第11話 可能性

某所...。

「ブシュグレッドが死んだ」

玉座に座っている人はそう言葉を放った。

「...そうですか」

聞いていた皆、素っ気ない態度をとる。魔族だからか仲間の死に興味が無い。

「どうやら勇者と出会ったらしい」

そう続いて玉座に座っている者は言う。

「今回の勇者、まだ子供だよね?」

「まだ9歳らしいぞ」

「相当強いな?」

「下手すれば前の勇者より...」

「...更には前と違い仲間がいるそうだ」

次々に情報を提示する。

「仲間...ですか?」

柱にもたれかかっている人は玉座に座っている人に問いかける。

「あぁ、皆、歳が近いがな」

「なるほど」

「能力としてはどんなものなんです?」

「1人は魔法道具の開発に長けている」

「...ならそいつは全く驚異では無いな」

「1人は氷魔法を使う」

「氷魔法...」

「中々にセンスがあるな...」

「氷魔法は魔法を使うものの中では希少な部類だしな」

口々に話し出す。

「...そしてもう1人は」

そう喋り出すと、皆玉座の方へ見る。

「光魔法だ」

「なっ!?」

「光魔法...だと?」

「新たに生まれたというのか...」

「そやつが勇者か...」

そう1人が言うと。

「いや...勇者は別にいる」

「えっ!?」

一同は驚愕する。

「勇者が光魔法ではない...?」

「更に勇者は魔法適正が皆無だ。」

「なっ!?」

また一同は驚愕する。

「ま、魔法適正が皆無...?」

「...ブシュグレッドはどう死んだのですか?」

「どうやら特殊能力を持っているようだ」

「特殊能力...?」

「未だその能力は分からないがな...」

「...得体がしれないわね...その勇者」

「黙って聞いてれば...勇者にビビりすぎじゃな〜い?」

「...意味不明すぎるでしょ、魔法なしで私ら魔族を倒すだなんて...本来ありえない事なのよ」

「だからこそだよ〜...物理攻撃効かないのなら〜、魔族で最硬度の僕がソイツを倒せば良い話じゃ〜ん」

「...貴方ねぇ、そういう話じゃ」

説教しようとすると

「良い」

玉座の者が口を挟み、その者の行動を許す。

「え?」

「良いのですか...魔王様」

「あぁ、クブリアの好きにしろ」

と魔王と呼ばれる者は言う。

「...死んでも知らないよ」

「っはは!僕がそう簡単に死ぬわけないじゃ〜ん?」

クブリアはニヤける。


リュグシーラにて。

「リュグラ王が起きたって!!カラ!!」

「マジか!!」

4日ほど寝ていたリュグラ王がついに目覚めた為、急いでリュグラ王の部屋に向かう。

「リュグラ!!」

「...あぁ、おはようカラ、ルヴラ」

優しく微笑むリュグラ。

「良かった...」

「あの魔物は討伐したのか?」

リュグラはカラに問いかける。

「そう。討伐した。カラがね」

「カラは覚えてないですけどね...」

カラは自身の後頭部を摩る。そしてあの後何があったのかを説明する。

「そうだったのか...」

「カラも説明された時、嘘だと思ってたよ...」

どうやら俺の能力は一定ライン越えると意識が無くなるらしい。

「す、すみません遅れました!!」

遅れてやってきたのはリノアだ。

「色々自分の事をやっていたら遅れてしまいました...」

「別にいいんだよ」

カラそう言い、リノアの頭を撫でる。

「カラ様...」

「それで本題に戻ろうか」

クゥロが切り替える。


「問題はここから」

「...そうだねー」

「魔物が今後、カラ達を襲ってくるって事だよね?」

「うん。そういう事」

「狙われたってことですか?」

「うん。上級魔族は、同じ魔族ならその存在を把握出来る。ブシュグレッドが死んだことももう伝わってる。」

クゥロはそう説明する。

「そうなんだ...」

「初めて知ったー!」

「そんな特性があるのですね...」

「そして1番狙われるのはカラ、確定で貴女だと思う」

「...まぁカラが倒したのなら、カラが狙われるよね...」

ため息混じりにそう言うと

「大丈夫です!!わたくし達も強くなってカラ様守れるように頑張ります!!」

「そうだよ!!カラ!!」

「うん。私達も全力でカラを守る。」

3人はそう言ってくれた。

「ならカラも全力でリノアたちを守るよ」

と優しく微笑むと

「...ズルいなぁ」

「ホントに!!」

「もう...カラ様は...」

3人は顔を赤くする。

「仲良しで良い事だね」

リュグラは笑顔になる。

「兄様!!」

突然ドアが開く。そこから出てきたのはミューラ姫だ

「良かった...兄様まで居なくなったら...」

「心配をかけてすまない...ミューラ」

「良かったぁ...」

そう言いながら泣き崩れるミューラ姫。それを見たカラ達は部屋から出る。

「とりあえず何かする?」


3人に問いかけると、リノアが

「ならシフィちゃんのところに行きたいです!」

とちょっと大きな声で言う。

「確かに!!あの後どうなったか気になる!!」

「シフィ?」

「そういえばクゥロは知らないんだったね」

クゥロは何も知らなかったと思い出し、クゥロにシフィについて全て話す。

「へぇ、そんな子がいるんだね」

眉が上がる。

「どうしますか?クゥロ様」

「会いに行くなら一緒に行く??」

「カラ達はどっちでもいいよ?」

そう言うと

「...今日は何も無いし、会いに行こうかな」

と口角がほんのり上がる。

「じゃあ行こー!」

ルヴラは興奮気味に言う。

「全員で行くのは初めてですよね!」

リノアは満面の笑みだ

「そうだね」

俺も笑顔で答える。

「楽しみだー!!」

「あまり大声で喋らないでルヴラ。ヤバい人だと思われる。」

ルヴラはクゥロに怒られる。

「あ、ご、ごめん...」

反省するルヴラ。

「でも楽しみなんだもん!!シフィに会えるの!」

「確かにルヴラ、シフィの事大好きだもんね〜...」

「そうなの?あ...いや、そっか...」

すぐに察するリノア。

「そういえば、可愛い子にすぐ抱きつくというのを忘れてた」

そうクゥロが言う。

「えへへ...」

「ってかさっきの話に戻るけど、おそらくリノアも狙われるよね?」

シフィの店に向かいながらも、先程の魔物に狙われる話に戻す。

「うん。恐らくね」

「や、やっぱりわたくしもですか...」

冷や汗をかくリノア。

「リノアも頑張らないとだね」

「は、はい!!わたくしも強くなります!!」


そうして駄弁っていると、いつの間にか店に着いていた。

「着いた着いた!」

「ここにシフィがいるんだね」

「そうだよ!」

「シフィー!」

ルヴラが呼ぶが返事がない。と言うか人の気配がしない。

「...何かあったのでしょうか?」

と心配そうな声を出すリノア。

「とりあえず奥に入ってみよ」

そう俺は提案する。

「うん...」

店の奥へと進んでいく。すると

「...シフィ...ここにいたんだ」

うずくまって寝ているシフィを見つけた。シフィに合わせる為、体勢を低くすると、目元が赤くなっているのが見える。

「...泣いた跡?」

ボソッと呟く。

「えっ?」

皆起こさないように極力静かに驚く。

「そういえば...ウィグノさんが居ない」

周りを見渡していると、シフィがゆっくりと目を開ける。

「シフィ...!」

「起きた!」

「シフィちゃん、どうしたの?」

起きて、ずっと目を疑うような顔をしていたが、すぐに理解し今度は泣き始める。

「シフィちゃん!?」

「急に泣き始めた!?」

「な、何があったの...?」


数十分後、シフィは泣きやみ、いつものようにホログラムに文字を表記し始める。

「一体どうしたの?」

「ゆっくりで良いよ。シフィちゃん...」

コクッと小さく頷くと、ホログラムの文字が動き出す。

〝実はお母さんずっと起きてないの〟

「えっ...」

「嘘でしょ」

「どうして...?」

昏睡状態...?

〝分からない〟

「...あの事件から目を覚まさないのなら、おそらく、上級魔族が発する"魔瘴ましょう"によって気を失っているんだと思う」

クゥロはそう推測する。

魔瘴ましょう...?」

魔瘴ましょうってなんだ...?

魔瘴ましょうって言うのは、さっきも言ったけど上級魔族が発する瘴気。魔法に触れたことがなく、鍛えたことがない一般人なら、瘴気に当てられて気絶することが多い。運が悪ければそのまま目が覚めない可能性もある」

とクゥロは説明する。

〝えっ〟

「そんなのがあるんだ...」

「現にこの国でも何人か気絶してる」

「初めて知った」

魔瘴ましょう...上級魔族はそんなのもまとってるのか。厄介だな...

〝お母さんは目を覚ませるの?〟

「...それは分からない」

「嘘だろ...」

〝そんな〟

「一生目が覚めない可能性がある...か...」

「だけど助かる可能性もある」

クゥロは、重い空気を晴らすかのように、真剣な顔で言う。

「えっ?」

〝本当ですか?〟

「伝説で聞いたことがある」

「伝説?」

〝えっ〟

「最上級回復魔法、ファイキュリアと言う回復魔法がどんな病気、異常状態でも回復すると言われているって」

「最上級回復魔法...」

「ただ、そんな伝説的な魔法、使われた記録もなく、その魔法を見たという人もいない」

「...伝説だからね...あるかは分からないよね...」

ルヴラはそう呟く。

「空想の魔法なのか、実在する魔法なのかは分からない。けど、この可能性に賭けるのなら私たちと共に行こう。お母さんを助けるために」

とクゥロはシフィの顔を見て言う。

〝で、でも〟

とシフィが遠慮しようとすると

「...僕はシフィちゃんと一緒に行けるの嬉しいな!!それに1人じゃ寂しいし!」

ルヴラは、シフィを元気づける為に満面の笑みで言う。

「わたくしもシフィちゃんと一緒は嬉しい!!お母さんを助けるのなら全力で手伝うよ!!」

リノアも意味を察し、満面の笑みで言う。

「もちろん私も手伝う。当たり前」

クゥロは相変わらず表情は変わらない。だけど言葉が優しい。

〝カラさんは...〟

シフィが俺に聞く。俺は...

「行こう。可能性に賭けよう。カラが絶対シフィも守るから」

優しく微笑む。

〝迷惑、じゃないですか?〟

シフィは自分が迷惑かけてしまうのではないかと心配する。

「...」

俺たちは驚いた顔で目を合わせる。

「ふふっ...」

リノアは笑い出す

〝えっ?〟

「迷惑だなんて思わないよ!!」

ルヴラは満面の笑みで言う。

〝ほ、ホントですか?〟

「当たり前でしょ」

クゥロは優しい顔でそう言う。

〝で、でも〟

「カラ達はシフィと行きたいから提案してるんだ...だから一緒に行こう?」

と優しく話しかける。

〝足引っ張るかもしれないですけど、良いですか?〟

「うん。いいよ」

「僕たちが逆にシフィちゃんの足引っ張っちゃうかもしれないけどね...」

「それは言えてるかもね」

「しっかりしてますもんね!シフィちゃん!」

〝泣き虫ですけど、良いんですか?〟

そう言いながらシフィは泣きそうな顔になる。

「泣き虫でも良いよ」

「わたくし達まだ子供ですし!!」

「泣きたい時は僕を頼っていいんだよ!」

「そういう時は私達を頼ればいい」

と言うと、シフィは泣き崩れた。俺たちは泣き崩れたシフィの頭を優しく撫でた。


そうして無事シフィも泣きやみ。覚悟が決まった

〝わ、分かりました。シフィ、お母さん助けるために頑張ります!〟

「よろしく!!シフィちゃん!!」

「一緒に頑張ろうね!シフィちゃん!」

「これからはもっと気を引き締めないとね」

「よろしく。シフィ」

優しく頭を撫でる。

〝はい!よろしくお願いいたします!〟



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