第31話 別界の住民


「な...なんだこれ」

目の前に広がる逆さまの建物。自分は本当に地面に立っているのかすら分からない。そんな感覚に陥るカラ。

「す、凄いな...。なんか足がゾワゾワする...。」

その後、周りを見渡すがリノア達が居ないことに気づく。

「...あれ。もしかして、カラだけ何処かに飛ばされたか?」

少し、リノア達が心配だなぁ...。でも、だからといって1人だからパニックになるのもアレだし、とりあえず何が出来るか試してみるか。

そう思い、カラはその場で上に体重移動をする。すると突然、体が上へと移動し始める。

「ん...?これ、マズいんじゃ!?」

カラは突然の事に吃驚びっくりする。何故か、それは背中が建物の方向を向かず、頭が下のまま落下しているからだ。

「こ、これ...アスノヨゾラ哨戒班かなんかですかぁ!?!!?」

そんな冗談を言うが、このまま足が建物に着くと普通に折れる。回復もない。どうすれば...。そう焦っていると、落下する速度が急激に下がり、ふわふわしながら落ちる様になる。

「...え?」

困惑するカラ。当然の反応。能力が作動している訳でもないのに、何故かほんのり浮いているから。

「うわぁ...」

辺り一帯を見ていると、街中に人のような姿が見える。人が見えたことに安心したのか少しだけホッとするカラ。すると、カラは突然誰かにお姫様抱っこされる。

「うわわっ!?だ、誰...っ?」

カラはお姫様抱っこをしている人を見る。そこには青色の綺麗な髪、そして細目だが、よく見ると瞳の色が綺麗な水色と、とても美しい人で、思わず見とれてしまうカラ。

「やっと見つけた、お嬢さん。けど、貴女を探すのに疲れたから、一旦あそこの木の下まで行くね?」

「あ、え、は、はいぃ...」

あまりのかっこよさに、そう言わざるを得なくなるカラ。


数分後、目指していた木の下で休憩するカラと青髪の人。

「ふぅ、とりあえずここら辺で一息だね...」

スタイルも良く、ポニーテールで細目、青の髪に水色の瞳のキャラ...。あまりにも王子様すぎるなこの人...。

そんなことを思いつつその人をじっと見つめると、その人は、カラから見られていることに気づき、振り向いて優しく笑う。

は...?あまりにもカッコよすぎんか。

凝視しつつも、内心ちょっとキレるカラ。

「そんなに見つめられるとちょっと恥ずかしい...」

青髪の人はほんのり顔が赤くなり、顔を逸らしてそう言う。

は〜〜???何だこの少女漫画とかで見るキラキラ王子様な人物ヤツは。

そう思うも、そんなのを表に出さずその人と話す。

「あ、ごめんなさい...。どうして、急いでいたのか、それとなんでカラを...」

「あ、ごめんね...。そこを説明していなかったよ。まぁ、その前に自己紹介をしないとね...。それが礼儀だから」

そう言うと、その人は体をカラの方に向かせ、手を腰に添え、楽な格好になる。

「と思ったけど、やっぱり自己紹介はいいや、今はとりあえずあそこに行かなきゃ、とりあえず着いてきて」

そう言い、彼?彼女?はカラをまたお姫様抱っこする。

「ちょわっ!!!んもぅっ!!」

突然お姫様抱っこされ、思わずぶりっ子のような怒り方をしてしまうカラ。

「あっはは...!可愛い怒り方だね」

そんな反応をしたカラに対し、笑顔でそう言う青髪の人。すると、ある異変に気づく。

「あ...あれ?羽?」

そう。人なのに羽が生えているのだ。カラはそんな姿を見て、疑問を持つ。すると、青髪の人は笑顔のまま

「気づいちゃった...?でも、自己紹介はあそこに着いてからだよ」

そう言い、ウインクする。そんなあまりにカッコ良ぎる青髪の人にカラは少しだけときめく。

うわーぉ...。行動全てがイケメンだ...。

青髪の人に翻弄され、ボーッと見つめるカラであった。


「ふぅ...着いたよ。カラたん」

え?カラたん?

お姫様抱っこから降りようとすると、そんな呼び方をされ、思わず青髪の人の顔を見てしまうカラ。その後後ろを振り返ると、

「え、え!?」

と驚愕する。何故か。理由は単純で、そこにはとてつもなくでかい神殿があった為だ。

「で、でか!?」

「ふふっ、そうだね。あの宮殿はとてつもなく大きいよ」

思わず声が出てしまったカラに笑ってしまう青髪の人。

「ようこそオリンポスへ」

「オ、オリンポス!?」

聞いたことはある。ギリシャにおける神々が集う場所。何故、俺が...そんな事を思いながら棒立ちしていると、遠くから声が聞こえる。カラはその方向を向くと、

「カラ様〜!!」

と、笑顔でこちらに走ってくるリノアが見える。

「リノア!!」

リノアに気づき、カラも満面の笑みになり、腕を広げる。そして、リノアはカラに飛び込み、カラは、飛び込み抱きつきをして来たリノアを受け止める。

「っ...良かったですカラ様!!」

少し強めに抱きつくリノア。それに応え、カラも強く抱きしめる。

「カラも、死んだと思ったよ...」

そうしていると、ルヴラやシフィ、クゥロも抱きつきに来る。

「カラーー!!!」

「カラさんっ!!」

「うぉぁあああ!?!」

あまりに大人数だった為、耐えられず、倒れ込む。

「アッハハハ!!良かった!!」

「本当に良かったです...」

「感動の再会ですね...」

青髪の人は少しだけ泣きながら、そう言う。すると、一同、カラから離れる。

「と、とりあえず、なんでここに運ばれたかです...!!」

見られていたのが恥ずかしかったのか、リノアは少し焦りながら話題を変える。


「あそこはオリンポス。神々の集う場所だよ。」

すると、リノアの後ろから声が聞こえたカラ達はそっちを見る。そこには赤紫色の髪の少女がこちらに近づいてくるのが見える。しかし、その子も羽が生えている。

「ガブ、カラの護送お疲れだよ」

「ミカちこそ、皆連れてくるの...って思ったけど、ミカちなら大丈夫だね」

「そうだよガブ。僕は皆より少し力が強いんだからさ!」

そんな話を2人で和気藹々としている。しかし、話の内容を聞いてたカラは、名前の呼び方で分かり、驚愕する。

「ミ、ミカとガブって...」

「カラ様...?」

「どうしたの?」

「もしかして、ミカエルとガブリエル...?」

恐る恐る聞き、順番に指を差すカラ、そんな質問に2人は

「合ってる。流石日本人、分かってるね」

「うん。そうだよ。」

と、順番に答える笑顔で頷く。その答えに、カラは驚愕のあまり失神する。

「カ、カラ様!!」

「大丈夫だよ。失神してるだけだから」

ガブリエルと呼ばれるその子はそう言う。だがカラが大好きなリノアはカラをおんぶする。

「ミカエルと、ガブリエル...?」

ルヴラは誰だ?と2人を見つめる。カラは動揺している為、アヴァロンは答える。

「ミカエルとガブリエルは、言わば天使。天の使いの者じゃ」

「て、天使!?」

「嘘!?」

〝天使って、おとぎ話じゃないのですか...!?〟

「なるほどね...」

アヴァロンから伝えられた事により、リノア達は驚愕する。どうやらこの世界の天使の扱いはおとぎ話で、ある種日本に近いような扱われ方をしている。

「まぁ、とりあえず話しながら神殿に入ろう」

ミカエルはそういい、歩き始める。

「まぁ、とりあえず行くとするかのぅ」

「う、うん...」

ミカエル達の後をついて行くリノア達。


「ところで、アヴァロン。ミカエルと知り合いみたいだったけど...どういった関係なの?」

歩いている最中、ルヴラはオリンポスに来る前に疑問に思っていたことを話す。そんな質問を聞き、アヴァロンはミカエルの方を見る。そうするとミカエルは頷く。

「どこから話そうかのぅ...。まぁとりあえず、出会いから話すか。妾とミカエルの出会いはかなり昔のことでのぅ。それこそ、ライニグが来る前の話じゃのぅ」

「ラ、ライニグの前...」

「つまり、600年より前って事...!?」

そんな昔からアヴァロンが生きていた事に驚く一同。

「まぁたしかに、キャメロットの話でとてつもない長生きってのは知ってたけど」

「まさかここまでとは思わないよね〜...」

「仕方ないじゃろう。妾は事実上の不死身なんじゃから」

そんなみんなの発言に、少しだけ怒りながらアヴァロンは言う。

〝本当に何歳なのか気になる...〟

「んね〜」

一同、余計にアヴァロンの年齢を知りたがる。

「...ライニグがここに転生する前、妾は長旅をしておった。」

と、アヴァロンは皆の話を無視し、話を続ける

「その旅先で出会ったのが、ミカエルなんじゃよ」


────約950年前。

『妾は、一人で自由に旅をしとった。その時は平原を歩いておってな。それで、歩きながら次の国はどこにしようか悩んでおったんじゃが、その時、平原で人が倒れとるのが見えた。妾は死にそうになっているのでは無いかと思い、急いで近づいたんじゃよ。』

「おい、お主大丈夫か?」

「...ぅ」

『見たところ、その子は何かに苦しんでおるようで、まともに動けん。そこで妾はその子に日陰に運び、その子が起きる間だけ介抱したんじゃ。』


数時間後。

「うぅっ...ん...」

赤紫色の髪の子は目を覚まし、辺りを見渡す。

「...夜だ」

空を見ると、近くに光がない為、星々が綺麗にくっきりと見える。

『その後、妾は狩りを終えて、帰ってきたんじゃ、そしてその子が目覚めたのじゃと分かり、その子に近づいたんじゃ』

「おぉ、目覚めたか。お主、平原で倒れておったんじゃよ」

狩って来た猪のような魔物の皮を剥ぎ、調理していくアヴァロン。しかし、その子は少しだけ警戒をする。

「貴女...誰?」

だが、アヴァロンは無理に警戒を解かせようとせず、そのままの状態で話す。

「妾はアヴァロン。旅人みたいなものじゃよ」

「...旅人」

「お主の名前はなんじゃ?」

『妾は、その子の名前を聞く。若干警戒心があるから、教えてくれるかは分からんかったんじゃが、妾に敵意が無いと分かったのか、名乗ってくれたんじゃよ』

「...ミカエル」

アヴァロンは名乗ってくれた事が嬉しく、満面の笑みになり、肉を焼く。

「ミカエル...。ミカエルかぁ...」

「...な、何で、僕の名前をそんなに呼ぶの...」

「ふふっ、別にいいじゃろう?」

アヴァロン達は肉を食べ、その日は睡眠する。


次の日。

「さて...。お主、どこの国の者なんじゃ?」

『妾は、ミカエルを国に返そうと思い、そう妾はその子に質問したんじゃが、その子は』

「...言ったって行けないよ」

『と言ったんじゃよ...。妾は行けないとはどういうことなんじゃと思い、その子に聞く事にすると』

「僕の国...。住んでた場所はエリュシオン、あなた達人間が言う所の天界。」

ミカエルは大きく綺麗な深紅の瞳で、アヴァロンを見つめ、そう答える。

『その時に妾は知ったんじゃ、その子は人間ではなく天使なのだと。確かによく見ると、瞳の角膜の所に十字架がある。妾はなぜそれに気づけなかったのかと、少し後悔するんじゃ』

「僕は自然治癒するまでここに居とくから、アヴァロン。貴女は旅をしに行って」

ミカエルは、3角座りのまま顔をアヴァロンから逸らして言う。

『じゃが、ミカエルは少しだけ寂しそうな顔をしておってな。このままほっとく訳にもいかんなぁと思い、妾は』

「なら妾もここにおるぞ?」

「えっ!?」

アヴァロンはそう発言して、ミカエルの隣に座る。ミカエルはアヴァロンの発言に驚愕し、アヴァロンの方を見る。すると、アヴァロンはミカエルの頭を撫でて、微笑む。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る