第35話 異次元の存在

「今まで効いてる感じなかったのに...」

「あのゼウスって主が攻撃した瞬間、ルシファーって人が吹き飛んだ...」

一同、衝撃的な光景を目の当たりにし、絶句する。ここまで差が激しいのかと。

「ほっほ...久しぶりにこの力を使ったわい」

ゼウスは雷でほんのり包まれている右手を見つめる。

「さて!ゼウスも力出したんだ!オレも精一杯頑張らねぇとなぁ!!!」

ウッコはそう言うと、地面を思いきり踏みしめる。すると、急に辺りの空気が一変する。

「な、何...?急に」

「空が暗くなった?」

突然の事にカラ達は動揺していると、ウッコは笑いながら何かの構えをする。

「天を穿ち、全を統べる。それ即ち天空神に有り!」

何か、祝詞のようなものを唱えると、ウッコは目の前に手を広げる。すると、そこに青く光る稲妻が発生する。

「来い!ウコンバサラ!!」

そう大声で言い放つと、稲妻の中から強い光が現れ、ウッコはそれを握りしめる。すると、光から物体へと変化していき、段々とウコンバサラの全体が明らかになる。

「お、斧だ...」

「デカ...」

その見た目はとてつもなくでかい斧。しかし、ウッコはソレを楽々と片手で担いでいる。

「っしゃぁ!ゼウスのジジイもウッコもヤル気になったな!んなら俺もヤル気出さねぇと行けなくなっちまったなァァ!!!」

今度はブラフマーがとてつもないオーラを出し始める。

「さて...。2人目。大暴れしろよ」

「御意に」

ブラフマーは自身に向けてそう言う。すると、突然ブラフマーの肌色が赤から青へとが変化していく。そして、全体的な雰囲気も変わっていく。

「余。理によってかいとし。万物をもって、壊と。」

何故か空中浮遊をしながら、阿弥陀仏のような構えをしているブラフマー。いや、もうブラフマーではない。その表情は何処か悟りを開いているような。そんな優しい表情をしており、カラ達はその変わりように驚愕する。

「フッ、久しぶりに見たなァ。シヴァの姿」

「お久しぶりです。ウッコさん」

シ、シヴァ...。ヒンドゥー教の破壊神...。まさかブラフマーがシヴァと同一人物とは...。

ブラフマーとシヴァが同一人物だと言うことを知り、カラは更に驚愕する。

「ふふ...。皆、続々と本気を出して来てますね...。ならば私も」

アマテラスはそう言うと、背後からとてつもない光が出てくる。そして、段々とその光に包まれてゆく。

「我は日の神、高天原の主にして、太陽を統べる者、天を照らし、此の世を全てを守護する者」

そう言い終わると、光が弱まっていき、アマテラスの姿も明らかになる。

「天照大御神。降臨」

先程とは違うその姿は、日本神話の姿そのまんまで、あまりの神々しさにカラ達は目を奪われる。

「あら、うふふ」

その目線に気づいたアマテラスは笑を零し、カラ達に手を振る。

「いっつも思うけど、アンタらのその文言なんなの?アタシみたいに黙って力出せないの?」

カラ達と同じくらいの身長の子が出てきた。しかし、言い回し的にこの子も主の一人なのだろう。そう思うと、その子は目の前に紫の雷を発生させる。その後、その稲妻の中から球体が11個現れ、その子の周りを回る。

「こういう風にさぁ」

「そんな風に詠唱無しで発動出来るのは、マズダーかお主だけじゃよユピテル」

ゼウスは笑いながらユピテルに言う。しかしユピテルは、フンッと少し怒りながら顔を逸らす。

「まぁ確かに、僕も思うんですよねぇ。何故無詠唱でやらないのかと」

糸目で金色長髪の男性は、そう言いながら空中に浮かび、両腕を広げると、手のひらに光が集まってゆく。

「そうした方が時短できて良いのに...」

マズダーは少しガッカリした表情で言うが、ゼウスたちは無視する。

「行っくよ〜!皆〜!」

空から声がした。カラ達はその声の方を見ると、そこには空中に浮いている褐色ロリがいた。

「来たか」

「やっと来よったな」

主らはそう言い、笑みが零れる。この言葉からあの子も主であることは間違いない。しかし元気ハツラツな主だなぁと思っていると、何か棒の方なものを持っており、それを上に掲げる。

「豊穣の恵みよ!深く優しい太陽の光よ!ラーの名のもとに、この者らに聖なる希望と祝福を与え給え!」

そう唱えた途端、ラーの背後から優しい光が発光する。

「この先の戦いは大丈夫!ラーが皆に力を貸すよーっ!」

空中に浮きながら、ラーは満面の笑みではしゃぐ。


「...主らが本気出してくれたんじゃ。妾らも精一杯答えねばなッ!」

「そうですね!」

「OK!」

アヴァロン達も、主らに共鳴するように全力を出す。しかし、カラは

俺は、これまで感情が昂りすぎて、その結果暴走と言うのを何回もしている。またこのまま俺は全力を出していいのだろうか...。

と、自身の能力を苛む。

「カラよ、ボサっとしとらんで戦わんか」

アヴァロンは棒立ちしているカラにそう言う。しかし、カラは落ち込んだ表情。そんな様子を見て、心配したのか、アヴァロンはカラの方に近づく。

「カラ、どうしたんじゃ?」

「...いや、なんでもない。ボーッとしてただけ」

カラはすぐにそう答え、笑う。そんなカラにアヴァロンは不思議がるが、何も言わずに流す。

「っし、行くか!」

<trans>

「ハッ!全員同時に本気か!それで俺達が絶望するとか思ってんだろうなァ!?」

上空から、そんな怒鳴り声が聞こえる。その声を聞き、カラ達は上を向く。すると、そこにはギザ歯の悪魔が

「アザゼル...」

「久しぶりだなァ...。クソジジイ...」

「俺とルシファーは、んなもんで絶望する程ヤワじゃねぇンだわ」

とんでもなくデカい剣を片手で余裕そうに振り回しながら、ゼウスに嫌悪の視線を送るアザゼル。

「...子供らはどうした」

「子供ら?あァ...。本当の悪も知らねェ脳死天使の事か、そいつらはもう殺した。まァ、テメェらが生きてたら戻ってくるのがオチだが...。」

て、天使を殺した!?嘘だろ...。どれだけ強いんだよコイツ...。ん?待て、今ゼウス達が生きてたら戻ってくるって言ったか?

カラは動揺する。文字通り、異次元な者同士のこの戦いに。自分は不必要なのでは無いか。そんな言葉が脳裏に過ぎるほどに。しかし、アザゼルが言ったことを不思議がる。

「じゃからワシらを直接倒しに来たのか」

「あァ、そうさ。」

アザゼルは、殺意の籠った黒く光る瞳で、ゼウスを見つめながらニヤける。

「じゃがお主とはいえ、本気のワシには敵うまい」

またも、ゼウスは見えない速度でアザゼルに攻撃を仕掛ける。しかし、アザゼルはその速度に対応する。

「なっ!?」

流石のゼウスも対応できるとは思っていなかったのか、思わず驚きの声を出す。

「どうやって...」

「そう言って来ると思ってたぜ...。ジジイ...。そう言って、突っ込んで来るってな。だから俺はロキに貰ったンだよ、このチカラをな」

「な!?能力付与じゃと...!?」

そんなの...。そんなの!

「"理"みたいだ。ってか?」

「っ!!」

そう言うと、アザゼルは更にニヤッとする。

「テメェらは、あの転生者のお仲間に教えられたンじゃねェのか?ロキの能力が逆理である事を...」

半笑いでアザゼルは言う。しかし、逆理である事と、チカラの付与がどのように作用しているのか全く理解ができないカラ達は、頭の中が疑問しか無い。するとアザゼルは話し始める。

「逆理、つまりこの世の理を知った上でわざとソレに逆らってンだ...。この世の理が付与出来るのに、逆理なら出来ないだなンて、そんなの"不条理"だろう?」

アザゼルはニヤケながらそう答える。

「不条理...。理に逆らっておきながら何を言っとるんじゃ」

ゼウスは両手を握りしめ、思い切りぶつける。その瞬間、辺りに雷鳴が響き始める。

「完全に本気でやらねばならんのぅ...。」

「キヒッ...。やっと本気────」

刹那。アザゼルは遠くへと吹き飛ぶ。何が起こったのか、脳が処理しきれていない様子のカラ達。カラ達は一瞬も目を離していなかった。しかし、ゼウスは人の目に見える速度を超えて、アザゼルを攻撃したのだ。すると、ゼウスの後ろからアザゼルが飛んでくる。殴られた衝撃は惑星を一周する程であった。

「フンッ!」

後ろ手でアザゼルの頭を殴り、アザゼルの勢いを止める。

「ガ...ッ!!」

「アザゼル、お前の本気なぞ、ワシの全力をもってしたら無力の他ないぞ...。」

そうゼウスは気絶しかけているアザゼルに告げると、ゼウスは雷を両手に纏わせる。

「神雷帝轟燼ッ!!」

そう唱えるゼウス。そしてゼウスは雷を纏った両の拳を、残像が出来るほどの速さでアザゼルを殴る。

「...ァッ!!!」

ンだこれ...。次元違いすぎるだろうが...。

アザゼルは意識が吹き飛びそうになりながら、ただ、そんなことを思う。

「お主の厄介なところは、攻撃を喰らえば喰らうほど力が増すところじゃ、じゃから本気で、尚且つ一瞬で終わらせる...っ!!」

しかし、ゼウスは容赦なく殴り掛かる。するとコォーンと音が鳴り響く。ゼウスは攻撃を止め、不機嫌な表情になる。

「...最悪じゃ」

「フッフッフ...。グッドタイミングだよ。お父さん」

「まだ気絶しておると思っておったわ...」

「ヤダなぁ...。僕がそんな簡単に気絶するわけないじゃん」

そう言うとルシファーら指を鳴らし

失われた世界ロストワールド

と唱える。すると、白黒の世界になる。

「な、何だこれ...」

カラ達は白黒の世界に動揺し、辺りを見渡す。すると、ゼウスは超絶不機嫌そうな声色で答える。

「ルシファーはその強さから、ロストワールドと言う固有空間を作り出すことが出来るのじゃが、この世界が発動されている間は、魔法やその他エネルギーが全て消失するんじゃよ」

「す、全て消失!?」

つまりここからは素の能力で戦わなければならないのか...!?

カラはロストワールドの異常性を知り、絶望する。

「じゃからルシファーは気絶しとる内に倒したかったんじゃ...」

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