第37話 理の反逆者

「...どうやらアザゼルは死んだようだが」


カラは強大なオーラが消えたのを感じ、ルシファーにそう言う。ルシファーは汗を垂らし


「そのようですね...」


とほんの少し焦りを見せる。


「その影響か攻撃が止んだな。もっと来ないのか?」


カラは少しルシファーを煽ると、それに乗せられ、ルシファーは必死にカラに食いつく。


「グッ...!!」


「焦って無闇矢鱈に攻撃。まるで子供のようで、見ていて滑稽だな」


攻撃が単調になり、余裕綽々でルシファーの攻撃を避けるカラ。


「こう見ると悪魔も人間と然程変わりは無いんだな...ッ!!」


「アガ...ッ!?」


ルシファーの攻撃の隙にカラは腹に目掛けて膝蹴りをする。ルシファーはその攻撃が直撃し、その場で悶える。


な、何だこの威力...。一撃くらっただけで意識が...。呪いの力とはいえここまで力が増すものなのか...?


ルシファーはカラの力を直で感じ、気絶しそうになりながらもそんな事を思う。


「...ルシファー。早く立ち上がれ」


「グッ...」


カラにそう言われ、ルシファーは立ち上がろうとした瞬間、不意打ちでカラの腹を殴り掛かる。


「衝撃反転」


しかしその攻撃も虚しく、ルシファー自身に返ってくる。


「ッ...ガァッ...!!」


威力をそっくりそのまま返され、またも血反吐を吐くルシファー。


「もう私に攻撃するのは止めた方がいい。自分が傷つくだけだ...。大人しく死を」


瞬間、空気が変わる。そしてルシファーはソレに気づく。


「こ、この気配は!」


突然、カラ達の上空の空間が歪み始め、そこに時空の割れ目が発生する。そこから現れたのは、主とは真反対の存在。理の反逆者ロキだった。


「ロ、ロキ...」

再び現れおったか...


アヴァロンは、突如現れたロキを見つけると、警戒を強め、いつでも立ち向かえるように剣を構える。


「おぉ...!ルシファー!我が愛しき部下よ。こんな風にやられてしまうとは...」


誰も気づかず一瞬でルシファーの元に移動するロキ。1秒後にやっと気づき、一同、再びロキの方を睨む。


「申し訳ありません...ロキ様。私が主に報いをと名乗り出たばかりに...」


「良い、良いんだ。とりあえずいえに帰ろう」


ロキはそう言うと、またも空間を歪めて時空の割れ目を発生させる。そしてルシファーと一緒に帰ろうとする。


「待たんか!!」


この機を逃がすまいと、アヴァロンは、帰ろうとするルシファーとロキに対し攻撃を仕掛ける。


「邪魔だ。我が子が帰ろうとしているんだ。そこで寝ていろ」


ロキはそう言った途端、アヴァロンを押し飛ばし、そのままの勢いで地面に追突する。


「ガッ!?」


い、今、魔法も何も使っておらんはず...。なのに、妾には一切触れておらんかった...。やはり逆理。物理法則が効かんのぅ...


アヴァロンは頭を抑えながら、逆理の厄介さを改めて思い知る。


「フンッ!!」


「...ッ!!」


突然、カラに殴られるロキ。しかし、それも瞬時に対応する。が、その反応はまるで何とか追いついたかのような...。

そんな前との違いに気づいたカラは


「私も少しは強くなったみたいだ」


と、ロキに向けて喋りかける。そんなカラを見てロキは笑い始める。


「どうやらそのようだ。お前の成長速度、尋常ではないな...」


ロキはカラのとてつもない成長速度を見て、興奮しているようだ。そしてルシファーを歪みの中に入れるロキ。


「少しだけ貴様の相手をしてやろう転生者」


「今の私がどれほど通用するのか、試させてもらうよ。魔王」


そう2人は言いながら、上へ上へと天高く飛んでいき、米粒サイズにまでなった頃、2人の戦いは始まった。


「フンッ!!」


「んっ...!おぉ。良いねぇ...戦いがいがありそうだ!!」


今のカラの強さを直で感じ、テンションが高まるロキ。そのテンションを拳に乗せカラをぶん殴る。


「...ガッ!?」


流石に早すぎて反転が追いつかず、そのままロキの拳を食らうカラ。カラはあまりの威力の高さにその場で蹲る。


「まだ我の攻撃に反応出来ぬか...。ふむ...」


少し力加減を抑えようか考えるロキ。


「いってぇなぁ!!」


カラは、そんな迷っているロキに、怒りの感情をそのまま腹部へとぶつける。


「...ッ!!」


ロキはこれを食らう。これまで微動だにしなかった表情が変わったのが分かる。


「...ならやり返しだ!!」


ロキはそう言い、少し本気を出すと、カラは吹き飛ばされる。


「ガァッ...!!」


オリンポスの柱によって勢いは止まるが、柱に埋まってしまい、身動きが取れない状況になる。


「う、動かな...」


カラは柱から出ようともがいているが、ロキはもう目の前に


「この技を出させたのは、この600年でお前が初めてだカラよ」


そう言い、ロキはカラの腹部に触れ発動する。


「無の存在証明」


ソレが起きたほんの少し一瞬、辺り一帯の色彩が黒になる。かと思いきやすぐに元に戻る。何も振動は起きていない。にも関わらずカラは気絶し、そのまま真っ逆さまに落ちていく。


「カラ!!」


アヴァロンは急いでカラを助けに行く。


「フッ...まだ我の攻撃には耐えれないようだな」


ロキはニヤリと笑いながら降りてくる。


「グッ...まだ...」


アヴァロンによって抱えられたカラはロキに対しそんな殺意を向けるが、ロキは


「今は無理だ...。もうさっきの強化状態は解かれたからな。今のお前では我には勝てん」


と言い、時空の歪みを作り出し、再びその中へと入っていく。


「待て!!ロキ!」


タイミングよく悪魔達を倒し終わったゼウスが稲妻を纏い、帰るロキを殴ろうとする。が、拳が当たる寸前で消えてしまう。


「クソッ!!」


「1歩遅かったか...」


他の主らも後からやってくる。


「大丈夫か?転生者よ」


「おいおい、ボロボロじゃねぇか」


「とりあえず、建物の中で治療を」


そう言い、アヴァロンに抱えられながらカラはオリンポスの中へと戻っていく。それに続き、アヴァロンやリノア、主らもオリンポスへと帰っていく。



「とりあえず、どうなってるか見てみるわね?」


オリンポスの中に入るや否や、アマテラスがカラの体がどうなっているのか見る。


「グッ...」


「...こ、これは」


アマテラスは衝撃の光景を目の当たりにし、絶句する。


「ど、どうしたのですか?」


リノアはそう聞くと、アマテラスは心を落ち着かせ、真剣な表情になる。


「この子の体を探ってわかった事はある。けど、本当に聞きたい?」


アマテラスは皆にそう聞く。何故そんな確認をとるのか、なんとなく察する一同。だが、なんとなく知った方が良いと思ったクゥロが


「もちろん言って欲しい。だってカラは仲間であり、好きな人だから」


と、真っ直ぐな瞳でアマテラスを見つめながらそんなことを言う。そんなクゥロにリノアも真剣な表情をし


「姫様が覚悟を決めたのならわたくしも決めます。大好きな人ですから」


と言うと、後に続いてルヴラ達も頷く。


「...じゃあ言うね」


アマテラスは複雑な表情をした後、意を決して話し始める。


「まず、この子には呪いが付与されてる」


「の、呪い?」


アマテラスが言った聞き覚えのない単語に首を傾げるリノア達。しかし、そんなリノア達とは違い、主らは絶望したような表情をする。


「...そういえば先程、アザゼルとルシファーも呪いがどうとか言うておったな...」


アヴァロンは悪魔2人が話していたことをふと思い出す。


「その呪いって何なのですか?」


リノアはそう聞くと、主らは複雑な表情をする。


「その表情から察するに、この世界の癌かなんかかのぅ」


アヴァロンはそう聞くと、主らはお互いの顔を見合わせる。ゼウスはその重い口を開き、真実を語り始める。


「...大体アヴァロンの言ったことと意味は近い。」


「え...」


ゼウスの言ったことに一同は驚愕する。だがゼウスは続けて話す。


「呪いとは、この世界で生まれると、極稀に発生する現象でな。人間だけじゃなく、他の生命体にもかかることもあるんじゃ」


「じゃあ、もしかしてニーズヘッグも...」


リノアはぼそっとそう呟くと、主らの顔色が変わる。


「ニーズヘッグ...。今そう言ったか?」


突然ウッコは立ち上がり、そうリノアに質問する。


「え、は、はい...」


リノアはウッコにビックリしながらも、ちゃんと頷く。


「それでそいつはどうなったんだ?」


なんだかやけに質問するな...ウッコさん。なんて思うカラ。すると、リノアの混乱し始めたので代わりに答えることに。


「ニーズヘッグなら、アヴァロンの手によって倒しましたよ」


「あぁ、妾のアダマスによって一撃じゃ」


アヴァロンはカラの言葉に乗り、腰に手を当て、ドヤ顔で言うと、ウッコはホッとした顔をする。そんな反応に不思議がる2人。すると、椅子に座っていたユピテルが降りてきて喋り始める。


「まぁ、あんたたち人間は知らないだろうけど、元々ウッコには血の繋がった家族がいて、そいつがニーズヘッグのせいで殺されちゃったの。でも復讐だけで神の仕事を放棄したらダメだから、必死に押し殺して今までずっとここにいたの。」


そんな事実に一同悲しむ。しかしウッコは


「よせよせ!オレのために悲しんでくれるのは嬉しいが、同情などいらんわい!オレの家族が死んだのももう何万年も前の話だ。それに、お前らがオレの為じゃなくとも代わりに倒してくれたんだ、もう心残りは無い」


そう笑いながら言うと、ウッコはアヴァロンとカラを撫でる。

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