第19話 人類最強の剣士

「着きましたね...」

ふぅ...とリノアは息を整え、そう喋る。俺たちはやっとルズシュバラに着いたのだ。まぁまだルズシュバラに入っていないのだが。

「やっとルズシュバラだ〜...!」

両腕を上げ超絶喜ぶルヴラ。

「さて、入ろうか皆」

そう言ったクゥロはもう先に進んでいた。早くないかクゥロさん。

〝あ、はい...!〟

俺たちは慌ててクゥロを追いかける。

「もうちょっと喜んで良くない...?クゥロさんさぁ...」

ルヴラはクゥロに不満そうな声でそう言うとクゥロは相変わらずクールな顔で

「喜んでも良いけど、そんな時間すらもないの。アヴァロンとの会合時間はもうとっくに過ぎてるから」

と告げる。

「...えっ?会合時間...?」

俺は思わずそう言ってしまう。この一週間そんな発言を1度も聞いていない。どういうことかと思っていると、クゥロが俺の疑問をすぐさま答える。

「言うの忘れてた。その件に関して本当にごめんね。アヴァロンは最強だけど忙しくて、時間を作れること自体が珍しい位なの。だから急いでるの」

アヴァロンがロリコンだと聞いた時は人類最強がロリコンかぁ...ってなったけど、聞いたところそれ以外はまともそうだな。

「じゃ、じゃあこのズレた時間どうなるの?」

ルヴラは若干焦りを見せる。

確かにルヴラの言った通りだ。そんなに時間が無い人ならこのロスもヤバいかもしれない...。

ルヴラが言ったことを理解すると、一同が少し焦る。そんな様子にクゥロは

「確かに、この時間のズレは人を怒らせる理由になるかもだけど、アヴァロンなら大丈夫だよ。話によると、とてつもないお人好しらしいから恐らく謝れば許してくれるはずだよ。」

と、皆を落ち着かせる。

「それってロリコンだから優しい訳じゃないですよね...?」

リノアは嫌そうな顔をしながらクゥロに質問する。クゥロは、は?と言いそうな顔をしたのちこう喋る。

「この話を聞いたのは、父様曰く、国民からの話らしいから本当だよ」

クゥロがそう言うと、リノアは表情が戻り

「それなら良かったです」

となんとなくホッとしたように見えた。


そんなことを話していると、後もうちょっとでルズシュバラに入るところまで来た。

「ルズシュバラ〜!!」

ルヴラは両腕を横に伸ばし、ルズシュバラへダッシュした。まるでとある有名な作品の走り方みたいだなぁなんて思っていると、急に護衛の騎士が通行を止める。

「待て貴様ら。誰の許可を取ってここを通ろうとした」

俺らは困惑の感情しか湧かない。意味不明だ。なぜ俺らだけ止められたのか。

「だ、誰の許可って...ルズシュバラ通るのに許可がいるの?」

俺は護衛している騎士にそう質問する。するとその騎士は

「この国では、ルズシュバラの民の許可証無しでは通ることは出来ない。規則だからな」

当たり前だと言う態度でそう答える。

〝そ、そうなのですか...〟

シフィはショックを受ける。楽しみにしていたしショックを受けるのはしょうがない...。しかしこれはどうすればいいんだ...。

「クゥロは知ってたの?」

俺はクゥロにそう質問した後、クゥロの方を向くと、クゥロも驚いている様子だ。もしかしてクゥロも知らなかった...?いやでもクゥロがそんな初歩的なミスはしないはず...。

「その規則はいつから追加されたの?」

クゥロがそう質問する。そりゃそうだ、クゥロは超しっかりしている。そんなミスはしない。だとしたらここ数年で規則が変わった、もしくは...。

「3日前だ」

騎士は淡々と答える。

「えっ...!?」

「み、3日前...!?」

〝そんなの...〟

と、3人はそんな直近で規則が変わったことに驚く。しかし、クゥロは表情変わらず騎士にまた質問する。

「王が変わったの?」

すると2人の騎士は顔を合わせ、何か話しをする。そんな騎士の様子を見て

「はぁ...そういう事か」

と何かを確信し後悔している様子のクゥロ。

「...クゥロ様、どういうことなのですか?」

リノアは何も分からず、クゥロにそう質問する。

「...おそらくアヴァロンはルズシュバラの王じゃなくなった。というより、本来の王が戻ってきた。と言った方が早いのかな」

「本来の王...?」

クゥロのその発言に皆はまたも困惑する。

「最悪...。あの時気づくべきだった...」

クゥロは苦虫を噛み潰したような顔をしながらそんなことを呟く。

「ど、どういう...?」

ルヴラがそう混乱しているとすぐ後ろから

「お主ら、困ってるようじゃな...?」

とどっかで聞いた口調をした声が聞こえる。この口調...。と思いながら振り返ると、ルズシュバラに着く前にいたのじゃロリの姿が。

「あ、あの時の人...」

「まだ知り合って間もないけど、ごめんなさい!助けて!お願い!!」

ルヴラは藁にもすがる思いで、のじゃロリに助けを乞う。

「んー?そうじゃなぁ...そこの騎士たち、すまんがこの子らを入れてやってくれんか?」

のじゃロリはそう言うと、最初騎士達は困惑していたが、なにかに気づいたのか焦ったように武器をすぐさま下げ、姿勢を正し

「は、はい...!!ただいま!!」

と冷や汗をダラダラと垂らしている。

「ほら、空いたぞ。お主らも入れ」

その様子に違和感と疑問を持ちながらも、のじゃロリの後を着いて行く。その間もクゥロはため息をついている。色々変だが、まぁ今はのじゃロリについて行く以外に方法がない為、黙って歩く。


「お主ら、アヴァロンについては何を知っておる?」

のじゃロリの唐突な質問にまたも困惑するリノア達。代わりに俺が答えるか...。と思い答える。

「アヴァロンについては、男なこと、最強の称号、剣神の持ち主な事、ルズシュバラの王なことくらいかなぁ...」

俺は素直に聞いたことを話す。するとのじゃロリは

「ほむほむ...そうかそうか」

と首がすわってない赤ちゃん並に頷く。

「ならばルズシュバラの王、アヴァロンがおる場所に行くか!」

のじゃロリは満面の笑みでそう言うが、リノアは嫌そうな顔をしながら

「え?ア、アヴァロンさんの場所へ向かうのですか...?」

と質問する。

「...ん?あぁ、アヴァロンの所へ向かうぞ」

のじゃロリがそう言うとリノアが別の方へ向かい

「じゃ、じゃあわたくしはルズシュバラ観光しようかなー」

そうやって今すぐ離れようとすると、クゥロがリノアの襟元をつかみ

「リノアも来なさい。これは私の命令だよ」

とリノアに対して言う。カラは、クゥロがリノアに対して命令を使っている所を初めて見たため驚く。

「め、命令...分かりました...。」

リノアは超嫌そうな顔で着いてくることになった。

「なんでリノアを無理やり...?」

俺はクゥロが先程から様子がおかしいのも相まって、そう質問せざるを得なかった。しかしクゥロは

「もうじきわかる」

とはぐらかす。

「もうじきわかる...ねぇ...。」

そんな変な様子のクゥロを少し睨みながら後を着いていく。

「クゥロ、どうしちゃったんだろ...」

ルヴラはシフィにそう話す。しかしシフィは変な様子のクゥロを見ながら

〝さぁ...なにか気づいたことがあったのでしょうか...〟

と心配そうに答える。

「ほら、お主らあそこじゃ、ルズシュバラの王の家。王城ヴァルツァー。」

のじゃロリは目の前のデカイ建物を指さす。

「今までの城と少し違いますね...」

リノアはそう呟く。確かにリノアの言う通りだ。今までの城と違い、少し家に近い。

「たしかに...!」

〝親しみやすいお城です!!〟

そんなことより、城の名前かっこよすぎでしょなんて思いながら歩いていると、もう城に着く。

「ほい、皆入りなさいな」

のじゃロリは扉を開け、俺らを中へ案内する。

「アヴァロン...」

リノアは未だに嫌そうな声と顔をしている。

「リノア、覚悟決めなきゃ!!」

ルヴラはリノアを元気づけるためにそういう。しかしリノアは、そんな話を聞かずにぶつぶつと何かを呟いている。それ程にロリコンが嫌なのだろうか...。なんて思っていると、奥から成人の男性がやってきた。

「おぉ、これはもしや、紺氷の姫君クゥロ様ですかな?!」

と興奮気味にその男は握手を求める。

「...どうも」

クゥロは先程と同じようなテンションで男の人と握手を交わす。

「おほほほ...」

なんか興奮してるけどまぁ置いといて、俺は目の前の男の人に質問する。

「貴方がアヴァロンなのですか...?」

「...あぁ、俺がアヴァロン。アヴァロン・リヴァティン・シュヴァリエ...」

やっぱり、迫力あるな...。歴戦の剣士って感じだ...。なんて思っていると、我慢の限界だったのかクゥロが机を思いっきり叩く。

「...クゥロ?」

「どうしたのですか...?」

「遂に壊れちゃった...?」

〝大丈夫ですか?クゥロさん...〟

俺らはクゥロの心配をすると、クゥロが喋り出す。

「早く本当のことを言って」

「...えっ?」

「本当のこと?」

クゥロの発言に困惑していると、アヴァロンは

「本当のこととはどう言う事かな?」

と笑顔で答える。しかしクゥロは表情変わらずアヴァロンを睨みつけ

「白々しい...私はもう気づいてるの。貴方がアヴァロンじゃないこと」

「えっ?!」

「ア、アヴァロンじゃない...?」

どういうことだ...?とカラが疑問に思っていると、流石にもう無理だと思ったのかアヴァロンが笑い始める。

「...アッハハハ!ごめんな!騙していたつもりは無いんだ。威厳のために影武者として俺が使われているだけなんだ。本物のアヴァロンは俺じゃない」

と衝撃の事実にクゥロ以外の全員が驚愕する。

「じゃ、じゃあ...本物のアヴァロンは...」

リノアがそう呟くと、クゥロがのじゃロリの方を向き

「私達になら正体明かせるでしょ...早く正体明かして」

「えっ?」

「この人が...?」

皆のじゃロリの方を向く。するとのじゃロリはにまっと笑い

「...まさか己だけでここまでたどり着くとはのぅ...。クゥロよお主素晴らしいのぅ。そうじゃ妾がルズシュバラの王、そして人類最強の剣士、アヴァロン・リヴァティン・シュヴァリエ。以後お見知り置きを、じゃな!」




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