第27話 記憶と障壁

「嘘でしょ...」

「まぁ守護神ガーディアンってそうだよね...。最重要記憶保護対象なんだからそれを守る奴もいるよね...。」

しかし、歩みを止める訳にもいかず、歩き続けるカラ達。すると守護神ガーディアンは動き始める。

「ほ、本当に動いたぁ!!?」

少し興奮気味に、しかし焦り気味にルヴラは大声をあげる。

「で、デカ過ぎない...?」

「あれって本当に作られた物なんだよね...?」

「...そうじゃな」

クゥロとカラは守護神ガーディアンのでかさにドン引きする。それもそう。守護神ガーディアンの大きさはビル20階相当。対してカラ達は大体130cm程度。そんな作られた生物とは思えない程にデカいそいつは、カラ達の方を向く。

「あの...アヴァロンさん。」

震えた声でアヴァロンに質問をするリノア。

「...どうしたんじゃ」

守護神ガーディアンってわたくし達のこと襲ってきたりします...?」

そんな質問にアヴァロンは冷や汗を垂らし

「分からん...。彼奴が妾達の事を敵だと認識せねばいけるがのぅ...」

と、半分願いのような答えが返ってくる。

「う、嘘...ですよね...。分からないんですか...」

そんなアヴァロンの答えに絶望し、リノアはへたり込む。

「リノア。願うしかない」

カラはリノアの肩をポンと叩き、少しばかり鼓舞する。

「そ、そうですね...」

カラの鼓舞のおかげでリノアは立ち上がる。

「と言うか、守護神ガーディアンの記憶と、界憶の大樹ユグドラシルの記憶って別物なんだね...」

ルヴラはそこの事実に驚愕する。

「あぁ、そうじゃ...。守護神ガーディアンはここの護衛を任されておるからの。関係ない物を記憶させたら混乱するから、界憶の大樹ユグドラシルの記憶は無いんじゃよ」

アヴァロンは、何故、守護神ガーディアンは別の記憶なのかを説明する。

「じゃあ、敵だと認識せねば...みたいなのはどういうことなの?」

ルヴラは続けて質問を投げる。するとアヴァロンは歩みを止める。そして説明する。

守護神ガーディアンはあの部屋、最重要記憶保護室を守るために存在しておる。」

そういい、アヴァロンは目の前にある部屋を指差す。そして一同、頷く。

「ここで、魔族らに妾が洗脳された場合を考えてみるんじゃ」

「...そっか。守護神ガーディアンが記憶を持っている場合、主であると誤認して開けてしまう...」

クゥロはすぐに理解し、続けてカラとリノア、シフィも理解する。

「そう。じゃから記憶を持たず、敵意があるか否かで認識する方にしたんじゃ」

「...つまり?」

ルヴラは何故か理解出来ていないが、早く部屋に入らなければいけない為、そそくさと進む。

「もう良いから行くよ」

「...うーん...わかった」

少しだけ納得してないような感じを出すが、仕方なく進むルヴラ。

「頼むぞ...守護神ガーディアン。妾のこと敵だと認識しないでおくれよ...」

そう願うアヴァロン。すると守護神ガーディアンは1歩だけ歩き出す。ズシーンと地鳴りがし、体全体に地面の揺れが伝わる。縦がデカイだけに横もでかい守護神ガーディアン。作られた物ながらも意思を持つその存在にリノアとシフィは怯える。

「っ...落ち着け、お主ら。何もせずに前を通ればいけるはずじゃ」

アヴァロンは冷や汗を垂らし、緊張している。当たり前だ。敵判定されたら守護神ガーディアンと戦わなければならないのだから...。

「わ、分かった...」

一同、アヴァロンのあとを着いていく。そして守護神ガーディアンの目の前にまで近づくと。突然、守護神ガーディアンが動き始める。

「...っ!?」

「ま、マズいかっ!?」

アヴァロンは戦闘態勢に入ろうとするが、守護神ガーディアンは予想外の行動をする。

「...え」

「...な、なんで?」

守護神ガーディアンは突然、跪いたのだ。そんな光景に一同困惑するしかない。

「...もしかして、魔法を検知したのかな」

クゥロが仮説を立てる。その発言にアヴァロンは思い出す。

「そういえば、ライニグと一緒にここに来た時、記憶を守るために守護神ガーディアンを作ったんじゃよ。作った後、跪いていたんじゃが...。もしかしするとライニグは光属性の魔法を扱える者に対して、従うように設定したのかもしれんのぅ...」

という事は...と、一同リノアの方を見る。

「わ、わたくしが守護神ガーディアンの主...って事ですか...!?」

「そういう事じゃな...」

リノアはかなり驚く。当たり前だ。守護神ガーディアンが、自分に従うとは思ってもみなかったからだ。

「そりゃあ、光属性必須だわ...」

「ね」

「やっぱ、何百年も生まれなかっただけの価値があるんだね...」

カラ達は光属性魔法の凄さを改めて感じ、リノアに感謝する。

〝という事は、安全という事ですよね...?〟

シフィはそんな事を口に出す。そのシフィの発言に納得するカラ達。

「確かに...」

「そうじゃな。光属性魔法を持っとるのはリノアじゃから、襲ってくることはまずないのぅ...」

そう言い、アヴァロンはそのまま扉へ向かう。カラ達もアヴァロンの後に着いていく。恐怖心が無くなったのか、リノアは守護神ガーディアンの足を撫でる。

「ありがとね、守護神ガーディアン

と感謝しながら。


そうして、カラ達は何事もなく進んでいき、扉の前に立つ。

「よし...開けるぞ...いいな?」

アヴァロンはカラ達の方を向き、確認する。カラ達は少しワクワクしながら頷く。そしてアヴァロンは扉を開けると、中は小さな図書室のような感じになっており、壁には本棚が左右に1つずつある。

「うわーぉ...」

「趣ある〜...」

〝秘密の図書室みたいですね...〟

カラ達は、本棚にある本のざっと見ながら、前へと進んでいく。すると、奥に台座の上で宙に浮いている本がある。

「...え、なにあの伝説の魔導書みたいな感じに置かれてる本は」

見たことあるようでないような光景を見てそんなツッコミをしてしまうカラ。

「凄い...。あれだけ浮いてますね...」

「あれが、魔王に関する記憶なんだよね...?」

クゥロはアヴァロンに質問すると、アヴァロンはニコッと口角が上がり

「あぁ...あれが魔王に関する記憶の本じゃ」

と頷く。

「ちなみに浮いとる理由は」

そう言いながら、アヴァロンが本に触れると、見えない謎の障壁に触れているのが見える。

「うわ〜ぉ!」

「こういう風に、この本だけ守られておるんじゃよ」

「バリア...?」

〝なんですかね...これ...〟

驚愕したあと、本を囲う球体型の障壁の正体を考えるカラ達一同。そんなカラ達に障壁の事をアヴァロンが語り始める。

「この封印は、ライニグが施した物でのぅ...」

「ライニグが...」

「やっぱ英雄だったから残したもの多いね」

ライニグという存在がどれほどにデカかったのか、それを思い知るカラ達。

「...それで、この封印を解くにはどうすればいいの?」

ルヴラはアヴァロンにそう質問すると、アヴァロンは真剣な表情になる。

そんなにも封印を解くのがムズいのか...。と一同、焦っているとアヴァロンが口を開け、その条件を言う。

「...かなり昔じゃったから、妾も忘れたわい」

その発言に、昔のバラエティ番組かのようにズッコケるカラ達。

「お、おばあちゃん...」

「あはは...すまん。」


「封印の解き方を知らないのか...」

「どうしよう...」

カラ達はどうやって本の封印を解くか考える。なるべく早めに解かなければ...。そう思っていると、シフィは一つ案を思い浮かぶ事に。

〝カラさんの力で封印を解くのはどうでしょうか...〟

そんな案を聞き、カラ達は一瞬思考が止まる。そしてカラを除いた皆が一斉に

「それだーーっ!!!」

と声を上げる。

「なんでそんな簡単なことを思いつかなかったんだ...!!」

「ほんと、そうじゃな...」

「私、自分が皆より少し賢いと思ってたけど、全然シフィの方が賢かった...」

各々嘆いたり、落ち込んだりするが、そんな皆の様子を見たシフィは困惑する。

「皆、シフィが困ってるよ。そんな事しないの。と言うかクゥロがそのノリするとは思わなかったよ...」

カラは、皆のノリを止める。

「でも、カラの能力が通じるかどうかは分からないけど、それでもいいの?」

と、皆に確認するカラ。

「全然良いよ!」

「当たり前ですっ!!」

「通じなかったらその時はその時」

皆は、そう言ってカラを励ます。そんな言葉にカラは笑顔になり。封印の障壁に触れる。

「行くよ...」

と、一人一人の顔を見る。リノア達は無言で頷く。全員を確認し終わり、カラは封印を見つめる。そして深呼吸をした後、全力で力を入れる。

「うわぁっ!?」

突然激しい光と風を放出する封印の障壁。そんな唐突な出来事に一同驚愕する。

「眩しすぎる...」

〝か、風も強いです...っ〟

「カラ様は大丈夫なのでしょうか...」

予想していなかった事に、1番近場にいたカラを心配するリノア。するとクゥロが

「あ、あれ...見て」

と、指を差す。リノア達はクゥロが指差した方向を見る。そこにはカラがまだ障壁の前で封印を解いている姿が見える。

「おそらくカラは障壁の破壊に集中しててこの光と風に気づいてない...」

「な、なんという集中力...」

アヴァロンはカラの異常な集中力に驚く、ひかし、それと同時に感心もしてしまう。

どんな状況下でも、一つのことに対し極限に集中するその能力。なんとも素晴らしい...。

そんな事を心の中で思う。

「...クソッ」

突然、カラの表情が変わる。それに気づいたリノアがカラに

「どうしたのですか!!カラ様!」

と質問する。カラは少し苦しいような表情のままリノアの質問に答える。

「この封印、一向に解ける気配がしないよ!!」

「え...っ!!?」

一同、カラの答えに驚愕する。今までカラならなんとなく行けると思っていたからだ。

「すでに何層か分解してるけど、分解する度に障壁が増えるから絶対に解けないようになってる!!」

「え!?」

カラから衝撃の事実を聞き、リノア達は絶望する。

「アヴァロン...何とかできないの!?」

クゥロが焦ったような表情をするも、アヴァロンは

「あの封印の構造はあまりにも複雑すぎる上に、何重にも重なっておる。どこまで封印されとるか分からん以上、本までも切ってしまうかも知らん...。更に、カラの話によれば、障壁は無理に破壊すると即座に再生する...。ならば妾の剣技のアダマスじゃとしても無理じゃのぅ...」

と、苦虫を噛み潰したような表情をして答える。

「これがライニグの魔法の緻密さ...。頭おかしいでしょ...」

ライニグが施した封印の化け物さにドン引きするクゥロ。

「わ、わたくしがやります...」

全員が封印が解けないと絶望しているとリノアはそう言い、強風が吹いてる中、必死に前へと進んでいく。そんなリノアに気づいたカラは障壁から手を離す。離した途端とてつもなく眩しい光と強風が消える。

「...リノア、まさか...」

「はい。わたくし、封印解くの頑張ります...!!」




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