第30話 超過した感情
「このままじゃマズイ気がするのぅ...」
しかし、どうする...。おそらく今のカラを止めることが出来る存在はロキ以外におらん...。じゃが...。
アヴァロンは心の中でそんな葛藤するが、そんな時間は無い。もうすでにカラはロキへ向かっているからだ。
「ッハハハ!!!何という力!!最高だなァ!カラァ!!」
「...さすが魔王か。今の状態のカラを真正面から殴り合って、止めるとはな...。」
アヴァロンは2人の異次元すぎる戦いにドン引きする。
「移行。発動。」
そう言い、ナニカは手のひらを広げロキの方に向ける。すると、ナニカの手に高密度のエネルギーが集まっていく。
な、なんじゃあの力は...。厄災との戦いではあんな力見せなかったじゃろう...
アヴァロンは先の戦いでは見せなかった力を見て、驚愕する。
「ほう...?あの、先程の小娘がやっていたようなレーザーか?暴走している状態でも記憶はあるのだなぁ」
ロキはその場から微動だにせずに、ナニカを分析する。
彼奴、何という余裕なんじゃ...。あの状態のカラにぼっ立ちで分析するとは...。やはり自分が最強じゃと思っとるからか
アヴァロンは、ロキの自身に満ちたその姿にドン引くも納得する。
「よし...来い。カラよ」
腕を組み、嘲笑いながらも、期待するロキ。
「発射」
期待に応えるかのように、無表情でナニカは手から高密度の光線を放つ。
「ふっ」
そして、そのまま光線はロキに直撃する。そこらへんの奴ならばこの状態での攻撃で終わるはずなのだが、相手は魔王。そんな簡単なわけがなく。
「ふ...そんなものか、転生者の力とは」
「やはり魔王。無傷か...。」
そんな魔王の強さに、表情が少し動くナニカ。すると
「今度は私の番だなァ!!」
ロキが嬉しそうに大声でそういった瞬間。ロキはナニカの目の前に移動していた。
「なっ!?」
いつ見てもおかしい...。なんじゃあの速さは。あんな速さ、人間じゃ反応出来んぞ...。
アヴァロンは、異次元すぎる身体能力に驚愕する。しかし、同時にこうも思った。
じゃが、魔王はまだ本気では無い...。魔王は1つ前の魔王の力を扱える。つまり、闇魔法も扱えるはずじゃ...。なのにつかわん...。なぜじゃ?何故彼奴は使わんのだ...
「フンッ!!」
「...ッ」
ナニカはロキの事を認識できず、そのままロキの攻撃を食らう。
「フッハハハ...!!もっと...!もっと見せてみろォ!!お前の
ロキはそう興奮しながら、ナニカを殴り続ける。対してナニカは殴られ続けていても無言のまま。
「お前はァ!まだ全力すら出していない我に一方的に蹂躙される雑魚だァ!!だから仲間を救うことが出来ない!!これからもこの先もずっとォ!!」
ロキはナニカに対して暴言、侮辱等を吐き散らしながら殴り続ける。
「だからあの光属性魔法を扱うガキも!!氷属性魔法を扱うガキも死ぬんだァ!!!」
そう言い、今までで1番大ぶりの拳が入りそうになった瞬間。ジジジッと、まるで漏電しているような音が鳴る。
ん...?何の音だ
その音を不穏に思い、ロキが止まると
「オーバーフロー。オーバーフロー。」
「なんじゃ...!?」
突然、カラの体からそんな音声が発せられ、驚くアヴァロン。
「な、なんだ...?」
ロキは困惑のあまり、そうその場で止まっていると突然、ナニカから爆風が発生し、アヴァロンとロキは遠くへ吹き飛ばされる。
「と、突然なんじゃ...っ!?」
「ぐっ...!」
目を細めながら、ナニカが居た方向を見る。しかし、そこには何もいない
「ど、何処に...」
ロキは辺りを見渡しながら。自身の周りの全ての範囲を警戒する。すると
「グッ!?」
突然何かに腹部を殴られるロキ。
「な、何じゃ...?」
アヴァロンは、今の状況を理解できない。それもそうだ。カラだった者は消え、ロキは突然何かにやられたように痛みに苦しんでいるからだ。
「今の攻撃、カラか...?」
そうロキが言った途端、ナニカはロキの目の前に現れる。しかし、ナニカの様子がおかしい。そう思い、ロキはナニカをじっくり見る。すると、ロキは気づく。目の焦点がさっきより合っていない。更には目の色が黒色になっている。と
「...お前...。暴走してるのか」
そう言い、何とか体勢を立て直すとナニカは喋り始める。
「貴様ヲ、コロス」
その言葉を聞くロキは心の奥底から失望する。
「そうか。暴走してしまったんだな。本気の能力を見れると思ったのに...。」
「フンッ!!」
「...ッ!!!」
ロキは本気でナニカを殴り、行動不能にする。
「残念だ」
そう言い、ロキは魔法を発動する。
「...そう言えばアヴァロンよ。我の魔法が何か知っているか?」
突然、ロキから質問されるアヴァロン。しかし、今の魔王が扱っている魔法の記載が無かった為、分からない。その為
「先代魔王の闇魔法しか知らぬ。記憶の本にお主の魔法の記載は無かったからのぅ」
アヴァロンはそう言うと、ロキは大笑いする。そして
「確かに、先代は闇魔法だったな...。だが、今の我にはそんな魔法は要らぬ。」
なっ!?先代魔王の魔法を受け継がんかったのか!?そんなもん前代未聞じゃぞ!?
ロキの行動に驚愕するアヴァロン。それもそうだ。過去の魔王は闇魔法を受け継ぎ、その魔法を持ってして、人々を恐怖の底へ叩きつける事が共通していた。しかし、今の魔王は闇魔法を扱っていない。となると、なんの魔法なのか検討もつかないのだ。
「今から、この世に存在しなかった魔法をお前の前で使ってやる。部下も知らない、世界も知らない...。あ、そういえばそうだった。この魔法は、聞き取れないんだったな...」
「████」
い、今なんと言ったんじゃ...?何か雑音の様な物に妨害されて、なんの魔法か聞き取れんかったが...。
アヴァロンは困惑する。ロキが魔法の名を言った瞬間、謎の雑音で聞こえなかったからだ。そう戸惑っていると、カラだった物の周りの空間が突然歪み始める。
「なんじゃっ!?」
その光景を見て、ロキは嘲笑いながら答える。
「フッハハ...!!これは██によって発現させた世界でな...。この世界は我が狙った者のみしか入れぬし、出ることも不可能だ...。」
「な、なんじゃと...」
アヴァロンはそんな絶望する様な事実を聞くも、抵抗する。
「そんなもの、信じられるかっ...!!アダマスッ!!」
アヴァロンは大技を放つも、その斬撃はカラだった者を囲う空間の歪みによって斬撃は消滅する。
「そ、んな...馬鹿な...。」
「フッ...。だから言っただろう無駄だと」
そんな光景を目の当たりにし、アヴァロンは絶望する。そしてその後、カラだった者は空間の歪みと共にこの世界から消えた。
「...さて、英雄気取りの偽物は、我の██から抜け出せるか楽しみだ。クッフフ...アッハハハハハ!!!」
そう呟くと、ロキは空間の歪みを使いその場から去っていく。
「グッ...。カラ...折角、お主に着いてゆくと約束したのに...。すまん。妾、お主の事何も助けてやれんかった...。」
今にも泣きそうな表情でそんな言葉を吐きながら、ゆっくりと地面へと近づく。
〝あ、アヴァロンさん...!〟
空中からゆっくりと下りてくるアヴァロンを見つけ、近づいてくるシフィ。
「...シフィ」
〝どうしたのですか...?それに、カラさんは...〟
シフィはアヴァロンの周りを見るも、見当たらない。少し心がざわめく。少しだけ嫌な予感がした。けれどそんなわけが無いと必死に笑顔を維持する。しかし、アヴァロンは時事実を伝えなければと、悲しい表情で伝える。
「カラは...この世界から消えた」
数秒、辺りに静寂が漂う。
〝え...〟
シフィの作り笑いが少し崩れる。
「すまぬ...。妾はカラを助けてやれんかった...。」
「嘘...」
その発言を聞き、シフィはカラが居なくなったという事実を理解し、絶望する。すると、後ろからルヴラとルヴラに
「な...。カラ様が消えた...?」
「そんな嘘でしょ...」
するとリノアは、殺意の籠った表情でアヴァロンに近づき、胸ぐらを掴む。
「なんで、カラ様を助けなかったんだ!!」
怒りのあまり敬語すらも使わないリノア。それ程に気が動転している。
「助けなかった訳では無い」
そんな事が起きても、抗わず、動揺せずに冷静に話すアヴァロン。
「じゃあ、アヴァロンが居たのになんで消えたんだよ!!」
「リノア...アヴァロンが悪い訳じゃないよ」
ルヴラはリノアを宥めるため、腕を触り、アヴァロンからリノアを解こうとするが、リノアは抵抗し
「邪魔!今はアヴァロンと話してるの!!」
と、物凄い怒号でルヴラに怒鳴る。
「リノア...」
「いや、これは妾のせいじゃ。妾が弱かったせいでカラを助けれんかったんじゃ」
アヴァロンはルヴラに対してそう言い、リノアの怒りを受け止める。
「いや、アヴァロンのせいじゃ...」
自分を責めないようアヴァロンに、そう言おうとすると
「そうだよ...ッ!!」
リノアは大声をあげる。そんなリノアにびっくりする一同。
「アヴァロンが弱かったせいで、わたくし達が弱いせいでカラ様は...。カラ様が消えてしまうくらいなら、わたくしが」
泣きながらそんな事を言おうとした瞬間。
「リノア!!」
後ろから怒りながらリノアを呼ぶ声が聞こえる。一同、その声を向くとそこにはクゥロが居た。すると、クゥロはリノアの方へ近づいていく。
「...クゥロ様?」
〝お、起きたのですね...。良かったです...〟
シフィはクゥロが目覚めてくれた事にホッとしたのも束の間、クゥロはリノアの事をビンタする。
「えっ...」
「ク、クゥロ!?」
「な、何を!!」
リノアが逆ギレしクゥロの方を振り向くと、泣くのを必死にこらえてるクゥロが見えた。
「...クゥロ様」
そんなクゥロを見てリノアは驚愕する。
「カラが居なくなって悲しいのは一緒なんだから。それに、カラがいなくなるよりリノア。貴女が居なくなった方がいいだなんて、絶対に言わないで。そんなのカラが知ったらどう思うの」
そう言われ、リノアは反省する。
〝落ち着きましたか...?〟
「...うん。ごめんね皆」
シフィはリノアの頭を撫でながら、優しく質問すると、リノアは皆に謝罪する。
「でも、リノアの気持ちも分かるよ。だって、僕もカラの事好きだし...」
〝そうですね...。シフィもリノアさんの気持ち分かります〟
そう言い、先程のリノアを少し擁護する。が、クゥロは
「だからと言って、代わりに自分が死ねばいいは良くない。カラに申し訳が立たないし。それと、アヴァロン。自分を背負いすぎ。確かにアヴァロンは強いけども」
悪いところもあるとリノアとアヴァロンを叱る。
「...はい。ごめんなさい。クゥロ様」
「そうじゃな。申し訳ない。」
そうして、なんとか場はおさまる。が、問題はカラの行方。傍で見ていたアヴァロンでさえどこに行ったか分からなかった。その事実を知り、クゥロ達はカラがどこに行ったのか考える。
「一体、何処に行ったのでしょうか...」
〝魔王は、カラさんをとある世界に入れたと言ったのですよね?〟
シフィはアヴァロンに魔王から言われた空間の歪みの事を聞き、アヴァロンは頷く。
「そうじゃな...。じゃがそれがなんという世界かは何故か聞き取れなかったがのぅ。更に、奴は闇魔法を使ってなかった。と言うより闇魔法を持っておらんかった。それだけじゃな」
アヴァロンが話した内容、それが発動された後、どこかへと消えたカラ。魔王に関する記憶の本の内容。皆が話している中、クゥロは、その3つの証拠からどういった能力なのかを考える。
「魔王の魔法...魔法は継承されていない。記憶の本に記載された、理に背いたと言う事実。消えたカラ...。」
すると、ある1つの憶測に辿り着く。しかし、それはヤバすぎると更に考える。だが、その憶測は全ての点が繋がると知り、動揺する。
「...どうしたのですか?クゥロ様...。何か気づきました?」
そう聞くと、クゥロは覚悟を決める。
「うん。気づいたけど...」
「けど...?」
「あくまでも可能性の話だけど。」
そう前提を置き、ゆっくりと順を追って話す。
「まず、証拠1つ目。
「そうですね...」
クゥロの話を聞き、記憶を辿りながら頷く皆。
「証拠2つ目。アヴァロンの話によると、今の魔王は先代魔王の闇魔法を受け継いでいない。つまり、別の魔法が扱える。」
「そうじゃ。実際に魔王からその話を聞いたからのぅ」
腕を組みながらアヴァロンは、自分が言った事とクゥロが言った事の齟齬がない事を確認し納得する。
「証拠3つ目。その魔法によってカラは何処かの世界へと消えた。」
「この3つの証拠の結果考えられる答えは...。魔王ロキはパラドックス。つまり逆理を自由に扱える魔法を覚えている。そしてカラは逆理によって作られた逆理世界に閉じ込められてる...と思う。」
「逆理...って...。」
「そんなのどうやってカラ様を助けるのですか...?」
リノアは、カラの事を心配した表情でクゥロにそう質問する。しかし、クゥロは
「こっちの世界から逆理世界に干渉する方法が、ロキの魔法以外にないから無理だと思う。だから現状としてはカラのことは誰も助けることが出来ない」
「じゃろうな。おそらく数日はこの国に滞在し、カラの帰還を待つ以外無理じゃな」
それを聞き、リノアは悲しい表情をするが、クゥロは
「でも、そんな普通に悲しんでたらカラが帰ってきた時、呆れられちゃうよ。だからカラの事を信じよう?リノア。」
「そう、だね!カラ様の事信じなきゃだよね...っ!!」
リノアは皆のおかげで、萎えることなくやる気が上がり、頑張るぞと拳を握ると突然、空から人がやってくる。
「人が...」
突然現れた赤紫色の髪の少女は、バサバサと羽を羽ばたかせてゆっくりと下り
「あなた達、早く着いて来て」
と、腕を組みながらそう言う。
「は、羽...!?」
羽の生えた人に驚愕するリノア達。
「お主、まさか...」
アヴァロンはそう言うと、謎の人は少し笑って
「久しぶり。アヴァロン」
と答える。
場所は変わり、ここは何処かの世界。
「ぐぅ...っ」
「ここは一体...。」
「って...え?」
目を覚ましたカラ。起き上がり、周りを見渡すと、衝撃の光景が目に映る。
「なんで建物が上に...」
理解不能な景色にカラは圧倒される。
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