第16話 真か噂か

「そのアヴァロンって、どのくらい強いんだ?」

カラはクゥロに質問する。

人類最強の剣士と言われてもどれほどの強さか分からない...。剣士の中で強いのか、それとも異次元なまでに強いのか...。

「アヴァロンの強さは、噂でしか聞いたことがないけれど、どの話も化け物級」

「ば、化け物級...」

クゥロが言った言葉を聞き、どんな話かワクワクするルヴラ。

「1つ目の噂、魔法を剣で弾き返した」

「えっ?」

待て、1つ目の時点でおかしい。まず魔法って物理でどうにかなるものなのか?どうにかならないから魔法じゃないのか?

「そ、その噂本当なんですか...?」

「本当だったらヤバいよね...」

「いや、本当かどうか分からないよ。噂なんだから」

「ま、まぁたしかにそうですけど...」

正論を言われ納得するリノア。

「2つ目の噂、剣を振っただけで海を割った」

1つ目がおかしかったから、2つ目もやばいだろうなと思ったら本当にヤバイし意味がわからんな。

「人って剣を振るだけで海割れるんですか...」

皆、アホすぎる噂にドン引きする。

「人じゃないでしょ...」

「理解が出来ない...」

「まだ噂あるけど...」

クゥロはそういうが、

「いや、もういいです...」

と、皆2つだけの噂でおなかいっぱいになり、各々自分の部屋に戻っていく。

「3つ目の噂聞いて欲しかったんだけど、まぁいいや」

クゥロは気になるようなことを言う。皆は帰ってしまったが、俺はその3つ目の噂が気になり

「3つ目の噂ってどんなのなの?」

と、クゥロに3つ目の噂について聞く。

「...分かった、カラには話すね」

ほんのりワクワクしてるように見える。それほどに3つ目の噂はヤバいのだろうか。

「3つ目の噂...それはね...」

俺はクゥロから3つ目の噂を聞いた。その内容は衝撃的で、本当にその剣士は人間なのかと更に疑った。

「...それ、噂...なんだよね?」

半信半疑でクゥロに質問する。

「あくまでも噂だね」

「そ、そうだよね...」

「だけど、目撃者が複数人いるから噂と言うより、事実に近いけど」

またもや衝撃的なことを言われるが、もう驚くことも無くなった。というかむしろだんだん会いたくなってきた。

「なるほどね...。」

「どう?カラもアヴァロンに会いたくなってきた?」

「んー...クゥロがこんなに興奮してるのが、珍しくてね。それだけ言うのなら会ってみたいよ」

事実、クゥロがこんなに興奮してるのを見た事がない。目がキラキラしている...様な気がする。

「良かった...。特にアヴァロンに会わせたいのはカラだから」

「そうなの?そんな風に説得しなくても、カラはアヴァロンに会いに行くのに」

「え?あ、そうなの?」

クゥロはカラの発言に驚く。

「だって、クゥロ達の願いでしょ?なら断る理由ないし...」

そんな事を言うと、クゥロはほんのり顔を赤くする。

「そんな恥ずかしいことよく真顔で言えるね...」

「えっ?そんな恥ずかしい事かなぁ...カラはただ、本当の事を素直に言っただけなのに...」

そう言うと、クゥロはジト目で

「余計恥ずかしいよ...」

と俯きながら呟く。


数日後。

「行く準備出来てる?」

「はい!!」

「僕もOKだよー!」

〝忘れ物は無いです...!!〟

「なら後はクゥロを待つだけか」

俺たちは、外で駄弁りながら城で王と話しているクゥロを待っている。

「王族だから、リュグラ王との会話も必要だもんね〜」

「そうですね...。なのでしばし待たなければ!」

〝王族って大変だね〟

「そうだね...色々社交辞令的なのがあるから」

そう言うと3人ともわかってないような顔をする。流石に社交辞令は分からなかったかなぁ...。

「ごめん。やっぱなんでもない」

そんな風に時間を潰していると、クゥロが城から出てきた。

「お、来た」

「クゥロ様ー!!」

「お待たせみんな。ごめんね」

「いいんだよぅ!謝らなくて。王族なんだから仕方ない!」

〝そうですよクゥロさん!!仕方ないことなのです!〟

クゥロは皆にそう言われ、一瞬否定しようとするが、受け入れる。

「...いやそうだね。じゃあ行こう」

やっぱりどことなく表情が豊かになった様な気がする。ミューラとちゃんと話し合えたからだろうか。

「次の国、ルズシュバラへしゅっぱーつ!!」

ルヴラは大声で言う。そして俺たちはルズシュバラへと歩みを進める。

「アヴァロン...どんな人なんだろ...楽しみだなぁ...そう思わない?最強だよ最強!」

「まぁ確かに会ってみたいけども」

ルヴラが興奮気味でリノアに話しかける。

〝確かに、この目で見てみたいです...〟

「盛られまくった嘘なのか、人の領域を超えたバケモノなのか。アヴァロンに会ったらそれがわかるからね」

「ついでにカラとどっちが強いか見てみたい!」

ルヴラはそんな事を言う。

「いやいやカラはまだ9歳だし、この能力扱いきれてないし、どれだけの威力を持ってるか分からないのに、そんな状態で戦ったらどうなるか分かんないよ。」

と全力否定するが、ルヴラは止まらない。

「物理最強vs特殊最強...どっちが強いんだろ〜!!」

「...これは止まらないね」

「ずっと興奮してますね...」

〝幸せそうだから、このままにしてあげましょう...〟

「そうだね...」

話が終わるかと思いきやリノアが

「でもたしかに気になりますね」

と言い出す。

「でしょ!?」

ルヴラが興奮しながら超即反応する。

「うぉおっ...!?」

「もしアヴァロンが噂通りなら、もしかしたらカラの特殊攻撃も防げるかもしれないよ?」

〝確かに気になります!〟

今度はシフィが興味津々になり、俺とクゥロ以外最強はどっちかの議論に参加してしまった。するとクゥロが

「ルズシュバラに着いたら、カラにはアヴァロンに会わせるから、もしかしたら二人の戦闘が見れるかもよ」

と3人の議論を更に加速させる発言をする。

「お、おい...クゥロ...」

クゥロの発言に焦るとクゥロは

「こういう時は楽しみの方が良いでしょ?」

そんなことを言い、俺は

「...たしかに」

と納得してしまった。

「マジでぇ!?」

「それは超気になります!!」

〝もしその戦いがあるならシフィ絶対見たい!!〟

3人の期待を裏切る訳には行かないなぁ...そう思い、俺は

「...分かった。出来るかどうか聞いてみるよ」

苦笑いをしながらそんなことを言うと3人は

「やったー!!」

「ルズシュバラに行くのが楽しみになってきました!!」

〝着いた時の目的ができて良かったです!!〟

と超嬉しそうに言う。

「嬉しいのなら良かった。」

そうして3人の会話は更に盛り上がった。


「そういえば、次の国までどれだけかかるの?」

俺はクゥロにそう聞く。

「んー...大体1週間くらいかなぁ」

予想以上の長さに驚く俺含むクゥロ以外の人。

「...マジ?」

「そ、そんなに遠いのですか...?」

「うん。ここからルズシュバラは結構遠いよ」

「まぁ、皆がいるから一瞬だよ!」

とルヴラはどんよりする前に吹き飛ばす。

〝そ、そうですよ...!!シフィ初めての旅ですけど、皆さんといれるだけで楽しいです!!〟

シフィは満面の笑みで言う。

確かにシフィは初めての旅なんだ、どんよりした気分で旅しちゃダメだな。

「ごめんね...シフィ」

「ありがとう、ルヴラ」

俺はルヴラに感謝を述べるが

「さぁ!まだ旅は始まったばかり!!行きましょー!!」

とルヴラは照れ隠しかテンションを上げ、クゥロの前へ行く。

「...ルヴラ。前に行くのはいいけど貴女、道知らないでしょ」

ジト目でクゥロは言う。

「え!?あ、あはは確かにー...!!」

「確かにカラ様に褒められたり、感謝されたら照れますけど、照れ隠しにしては下手すぎない...?」

ルヴラの照れ隠しの下手さに呆れるリノア。

「うぇ!?え...あー...うぅ...」

何も言えなくなってしまった。

〝ルヴラさん可愛いです!〟

照れ隠しが下手すぎて笑顔になるシフィ。

「う、うるさいなぁ!」

「っはは!」

皆のルヴラ弄りに思わず笑ってしまう。まさかルヴラがいじられキャラになるとは思わなかった。


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