「なんで隠してるんですか!!見せてください!!」
リノアはカラが持っているタオルを剥ごうとする。
「いやだよ!!何でカラのタオルを剥ぐのさ!!」
何故か剥ごうとするリノアに必死に抵抗するカラ。しかし、それを見たルヴラがニヤッと笑い
「僕もリノアのお手伝いする〜!!」
とカラのタオルを剥ごうとする。
「やめてよぉ!2人ともぉ!!」
かざり目で、そして涙目になりながらカラは必死に抵抗する。
「リノア、ルヴラ、カラが困ってるからそれくらいにした方が良い。」
とクゥロは少し遠くの湯船に浸かりながら2人を止める。
「同性なんだから良いでしょっ!!」
2人はクゥロの言うことを聞かずに必死にカラのタオルの剥ごうとする。
〝ふ、2人とも...もうそこまでぇっ!?───〟
その光景を見たシフィが、ルヴラとリノアを止めるため、2人に近づき、カラから離そうと力を入れた瞬間、シフィは足を滑らせる。
「あ、危ない...!!」
カラは抵抗を諦め、咄嗟にシフィを庇う。その時、シフィとカラは不可抗力のキスをしてしまう。
「うぁ!?」
「うぇ!?」
その光景に驚くルヴラとリノア。
「んぅっ!?!」
〝カ、カカカカカカカカ...!!カラさんのく、唇ががががが!!!〟
目が点になり状況が一切飲み込めないカラと、即座に状況を把握し、今現在カラとキスをしているという事実にとてつもない羞恥を感じているシフィ。
ヤ、ヤバい...。俺もやっと状況を把握したが、そんな事よりもシフィの目がグルグルしている...。あまりの異常事態に混乱している...。ってかまさかの俺のファーストキス事故なんかい...。いやそんなことはどうでも良くて。
「っは...」
落ち着いてシフィから唇を離し、自分を落ち着かせてシフィと話しはじめる。
「シフィ...落ち着いて...。こっちに戻ってきて...」
しかしシフィは混乱していて、意識がまだこちらに戻ってきていない。
「や、やばい...」
「お主ら2人がカラを困らせるからシフィが気絶したのぅ」
少しため息を吐きながらリノアとルヴラに毒を吐くアヴァロン。流石にマズいと思い、2人は俯きカラの所へ近づく。
「ごめんね...カラ」
「僕も、少しやりすぎたよ...。」
そう2人は謝る。しかしカラは
「そんな事より、シフィをどこかに休ませてあげないと...」
と言い、シフィをベンチに寝かせる。
「はぁ...ほんと何やってるの2人とも」
クゥロもアヴァロンと同じようにため息を吐く。
「うぅ...」
「返す言葉もありません...」
2人正座で下をずっと見つめてる...。そんなに反省してるんだ...。でも2人は悪意があってやったわけじゃないし、そこまで責める必要無いからなぁ...と思ったカラは、リノア達の目線に合わせ
「大丈夫だよ、クゥロ、アヴァロン。2人は悪意があってやった訳じゃないんだよね?」
カラがそう質問すると2人は顔を上げ
「うん」
「はい...。シフィちゃんに危害を加えようとする訳ないです」
「ただカラの裸が...んんっなんでもない...。」
なんか聞こえた気がするけど...。まぁいいや。
カラは2人からそう聞くと笑顔になり
「じゃあ、カラは許すよ。後でシフィにもちゃんと謝らないとね?」
と2人に言う。そんなカラに驚くアヴァロン。そして、はぁ...カラはと思いながら首を横に振るクゥロ。
「お主、
「あれがカラなんだよ...。とんでもなく優しい。絶対に私たちを死なせようとしないし、反省してるならそれ以上責めない。」
クゥロはほんのり口角を上げながらアヴァロンに話す。
「ほんとに異常なまでにお人好しじゃな...まるで...」
「ん?」
「いや、何でもない」
と湯船に浸かっている2人はカラの優しさについて話す。
「ほら、リノア達も入るよ」
「うん!」
「はい...!!ありがとうございます!!カラ様!」
反省していたリノアとルヴラはカラに許され、一緒にお風呂に入ることに
「シフィちゃん起きるのでしょうか...」
数分後、体を洗っているリノアがシフィの方をチラッと見ながら心配そうにそういう。
「まぁまぁ時間経ってるのに起きてこない...」
ルヴラもシフィの方を見ながらそう呟く。
「大丈夫じゃ。気絶言うても外傷的なやつじゃなく、突然の出来事に処理しきれずの方じゃから、もうじき目が覚める。」
アヴァロンは湯船の縁にもたれ掛かり見上げながらリノアの質問に答える。
「ほ、本当ですか...!!良かったです...」
アヴァロンの答えにリノアは安堵する。そりゃそうだ。俺も今のリノアの状況なら、もしかしたら自分のせいで目を覚まさないのかも。なんて思ってしまうだろう。
「じゃからお主らはそんな心配せんでもいいんじゃ」
湯船の縁にもたれかかっていたアヴァロンはシフィの方を見てそういう。
「それに彼奴は言うほど体が弱いわけじゃないじゃろう...なんなら強い方じゃ。じゃから安心せい」
その言葉にさらに安堵するリノアとルヴラ。すると、突然ドアが開く。
「!?」
カラ達はドアの方を見る。湯気のせいで誰かが立っているのは分かるがよく見えない。しかし、身長からして推測でシフィだと断定するルヴラ。
「シフィちゃん!!ごめんね!!」
少し涙目になりながらもシフィの方へ向かうルヴラ。しかし何か異変に感じるカラ。
「待ってルヴラ。あれ...シフィじゃない」
「えっ?」
その言葉に聞き、カラの方を振り向くルヴラ。その瞬間。その人影はルヴラを襲おうとする。
「マズイ...!!ルヴラ!!」
「───っ!!」
カラの発言で、ルヴラは人影が何かをしていることに気づき、人影の方に振り向く。しかし、ルヴラには避ける
「まぁ待て」
ルヴラが瞬きをすると目の前にはアヴァロンが立っていた。
「え...いつの間に...。」
あまりの速さに呆気にとられるカラ達。
「はぁ...。なんでお主がここに来とるんじゃ...キャメロット...」
アヴァロンがため息を吐く。どうやら知り合いのようだ。
「あっはは!ごめんねアヴァロン。サプライズでこっちに来たかったんだ!」
その光景に唖然とするカラ達。
「あー...すまんのぅお主ら。
「皆驚かせてごめんね!私はキャメロット。キャメロット・グラストンベリー!今後ともよろしくね!!」
その人は満面の眩しい笑みでそう挨拶する。
よ、陽キャだ...。そんなことを思いつつ少しホッとする。束の間の休息だと言うのに、敵が来たら嫌だからな...。なんて思っていると、キャメロットの後ろから小さな子がチラッと顔を見せる。
「お!」
〝あ、あの...。今起きました...。〟
シフィがやっと目を覚ましたようだ。
「シフィ!!」
一目散にシフィに抱きつくルヴラ。突然抱きつかれて動揺するシフィ。
「ごめんね...僕とリノアのせいで...」
〝い、いえ...大丈夫です...!!〟
かざり目で少し照れながらシフィは言う。
「良かった...シフィが起きてくれて」
カラは優しく微笑む。が、シフィはすぐに顔を隠す。
「えっ」
少し傷つくカラ。すると
「多分...まだ照れてるんだろうね...。あんな事故があったんだし」
とクゥロがフォローする。
「まぁ...そうだよね...。仕方ないか」
そんな話をしていると、キャメロットが突然服を脱ぎだす。
「え?」
「なんでお主も脱ぎ始めとるんじゃ」
ジト目で若干引き気味にアヴァロンは聞くとキャメロットは脱ぐのを止め
「私もお風呂に入りたいんだよ!」
と眉を顰めながら言い、再度服を脱ぎ始める。
「なんでそれ言うためだけに1回脱ぐのを止めるんじゃ」
そんな変なキャメロットにアヴァロンがツッコミをする。
「ま、まぁ...とりあえず皆さんでお風呂に入りましょう」
リノアはアヴァロンを湯船に浸からせて、みんなでお風呂に入ることに。
「ところでキャメロットさんは何歳なの?アヴァロンが昔からの親友って言ってたけど」
ルヴラは突然質問をする。
「...アヴァロン。話していいの?」
「ん...?あぁ、嫌な訳では無いしのぅ。それに
とアヴァロンはキャメロットに昔の話をしてもいいと快諾する
まぁ実際俺も気になってはいた。昔からとは言ってもどのくらい昔なのかが分からない。ただ、アヴァロンが昔と言うならもしかすると...。
カラはそんな事を思っていると、キャメロットは思い出に
「そうだなぁ...。あの日はこのお風呂場のお湯のような暑さだった───」
アヴァロンと初めてであった日は、本当にとても暑くて、飲み水を常備しとかないと不老不死でも脱水で死んでしまうだろうと言われていたレベルだった。
けれど私はとっくに水を飲みきっていて、動く活力もなく荒野に横に倒れていた。その時に出会ったんだ。茶髪でまるで血のように赤く光る目の人物に。
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