第3話 オーバーヒート

「ところでカラは魔王討伐についてどう思ってるの」

「あ!確かにわたくしも気になります...!!」

怒涛の一日が過ぎた次の日の昼ごはん中に、クゥロは俺に問いかけた。ちなむと、今はクゥロに提案され、王宮に住まわさせてもらっている。


「魔王討伐かぁ...今はそんなに急いでないかなぁ...」

そりゃそうだ。夢の異世界ライフだ。もしかしたら魔王倒してしまうと、現実世界に戻ってしまうかもしれない。そんなのはごめんだ。それにまだ魔王を討伐するという実感が湧かないのもある。まだ実害は無い訳だし...。

「そうなのですね...」

「ふーん...そう」

何故ガッカリされるのだろうか...。実際問題、異世界系の主人公がここからラスボスを倒す。というのはテンプレの進み方だ。実際にそうしないとダメな理由もあるしな。ただ、俺にはそれが無い。まぁ今はって一応付け足すか。後で気持ちが変わるかもしれないしな...。

「カラには魔王を倒す理由がないから、そんなに魔王を倒す意欲が湧かないんだよね...それにまだ転生してきて一日しか経ってないしねー」

とリノアとクゥロに言う。

「たしかに...突然異世界から転生してきて、転生した日に、魔王討伐してくれませんか。って言われても困りますね...」

「そうだね」

「でしょ?」

カラの言葉で理解するリノアとクゥロ。すると扉が開く。

「どうじゃ?仲良く昼食を食べておるか?」

「ユラ様!」

現れたのはラヴィリニの王、ユラ王様だ。

「王様...!」

「父様...おはよう」

ユラ王が起きてきて、皆挨拶をする。

「ああ、おはようクゥロ、リノア、カラ」

「おはようございます...!!ユラ様!」

「おはようございます」

とこっちにも挨拶してくれたので返す。

「先程は何の話をしておったのだ?」

ユラ王は自身の椅子に座り、俺らに聞く。

「えと...カラの魔王討伐に対する気持ち」

「なるほどな」

昨日と同じく髭を触るユラ王。

「まだ転生してきて1日しか経ってないから、実感が湧いてないって」

「わたくしも...実際に転生したら実感が湧かず、困惑してしまいます...」

と俯きながら言うリノア。

「私も、同じ立場だったらカラと同じになってると思う」

相変わらず表情が変わらないクゥロ。

「まぁ...普通そうなるな...」

と言うと、その後ユラ王は前に見せた優しい笑顔になり。

「適応能力がとてつもなく高いと、すぐに順応して、魔王討伐行く!となるかもしれんが、お主らはまだ幼子じゃ、困惑するのが当たり前じゃよ。」

と言った。

すげぇ...流石この世界で1番平和な国の王をやってるだけはあるな...対応が上手いし大人だ。

「子供でも関係ってあるの?」

と捉え方によっては、煽りにも聞こえる文言を口にするクゥロ。すんごいな。

「子供だから適応能力が低いという訳でも無い。大人になっても低いままの人もおる。子供でも適応能力が高い子もおる。人それぞれじゃよ」

「人それぞれ...」

「じゃから、今すぐに冒険しろと言ってる訳では無い。ゆっくり自分のペースでやっていくのがベストじゃよ。人には人のペースって言うものがあるんじゃ」

やべ、俺悟りそう。なんて思ってるとリノアが

「そ、そうですよね!!」

と言いながら立ち上がる。突然立ち上がるのビックリするわよ貴女。

「人には人のペースですよね...!!」

「あぁそうじゃ」

とユラ王はニコニコだ。


「と言うことで」

何故かリノアが俺の近くに来た...がなんとなく察している。

「昨日約束したデート!しましょう!!カラ様!」

「ほっ!?」

と、とても驚いた様子のユラ王。まぁそりゃそうだ。確かに自分のペースとは言ったが、そういう意味で言った訳では無い。そして俺はのがれられなかったみたいだ。

「お2人共、行ってらっしゃいませ。」

と執事が言い。そしてドアが閉まる。

「...クゥロはカラを誘わなくて良いのか?」

とクゥロの隣に行くユラ王。

「...うるさい」

「そうかそうかすまんの...」

と自分の部屋に戻って行くユラ王。

(次、機会があれば私も誘お...)



「デートついでに街案内です!」

「なるほど!」

賢いな!リノアは!俺はラヴィリニについて全く理解していないし、この世界の情勢についても理解していない。それにここに魔法等はあるのかだとか...。

とカラは思っているがリノアは。


街案内と言う体でのデート!!カラ様は街に夢中ですが、ここでカラ様の好きな物や趣味等を知れるとてもいい機会です!!

と、欲に走っていた。


「まずはここです!」

「ここは...」

リノアと話しながら扉を開くと

「ギルドというところです!」

と、リノアは腕を広げてドヤ顔で俺に見せつける。

異世界の定番キタァー!!と、俺はとてつもなく興奮する。当たり前だろうて。

「冒険者ギルド的な?」

「はい!そのような感じですね!」

俺の質問に超笑顔で頷くリノア。

「ほぇ〜」

「お!いらっしゃいリノアちゃん!」

周りを見回していると、カウンターにいる女性が話しかけてくる。

「あ!こんにちは!キュリアさん!」

「この人はキュリアさんと言って、ここのマスターをしています!」

男勝りだけど顔立ちが整ってて綺麗な女性だな...。でも俺のストライクゾーンには入らない...。見た感じ20代だからな...10代後半なら...っ!!

なんてキモい事を考えているとキュリアが話しだす。

「おや?友達を連れてきたのかい?」

「あ、はい!お友達です!」

「良いねぇ!皆!リノアちゃんが友達紹介してくれるってさ!!」

とキュリアが皆に言うと

「うぉぉおおおお!!!!!」

と野郎共の怒号が響き渡る。ごめん。普通に耳が潰れる。

「リノアちゃんが友達かぁ...!」

「初じゃないか?」

「姫様以外だと初だな...」

と皆口々にリノアの話題を出していると。

「あ、あの...た...ただのお友達紹介じゃなくて...え...えと...デ...デートです...」

リノアが照れながら否定した。その発言をした瞬間。皆静かになり目が点になった。

「え...?」

「い、今なんて...?」

「聞き間違いじゃねぇよな...?」

と口々に言う。でもごめん。俺も最初は目が点になったよ。

「な、成程...これは驚いたね...」

狼狽えながらキュリアはリノアに問う。

「リノアはその子が好きなのかい?」

「あ...えと...はい...その通りです...」

リノアの顔が更に赤くなる。いやこっちも恥ずかしいわ。

てか俺のこと好きだったのなんとなく分かってたけどそれここで言っていいの!?!?いくらなんでもフラグ回収早すぎだろ!?!

「ちなみにその子の名前は?」

「あ、えと...初めまして...。カラ・ノソイアと申します。お気軽にカラと呼んでください。」

「カラちゃんね...」

もしかしてリノアって独り占めしたいタイプだったりするのか?じゃなきゃここでそんな事言わない気がする...

「カラちゃん。リノアちゃんをよろしくお願いします。」

いやいやいやいやいや!!!まだ結婚しません?!なんで!?!

「いやまだ付き合ってすらないですよ...」

と苦笑いしながら話す。

「この子はいい子なんです」

良い子なのは知ってます。

「料理も作れます。お世話もしてくれます。結婚するなら───」

「このまま進むとこの後が気まずくなるからこの辺で終わりませんか。」

と全てをぶった切って強制的に終わらせることに成功した。



「ギルドの職の種類は色々あるよ!」

「代表的なので言うと剣士、魔術師とか...。ちょっとマイナーになるけど、テイマーとかモンクとかもある」

「ほう」

基本的に職の種類は変わらないって感じか...まぁそりゃあそうだよな。魔物や魔王とかがいる訳だし...。

「カラ様はもしギルドで職をつけるなら何にしますか...?」

「ん〜...そうだなぁ...」

前衛では戦いたくは無いな...。かと言って魔法適正あるかも分からないし...んー

「まぁ、カラに合ってれば何でもいいかな」

と笑顔で答える。

「そうなのですね...!!」

と目をキラキラ輝かせ、ギルドに書いてある全部の職をまじまじと見つめるリノア。

リノアはほんとうに純真無垢だな...。なんてそんなことを思っているとキュリアが喋り始めた。

「リノアちゃんがあんなにはしゃいでるの初めて見たよ」

「えっ?」

「いや、いつも純粋で誰に対しても笑顔で、優しくて...このギルド、いやこの国で天使的な存在なんだけどね...」

「でも今日はいつもの4倍は明るい。本当に君のこと好きなんだろうね...」

そうなのか...リノアはずっと変わらないんだな...

とずっとニコニコなリノアを見ながら思ってると

「カラ様!!こちらの職業はどうでしょうか!!」

どうやら俺に合いそうな職を探してくれていたようだ。


「わたくしはこちらがカラ様に似合うと思います!!」

「い、今はまだ子供だから就けないよ...?」

「いずれの時に、です!!」

とキラキラさせながら詰めてくる。

「わ、分かった...分かったから落ち着いて」

と落ち着かせる。

「はっ!!そ、そうですね...!落ち着かないと...」

と我に返ったリノアは再び顔を赤くする。

「っはは!リノアちゃんがこんなに何回も顔を赤くしてるの見たことないよ!」

キュリアさんは笑いながら言う。

「も、もう!!笑わないでください!!キュリアさん!!」

「いやぁごめんごめん!」

「本当に仲良しだね...あんたら」

みんなから愛されてるんだな...リノアは


ギルドを去った俺らは、次に魔法道具店へ向かう事となった。ちなみに俺はずっとワクワクしっぱなしだ。そりゃそうだ。ファンタジー世界を体験してみたかったしな...!某有名魔法映画だとかも好きだし。


そして魔法道具店のドアを開ける。

「うぃ〜」

「失礼しま〜す!」

「んぉ?」

今度はフレンドリーそうなおっちゃんだ。

「こんにちは!サウグさん!」

「これはこれはリノアじゃないか!」

と嬉しそうな顔をするサウグという人。

「おーい!!ルヴラー!」

ルヴラ...?誰だろうと思っていると、2階から声が聞こえて来る。

「待ってー!父さん!まだ実験が...」

「リノアが来たぞ〜!!」

「リノア!?!」

と2階からトタトタと軽いながらも重い足音が近づいてくる。

「はっ!!」

うぉ!?凄い美少年...ショタ??いやでも見方によっては女の子な気も...。


「リノア!!」

とルヴラと呼ばれる子は、リノアにジャンピングハグをする。

「あははっ!久しぶりです!ルヴラ!」

「ほんと、久しぶりだよー!リノア!」

「おっとこっちの子には、説明してなかったな...この子は俺の」

「...ん?」

と俺を見つめるルヴラという子。

「あ、どうも。初めまして」

俺は超軽ーく挨拶する。

「っ!!」

「ね、ねぇこの子...誰?」

と、何故かプルプル震えだす。

「え、っと...」

俺が答えられずにいるとリノアが

「この子はカラ様で...わたくしのお友達です!」

と気づかず満面の笑みで答える。

な、なんかマズイのでは...。と思ったと同時にルヴラは

「カラ...」

と俺の名前を呼ぶ。

「ね、ねぇ...」

「はい...なんでしょう...か...」

ずっとプルプル震えててちょっと怖い...。もしかしてリノアは渡さない的な感じになるのか...?何か怒られてしまったのだろうか...。


なんて思いながら、なんて言われるのだろうと身構えていると

「だ、抱きついてもいい?」

と衝撃的な発言を耳にする。そんな発言に俺は

「...はい?」

としか言葉が出なかった。


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