第4話 ノーハーレム・ノーライフ
「ね、ねぇ...リノア...」
「は、はい...なんでしょうか...カラ様...」
「なんかデジャブなんだけど...この感じ...」
「そ、そうですね...」
俺はルヴラに抱きつかれている。まるでクゥロに抱きつかれたみたいな...。正しくはデジャブか。ってか2日連続で初対面ながらに俺の事抱きつくって...。この世界、スキンシップ激しくない?まぁ一応、時を
数分前。
「ね、ねぇ...カラ...」
「はい...」
俺は震えているルヴラを見て、怒っているのではないかと思い、覚悟をする。が、ルヴラが放った言葉は予想の遥か斜め上だった。
「抱きついてもいい?」
「...はい?」
俺は一瞬思考が止まった。そりゃあそうだ怒っていたと思っていたからだ。予想外の言葉が出てきたからだ。数秒間思考は停止したが、その後状況を整理するため2階へ行きルヴラと話すことにした。
「実は僕、可愛い女の子見ると無性にハグしたくなるんだよ...」
と照れながら、そして自身の頭を触りながら言うルヴラ。いやまぁ女の子(推定だけど)の中にはそういう子もいることはなんとなく知っている。可愛い女の子みるとキスしたくなる人だっているらしいしな(アニメ限定情報)。
「わたくしは慣れましたが...確かに初対面の人はこういう反応しますよね...」
リノアは少し困惑しながら言う。
「リノアとルヴラは仲良しなのか?」
「僕たち幼馴染なんだよっ!」
そんな俺の質問に超笑顔で言うルヴラ。
「はい...!そうなんですよ!」
ほわっとした笑顔で言うリノア。
「お、驚きましたか!?」
何故か俺に驚いたかどうかを確認してくるリノア。目がキラキラしてる...
「お、驚いたよ...驚いた」
と機嫌を損ねないように答えると
「そうですか...!!」
とまたほわほわとした笑顔になるリノア。
「まぁとりあえず自己紹介だね!」
「僕の名前はルヴラ・ラシュミフィ!この店、シュスラ魔法道具店の発明担当をしている!年齢は9歳!好きな物は魔法道具!一応言っとくけど女の子だよ!よろしくね!」
ルヴラは元気に自己紹介をする。そして俺に片手を向ける。どうやら握手をしたいようだ。
やはり女の子か...!合ってた!いやぁ天真爛漫で良い子だ!!と感激を受けながら俺も自己紹介する。
「カラはカラ・ノソイア、ラヴィリニの外から来た。今はリノアと一緒の城で暮らしてるよ、年齢は...」
見た目年齢はリノア達と変わらないな...なら
「9歳...」
と年齢を言うと
「お、同い年ですね!!」
またもや目をキラキラさせるリノアに対して
「そうだね」
と笑顔で答える。ってかなんかメモってない?リノアさん。...まぁいいや。
「好きな物は...」
...この世界にラノベなんてあるわけないし、ましてやアニメなんてない...ん〜...好きな物...か...
「今のところ無いかな。よろしくね」
軽く自己紹介をし、ルヴラの手を握る。するとルヴラに引っ張られ
「うぉぁっ!?」
「よろしくねーーっ!!!」
とそのままの勢いで抱きつかれた。そうして現在に至る。
「...はははっ!!この国はハグするのが主流なの?」
笑いながら冗談っぽく聞いてみる。
「い、いえそういう訳では...」
「...どうしてそう思ったの?」
そうルヴラが聞いてきたので
「いやぁ、昨日クゥロにも抱きつかれてさ...」
と答えると
「えぇ!?クゥロ様が!?」
と、超驚くルヴラ。
「昨日は確かに抱きつかれていましたね...」
若干リノアの声のトーンが下がる。
「あの時はリノアのおかげか、なんとか終わったから良かったけどねっ」
とリノアの顔を見てウインクする。
「いっ...いえ...大丈...夫です...」
何故か顔を背けるリノア。
「...ほほーん」
何かを察したルヴラ。
「リーノア!」
「う、うんっ!何?ルヴラ」
と2人で内緒話をしている。
「リノアってカラの事好きなの?」
「えっ!?バ、バレてた!?」
「バレてるよ〜?というかさっきので分かった」
「えぇぇぇっ!!?!?」
2人が仲睦まじく話をしているので、邪魔しないようサウグさんがいる1階に戻り、一緒に店内を散策することに。
「ここが、薬系統のエリア。」
「ほぉ〜...」
「これが回復薬、回復薬の種類によって回復する量が違って」
「小さければ小さいほど回復量は高い。」
「けどその分値段は高い。」
指を差しながら一つ一つ丁寧に教えてくれるサウグさん。とてもいい人だ...。
「ほんとだこっち凄い高い...」
安いとの比べるとその差は6万。日本円で換算したら差は凄すぎるが、ただ、ここの基本的な物価が分からないから平均値段が分からないな...
「それ程、貴重な素材を使ってるってことだな。」
ただサウグさんの言い方的には、この回復薬はとてつもなく高いみたいだ。
「この魔法道具はなんですか?」
まるで瓶みたいだ...
「あぁ、これは属性瓶って言って、魔法が使えない人でも魔法と似た効果の瓶を使えるアイテムだよ。」
「ほー!」
属性瓶!!そんなものがあるのか
「例えばこれは
「なるほどなー...」
凄いな魔法道具...
「ルヴラはこれらを作ってるのか...」
ボソッと呟くとサウグさんは笑い。
「あぁ、そうだよ」
と誇らしげに言う。
「あの才能は母親譲りでね...」
しかしその後、表情が若干曇る。
「...もしかしてルヴラのお母さんって...」
勇気をだして聞いてみる。
「...あぁ、ルヴラの母...つまり俺の女房はなルヴラが今よりも小さい時に亡くなってしまった。」
「...やっぱりそうなんですね...」
「俺の女房、シュスラって言うんだがな、ルヴラと同じで魔法道具発明の天才だったんだ...」
シュスラ...って...
「その表情、気づいたみたいだな」
「もしかしてこの店を建てたのって...」
もしかしてと思い、質問するとサウグさんは頷き。
「あぁ、シュスラが建てた。」
と答える。
「あの立てかけてる写真にいる俺の隣の女性がシュスラだ。」
え、超絶美人じゃねぇか...そりゃあルヴラも可愛い訳だ...。
「まぁ、今は男手一つでルヴラを育ててる。ただシュスラと一緒で、魔法道具開発にドハマリしてて、家から出てないんだがな!っハハ!でも俺は心配だ...」
え?心配...?
その数分前、ルヴラはカラを喜ばせる為にリノアを着せ替え人形にし、そして完成していた。
「完璧!!そのまま動かないでね!」
「は、はい...!!」
そう言われ肩が上がるリノア。
「そのまま待っててね!」
カラ呼んでこよっと〜♪どんな顔するかなぁ〜!
ルンルンな気分で2階から降り、カラを呼びに行くルヴラ。
「ねぇ!カ...」
階段を降り、カラを呼ぼうと顔を出した瞬間。目に映ったのは、父さんと真面目な話をしているカラだった。
「心配することは無いですよ!ルヴラはとっても良い子です!会って数分でわかるくらいには」
「っ!!」
(えっ?今...父さんとカラが僕の話を...!?な、なんで!?)
と咄嗟に壁に隠れてしまうルヴラ。
「い、いや俺が心配してるのは友達作りの方なんだ」
「友達作りが...?」
なんでだ?あんなに元気で可愛いから友達なんてすぐに作れるだろうに...なんて思ってるとサウグさんはルヴラの話を始める。
「...ルヴラは過去に嫌な思い出があってな...自身の作っていた魔法道具を、同い年の子に壊されたことがあったんだ...」
「そのせいで外に出るのが億劫になり友達作りに積極的じゃなくなってな...」
サウグさんは悲しい表情で昔のことを話す。
(...なんでその話をするの...父さん...。あの事を思い出しただけでも...)
どれだけこの国がこの世界で平和だとしても、やはり人が大勢いる以上、そういう事は起きてしまうのか...なら...
「なら私が...カラがルヴラを守ります。」
胸に手を置き、覚悟が決まった表情でそう告げるカラ。
(え...っ?)
「カラ...ちゃんが?」
「ルヴラの友達になります...。」
「で、でも君はまだ...」
サウグはカラの年を考え、そう言う。
「はい...まだカラもルヴラ達と同じ9歳です。ですが、ルヴラを守る覚悟は出来てます...」
しかし、カラは真っ直ぐな瞳でサウグを見つめる。
「覚悟...」
サウグはカラの覚悟に圧倒される。
「俺は、過去に仲が良かった子が虐められていて...。その子を救えなかった事があったんです。その時、後悔と喪失感で胸と頭がいっぱいになって、何度も自分を責めていたんです。」
「あぁ、あの時ああしていれば...あの時に声をかけていたら...あの時に一緒にいてあげたら...と」
そんなカラの話を聞き、悲しい表情をするサウグとルヴラ。
「なので、カラは救いを求めてる人を蔑ろにしたくはないんです。」
(カラ...)
ルヴラはカラの話を聞き、ほんの少し涙ぐむ。
「カラは決して、過去の償いの為に言っている訳ではないんです。ただ、カラはあの時のように後悔をしたくない...。そう思ってるんです。」
「ですので、ルヴラの事は必ず、命に変えても守ることを約束します。」
と言われた瞬間。ルヴラの心臓が強くなる。
(...っ!!な、何この胸の鼓動...っ!!こんなの初めて...っ!!静かにして...!!)
ルヴラは
その顔は本当に覚悟が出来た人の顔だ...そして嘘偽りのない眼...。カラちゃん...君は何て良い子なんだ...そしてなんて大人な子なんだ...。俺よりも...断然...っ
サウグが自責し、そしてカラに感化され覚悟を決める。
「...カラちゃん...。君ならルヴラを完全に任せる事が出来る...是非私からも、ルヴラを幸せにしてやってくれないか...」
「はい...ルヴラの事は絶対に守ります。そして幸せにしてみます」
ルヴラの心臓がまた強くなる。
(ダメっ...!!治まって...っ!!)
「ありがとう...カラちゃん...」
「はぁ...はぁ...っ」
と、壁伝いに階段を登りながらゆっくりと2階に戻るルヴラ。
(だ、ダメ...ルヴラ...あの子はリノアの好きな子なんだから...僕が...好きになっ...た...ら...)
その瞬間ルヴラは違和感に気づく。
(あ...れ?好き...?)
───ルヴラは絶対に守ります...そして幸せにしてみます...。
(...ヤ、ヤバい...僕...カラの事を...好きになっちゃった...)
自分の気持ちに気づいた瞬間、顔が超絶熱くなる。初めての感情だ...。そして2階に着き、すぐにリノアに話す。
「ね、ねぇ...リノア...」
「...ん?どうしたの?ルヴラ?顔めっちゃ赤いよ?」
「ご、ごめん...僕...」
とへなへなと腰を下ろすルヴラ。
「...ど、どうしたの?」
心配するリノア。
「僕...カラの事...好きになっちゃった...」
真っ赤な顔で話すルヴラ。
「えっ!?嘘!?なんで!?」
「...カッコよすぎて...」
分かる...
と超絶頷くリノア。
「...僕の過去を父さんと話していたの」
「あ...」
そうだったんだ...
「そこで必ず守るし幸せにするって言われて...好きになっちゃった...」
カッコよすぎか...!!!
と顔がクッ!ってなるリノア。
「...じゃあわたくし達は...ライバルになるの...?」
ルヴラにそう言うとルヴラは
「ぼ、僕...リノアとライバルやだぁ...」
と泣いてしまう。
「わたくしも嫌だよぉ〜...」
リノアも泣いてしまう。
一方、2人が泣き始めたのが聞こえ、2階へと向かうカラとサウグだが、喧嘩や嫌なことがあった訳では無かったため、2人を抱きしめながら頭を撫でて慰めた。
数分後、2人とも落ち着いて話せるようになった。
「何があったの?2人とも」
「え...っと...」
「ルヴラ...!頑張って!」
とリノアがルヴラに応援している。何故だ?しかもルヴラは顔が赤い...まぁいいか
「あっ!...あのね...」
ルヴラが頑張って話を切り出そうとしている。
「どうしたの?」
と優しく微笑んで話を聞く。
(ヤバ...カラの目の前にすると鼓動が超早くなる...顔も熱い...で、でも...勇気を出さなきゃ...っ!)
「え、えとね...。カ、カラ...」
「ゆっくりで良いよ...聞いてあげる」
「ぼ、僕...ね...」
緊張しながらも話を続けるルヴラ。
(ぼ、僕は...言うんだ...今...!!)
「うん」
「カラのこと...好きに...なっ...ちゃっ...た...みたい...」
「うん...ん?」
「ん?」
ん?聞き間違いでは無いはずだ。ルヴラの口から俺の事を好きだと言った気がする。ただ、サウグさんも理解できてないみたいだが...
「ル、ルヴラ...もう一度聞いていいか?」
とサウグさんが聞く。それに頷きルヴラも喋る。
「ぼ、僕...カラのことが好き...」
うん。2回目。どうやらルヴラは俺のことが好きなったらしい。
「...もう一度聞いてい」
「3回目はやめたげて。ルヴラ恥ずかしすぎて死んじゃうよ。」
とサウグさんにツッコむ。
「...あまりに急展開過ぎて脳の処理が追いつかない...」
頭を抱え込む俺。
そりゃそうだ、今日1日だけで2人に告白されてるからな...。俺まだ異世界来て2日ですけど...。確かにハーレムに憧れはあったけど、早すぎるって...。しかもロリと付き合うのなんか犯罪臭あって気が引けるって。
「で、でもカラ、言ってたよ...ルヴラを...僕を一生幸せにする...って...」
顔が赤いルヴラはニヤニヤしながら思い切り嘘を言う。
「一生は言ってないよ!?勝手に付け加えないで!?」
それじゃまるで結婚するみたいじゃないか!?
「ルヴラも結婚か...まぁカラちゃんになら許せる」
勝手に飛躍したのにも関わらず許可するサウグさん。
あれ!?!なんで!?
「いやいやいや勝手に話を進めないで!?」
「まずは友達からでしょ!?」
と言うが2人は上の空。リノアに助けを求めようと
「ねぇ!リノアは良いの...!?」
と聞く。
「ルヴラとカラ様が結婚ですか?」
「うん!"もし"したらの話だけどね!!」
もしを強調するんだ...そうすることで...!
「困ります...ね...」
「だよね!?」
よし...!リノアを味方につければ2vs2で...!なんて思ってると、リノアから衝撃のことを告げられる。
「あ!!重婚をすれば良いじゃないですか!!」
「...ゑ?」
モアイのような顔になってしまった。いやいやいや...この世界、重婚許可されてるの?
「そ、それだぁ!!」
ルヴラは今、リノアの事を天才か!?と思っておるのであろう。
「なるほど...重婚か」
それ、ありだなぁって確実に思ってるな、サウグさん。
「ん?その顔、嘘みたいだって顔だな」
どうやらサウグさんはほんの少しだけ上の空から戻ってきたみたいだ。
「え、いやまぁ...」
嘘なら嘘であって欲しいよ。ってか一応うちの世界でもあるけど...。日本には無いんだよな...。
「実はな...国、立場...。まぁ分かりやすく言うと位だな。その2つが違えば重婚は許可されている。」
「...はぁ」
「今カラちゃんが、どこの国どこの位に居るかは分からんが、まぁおそらく重婚は出来るぞ」
「ただまぁ、平民の重婚はほぼほぼ無いがな。重婚をするのは貴族、王族がほとんどだ」
うっそでしょこの世界。倫理観やべぇなって思ったけど、ここ日本じゃないからなぁ...ってか待てさっきからスルーしてたが...
「もしかしてこの世界、同性婚も許可されてるの!?」
「え?はい...そうですよ?」
え、何この当たり前ですけどなにか?的な奴。え、もしかして街にたまに歩いてる男同士で買い物だったり、女性同士で遊んだりしてるのって...
「まぁもちろん、中にはただの友達関係もいるが、大体3〜4割は結婚か付き合ってるな」
す、すごい世界...。同性婚と重婚OKとか...り、理想で平和な世界だなぁ...
「と、とりあえず...僕はず...ずっとカラと一緒にいる...から...」
と照れながら袖を
「わ、わたくしも...カラ様のお傍にずっとおりますよ...?」
とリノアも照れながら腕に抱きつく。
「モテモテ、だなカラちゃん」
サウグさんに弄られる。
「...マジですかぁ」
とため息混じりに言う。
正直、俺はこの先が不安だ...俺はこの世界で一体どうなるんだ...?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます