第20話 怠惰で面倒くさがりでマイペース

「と言う事は、貴女がアヴァロンなのですか...?」

リノアは半信半疑で聞くと、アヴァロンは満面の笑みで

「そうじゃと言っとるじゃろう?」

と答える。しかしカラ達は信じられないといった様子。

「君がアヴァロンならどうして隠してたの...?」

ルヴラはそう質問をする。するとアヴァロンは椅子に座り、深刻な表情になる。そんな様子を見、部屋に緊張が走る。

「...それはのぅ」

アヴァロンは先程とは全く違うトーンで喋り始める。そんな様子に見かねた、隣の鎧の男性が

「そんな重い話じゃないでしょう...師匠...。」

とツッコミを入れる。

「...えっ?」

困惑するカラ達。

「良いじゃろう!?妾だって此奴こやつらと仲良くなりたいんじゃ!!」

謎の駄々をこねるアヴァロン。

「師匠はただ、人類最強の剣士と言う重荷を背負いたくない上に、面倒臭いのが嫌いで、サボり魔なんですよ...」

鎧の人は若干困りながらアヴァロンの事について喋る。そんなアヴァロンの性格にカラ達は再び困惑する。

「嘘でしょ...」

そんなアヴァロンの事実に絶句するクゥロ。

「人類最強なこと以外何も無いじゃん!!」

そんな真っ直ぐ言わないであげてルヴラ...。ほらアヴァロンさん部屋の隅で落ち込んじゃってる。

「わ、わたくしは男性じゃなくて安心しました...」

若干困惑しつつも、アヴァロンが女性ということに安堵するリノア。

〝ダメダメ人間なのですね...〟

憐れむ目でアヴァロンを見つめるシフィ。一同、様々な反応をする。肝心なカラはと言うと

「怠惰な人だなぁ...」

と若干共感する。

「いいんじゃ。妾、怠惰で面倒臭がりでマイペースでいいんじゃ。」

拗ね始めるアヴァロン。するとカラは国に入る前のことを思い出す。

「ということは、あの釣りってサボってたってこと...?」

カラの発言に全身がビクッとなり、急に汗が大量に出、目が泳ぎ始めるアヴァロン。

「...えー...っとな...それはー...。」

すると、鎧の人が笑顔でアヴァロンに顔を近づけ

「師匠。釣り、してたんですか?」

ここからでも圧を感じる...。怒りの圧が...。

「シ、シテタカノー...妾オバアチャンダカラワカランノー...」

アヴァロンは口をとんがらせ、目を逸らしまくる。

「俺、師匠に外に用事があるからって、そのついでに取って欲しい素材も頼みましたよね?そういえば師匠、何も手に持ってないですね?」

鎧の人は更に圧を出す。そんな様子の2人にシフィが

〝これじゃどっちが師匠か分かんないよ...〟

と言う。その発言にカラ達は超頷く。

「あー!!そうじゃよ!妾は釣りでサボっとった!」

あ、開き直った。とカラ達は心の中で言う。

「欲しいものがあるんなら自分で取ってこれば良いじゃろう!!わざわざ妾に頼まず!!お主は妾の弟子じゃろう!?」

開き直ると同時に、アヴァロンは圧返しをする。

「確かに俺は弟子ですけど...本来師匠に頼むのはおかしいですけど...。」

とてつもない剣幕のアヴァロンに少し押され始める鎧の人。ちなみにカラ達は心の中で鎧の人を応援している。

「あ、そういえば師匠。大事な用って言って外行きましたけど、大事な用終わりましたか?」

別の話を切り出す鎧の人。するとアヴァロンはキョトンとした顔で

「大事な用...?」

と呟く。数秒後、アヴァロンは顔が青くなり、また汗が身体中から吹き出し始める。

「まずい!!!」

アヴァロンは急いで扉を開け、ひとっ飛びで国の外へ出る。

「はっや...」

アヴァロンの移動の速さに驚くクゥロ。

「僕達も追いかけた方がいいかな...?」

ルヴラがそう聞くと、鎧の人は

「師匠がなんの用か知りませんが、とりあえず着いて行ってもいいと思いますよ!」

と言い、外へ出る。

「どうしましょう...」

リノアがそう聞くと、クゥロが

「いや、アヴァロンに会うためにここに来たんだから追いかけた方がいいでしょ」

と言い、クゥロも外に出る。

「あ!ちょ、ちょっと待ってよ!クゥロ!!」

俺達は急いでクゥロの後を追う。


「あの、鎧の人...。アヴァロンはどこへ向かったのですか?」

クゥロは質問すると、鎧の人は

「恐らく、もうそろそろ目覚めると言われる、厄災の封印へ向かっているんだと思います。」

と、アヴァロンの行く場所を推測し

「あと、一応俺の名前はアーサーです...。」

更に名乗ってくれた。

アーサーって言うと...英雄王の名前だ...。俺の世界じゃ知らない人はいないレベルだけど...。と思い、ふとこんなことを聞いてみる。

「もしかして、その背中に背負っているのって、エクスカリバーだったりします?」

「...ん?あ、はい。そうですね...エクスカリバーですけど...」

マジかよ...。じゃあこの世界、パラレルワールドだったりするのか...?いやでもそれだとリュグシーラの技術は一体...。たまたま同じ名前の可能性もあるしな...。

「何故、俺の名前と剣の名前を知っているのですか?」

当たり前の質問だ。普通知らないもんな...。なんと答えれば...。カラが返答に困っていると、クゥロが正直に

「この子は転生者。異世界から転生してきたの」

すると、アーサーは驚愕し

「て、転生者!?本当に存在するのですか!」

と、まるで伝説の生き物を見るかのような表情でカラを見つめる。

「私達も最初は少しだけ疑ってたけど、この子には魔法ではない別の特殊能力があるから、そこで本当に転生者なんだと理解したの」

クゥロはカラのことを喋る。

「まぁ、本人も理解していないんだけどね」

「あ、そうなんですね...」

「お恥ずかしい限りです...。」

少し恥ずかしがるカラ。そんなカラに対しアーサーは

「仕方ないですよ、まだ幼いですし、それに転生者ですしね」

と慰める。

「ありがとうございます...」

カラはアーサーがいい人だと感動していると、リノアがアーサーに対して質問する。

「そういえば、アヴァロンがロリコンだと聞いたのですが、アヴァロンはあの女の人なのですよね?」

「...あ〜。」

そのリノアの質問に対し少し言い淀むもアーサーは答える。

「師匠は本当に小さい女の子が好きですよ。表では俺がアヴァロンとして出ているので、それを演じていますけど、一応俺は普通の年相応の女性が好きです。」

そんなアーサーの問いにリノアは複雑な顔をしながら

「とても複雑ですね...」

と答える。アーサーは補足程度にアヴァロンについて喋り始める。

「ちなみに師匠が年不相応の喋り方なのは、幼い女の子が好きすぎるが故にあの状態で不老不死になってしまったんです。まぁなってしまった。と言うより、なりたくてなったですけどね...」

少し困惑しながらもアーサーは喋る。そんなアヴァロンの話にカラ達は少し引く。

「どれだけ小さい女の子好きなの...」

「もうロリコンどころじゃないですね...」

「まぁでも僕達もカラの事好きだし、あんまり人の事言えないよね」

ルヴラがそう言うと、クゥロとリノアは黙る。

「あ、一応言っておきますけど、この話、師匠がした嘘ですからね!?本当は師匠、不老長寿の種族ですから」

アーサーは急いで補足を入れる。そんな発言に一同納得する。

「なるほど!」

「へぇ〜」

「アーサーさんなんで嘘の情報を?」

クゥロにそう言われ、焦るアーサー。

「お、面白いかな思って...」

少しだけ詰められて、しょぼんとするアーサー。そんなアーサーの背中をポンポンするカラ。

〝不老不死とは...どういう感覚なのでしょう...。少し気になります!〟

カラに背負われながらもそんな話を聞いたシフィは、不老不死について気になっている様子。まぁたしかに俺も不老不死がどういう感覚なのかは気になる。それを聞くためにもアヴァロンに追いつかなくては...。

そうして、アーサーの後について行く事15分後、厄災の封印へと着いた。


「こ、ここが厄災の封印...」

思わず固唾を呑み込む。それほどに負のオーラが漂っている。

「お主ら、遅いぞ!」

「ったくアーサー。お主がおるというのに何故こんなにも遅いんじゃ」

アヴァロンはアーサーと出会うや否や、文句を言う。そんなアヴァロンにアーサーは謝罪しかできない。

「まぁ、そんなことはさておき。お主らは初めて見るじゃろう。ここが厄災の封印。」

外から見ると洞窟のような形だが、覗くと、真下に穴があり、その先には封印されている黒く禍々しいのが見える。

「あ、あれが厄災...?」

ルヴラがアヴァロンに質問する。アヴァロンはこくりと頷き。

「あれが『厄災』ニーズヘッグ」

ニーズヘッグ...。神話で聞く名前だ。確か俺の世界ではユグドラシルを齧っていたって話を見たぞ...。

「実は、この封印は600年前に勇者ライニグが施したんじゃ」

「ライニグが...?」

「そんな話聞いたことない...」

「まぁそういった話は、時間が経つにつれ消えてゆくものじゃよ...。」

ライニグの伝説...。まさかライニグはニーズヘッグと戦ったのか...?そんなことを考えるカラ。

「アヴァロン、貴女何歳なの...?」

まぁそれは俺も思う。

「じゃが...。その封印ももうすぐ解ける。」

アヴァロンは真剣でそして深刻な表情でそう俺達に告げる。

「えっ...」

「もうすぐって...いつ?」

俺はアヴァロンの言ったことをもっと詳しく知りたいと思い、そう質問する。するとアヴァロンは表情変わらず

「ここ1ヶ月の間...いやこの様子じゃと数日じゃ。おそらくここ1週間でこの封印は壊れるのぅ」

「1週間!?」

「ほ、本当にもうすぐじゃないですか...」

リノア達は驚愕する。クゥロはアヴァロンを見つめ

「なんでもうすぐ解けるってわかるの?」

と質問する。その質問に対しアヴァロンは

「妾は600年間この封印を見てきた。この封印の些細な異変に気づく。それに妾は負のオーラを感じる事が出来る。じゃから分かる。」

と少しドヤ顔で言う。しかしまた表情が戻り

「...じゃが、ここ最近、負のオーラが活性化しはじめ、封印にヒビが入っておる。その結果、もうすぐでこの封印は壊れると分かるんじゃ妾には」

アヴァロンは封印を見ながらそう言う。

ん?待て...ここ最近、負のオーラが活性化...?

「もしかして、魔王復活と関係がある...?」

俺は思わずそう呟いてしまう。その発言にアヴァロンは驚き

「魔王が復活...じゃと?」

と質問する。その質問にクゥロは

「...そう。魔王が復活した。実際、魔王の幹部が私達に襲ってきた。おそらくまた襲ってくるはず。」

嫌な顔をしながら答える。アヴァロンはその話を聞くと

「チッ...魔王復活か...。なんとまぁ面倒臭い。じゃがおそらくそれが原因じゃろうな。」

クゥロと同じく嫌な顔をする。

「ま、まぁでも師匠、転生者もいますし少なくとも心強くはありますよね?」

アーサーは少し焦りながらそう質問する。その質問にアヴァロンは笑いながらも

「確かにそうじゃな!」

と答える。




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