第15話 破れた過去、生まれた約束

「この世界で1人にしか許されていない称号か...」

剣神...。どれほどの強さなのか...。いわゆるチートキャラってやつなのか、それとも...。そんなことを考えていると、後ろからシフィが寄ってくる。

〝カラさん〟

「んぉっと...シ、シフィ...どうしたの?」

〝シフィ、やっぱりちょっとだけ怖いです〟

ちょっと怯えながらカラの襟を掴むシフィ。

「大丈夫だよ。シフィ。カラが絶対にシフィを守るから」

カラはシフィの頭を撫で、優しく微笑みかける。

〝あ、ありがとうございます...!〟

カラのその言葉に安心したのか、笑顔になるシフィ。

「あ、あの...」

すると、後ろからリノアの声が聞こえる。

「...どうしたの?リノア」

「わ、わたくしも次の国怖いなー...」

明らかに嘘をついているとわかる。だが、確かにシフィにだけこうするのは不平等か...。

カラはそう思い、リノアの頭も撫で

「カラが守るから、リノアも安心していいよ」

シフィの時の変わらず笑顔で言う。

「えへへ...ありがとうございます。カラ様」

幸せそうな顔をするリノア。そしてカラは

「ルヴラとクゥロも同じことしようか?」

と2人に聞く。

「えっ!いいの!?」

ルヴラは超嬉しそうにする。

「じゃあ、お言葉に甘えようかな...」

若干照れながら言うクゥロ。そしてカラはその2人の頭を撫でる。2人は満足したようだ。

「ところで、そのルズシュバラにはいつ行くんだ?」

ふと気になり、クゥロに聞くカラ。

「ん〜...そうだね...。なるべく早く行きたいから、3日後か4日後だね」

いつも思うが、クゥロは思い立ってから行動するのがとても早い。クールで責任感がある。本当に9歳なのかと思うほどにしっかりしている。凄いな。とクゥロに感心していると

「明後日くらいには行くのね。アンタ達」

ババ抜きで最下位になったミューラが話しかけてくる。

「そう。もう旅立つよ」

真剣な顔でクゥロはミューラ姫と面と向き合い話す。

「ほんと、貴女って行動が早いわよね」

はぁ...とため息を吐くミューラ。

「いっつもそう...」

「何か言った?小さすぎて聞こえない」

クゥロは、どうせいつもの煽り文句なのだろうと思い呆れた顔で聞くと。

「いっつもそう!!」

と、ミューラは叫ぶ。

「ミ、ミューラ姫...?」

突然大声を出すミューラに驚く一同。

「いつもそそっかしくて、大人ぶってて、いっつも危ないことをしてて、 どんどん私の近くから離れていく...。そしたら今度は何!?魔王討伐!?なんで...なんでクゥロは私と一緒にいてくれないの...?私は...私はただ、クゥロと遊びたいだけのに...。」

「...ミューラ姫」

「傲慢の姫君だなんて嫌な2つ名付けられて...。」

ミューラは泣き始める。

そりゃあそうだ。まだ9歳なんだから、そんなレッテルに近い2つ名を付けられて、嫌な気持ちにならないはずが無い。

「ごめんね...ミューラ。」

「ごめんね...?そんな言葉で許される訳ないよ!!私は、約束を破られたんだよ?そんな言葉だけで許せるわけないよ...」

「約束...?」

カラ達はクゥロの方を向く。クゥロは複雑な顔をしたまま、喋り始める。

「...4年前、ラヴィリニとリュグシーラで交流会があったの。その時にした約束で───」


──4年前。リュグシーラにて

「リュグシーラの若き賢王、リュグラ王。久方ぶりですね。」

ラヴィリニの王ユラは、リュグラ王に笑顔で挨拶を交わす。

「お久しぶりです。ユラ王。以前お会いした時はまだ王子でしたね。」

若干無理した笑顔で対応するリュグラ。

「そう無理に笑顔にならないでください。ここは社交の場ではなく、王族同士の交流ですので」

優しく言葉をかけるユラ。

「...そう、ですね」

今にも泣きそうな顔をするが、堪えるリュグラ。

「良いのです。王とはいえ貴殿はまだ若い。吐き出せる時に吐き出してしまえば良いのです。」

「ありがとう...。ユラ王」

その様子を見ていた、ミューラはクゥロの手を引っ張り、すぐに部屋から出る。

「ミュ、ミューラ...どこ行くの...」

「ミューラの部屋!」

「ミューラの部屋...?」

「うん!!」

そうして、2人はミューラの部屋に入り、遊ぶ。

「ババ抜きしよぉ!」

「良いけど、勝ったらなにかあるの?」

今と比べて、表情が動いているクゥロは、ご褒美かなにかあるのかと質問をする。

「んーん。ただクゥロと遊びたいだけ!」

と、ミューラは答えると

「...わかった」

クゥロは笑顔になる。

数十分が経過し

「うわーん勝てなーい!!クゥロ、ババ抜き強すぎ!」

今ほど動かない訳では無いが、昔でも表情はそんなに変わらなかった為、今も昔もババ抜きが強いクゥロ。

「ごめん...。手加減するね」

クゥロは苦笑いで言うと

「ううん。本気がいい」

と、笑顔で答えるミューラ。

数分後。ミューラは真剣なトーンで

「...ねぇ」

と喋りかける。

「どしたの?ミューラ」

「...母様と父様死んじゃったの...。」

しょんぼりするミューラ。

「そうなんだ...」

「寂しいよ...悲しいよ...ミューラどうしたらいいの...?母様...父様ぁ...」

今にも泣きそうな顔になるミューラ。すると、クゥロがミューラに抱きつき。

「じゃあ、私がそばにいるよ」

「えっ...?」

突然そう言われ、驚くミューラ。

「私がミューラのお姉ちゃん代わりになる」

クゥロはミューラの顔を見、笑顔でそう答える。

「えっ、えっ...?」

「だから、泣かないでミューラ...」

そう言い、クゥロは再びミューラをぎゅっとする。

「...うん...。約束だよ...?」

安心したのか涙が溢れて止まらないミューラ。

「分かった...。約束だよ────」


「───それはクゥロが悪いよ」

真顔でそう告げるルヴラ。

「そうですよクゥロ様。約束破ってクゥロ様が悪いです」

「...そうだね」

リノアも同意するが、カラはこう言う。

「まぁたしかに約束破ったのは悪いかもしれないけど、クゥロが完全に悪い訳でもないよ。姫という立場上、どうしても忙しいのは仕方ないし」

クゥロは姫だから仕方ないと。

〝カラさんの言う通りですよ...〟

カラの意見に賛同するシフィ。

「ありがとう。シフィ、カラ。」

「確かにそうですね...それに、クゥロ様は五大国の姫で唯一の魔法が使える姫なので、王同士の会議でも基本的に参加していますし...。仕方ないですね...。」

カラ達の意見に納得するリノア。だが

「でも、約束を破ったのは事実だよ...?」

と話し合っていると、クゥロはミューラに近づく。

「な、何...クゥロ...今更許してなんて言わないわよ...!」

近づくクゥロに威嚇するミューラ。だがクゥロは怖気ずにミューラに近づく。そして

「...なっ...」

クゥロはミューラを優しくぎゅっとする。

「な、何...!!こうやってまた抱きついて...っ!!」

と離れようとするミューラ。だが、離そうとしないクゥロ。するとクゥロはミューラに話しかける。

「ミューラ。ごめん...。許して欲しいとは言わないけど、その代わり魔王討伐するまで絶対に待ってて欲しい。その後皆で遊ぼう?」

優しい声色で、包み込むように言う。

「...えっ」

「ババ抜き楽しかったですし、また遊びましょ!ミューラ様!」

「そうそう!ミューラ!アンタは泣いてる顔似合わないよ!」

〝シ、シフィもまたミューラ姫様と遊びたいです...!〟

「ババ抜き以外でも遊びたいな。例えば...鬼ごっこ...とか?」

各々、笑顔で答える。

「皆、ミューラと遊びたい。でも、私達は世界のおびやかす魔王を討伐しなくちゃならない...だからその後で、ね?」

今まで表情が動かなかったクゥロが、優しく微笑みかけるのを見たカラ達が

「は、初めて見たクゥロのあんな顔」

「わたくしもです...」

「リノアが言うってことは相当かも...」

〝イ、イケメンです...〟

ボソボソと話す。

「分かった...。今度こそ絶対に約束だよ...クゥロ。魔王倒したら私と遊んでよ...?」

涙ぐみながらミューラは言う。

「うん、今度は破らない。約束だよ。」

クゥロはミューラを強く抱きしめる。そしてカラ達はミューラに近づき、ミューラの頭を撫でる。


1時間後、ミューラは自分の部屋に戻る。

「いやぁ...約束してしまったなー」

重くなっちゃった〜と思いながらルヴラは言う。

「そうですねぇ...」

冷や汗をかくリノア。

〝約束を破る訳には行きませんね...!!〟

頑張る...!!と意思を固めるシフィ。

「そうだね。絶対に魔王を倒さないと」

クゥロはいつにも増して真剣な顔をする。

「まぁでも、今は次の国ルズシュバラについて話し合わないとな」

次の国に切り替えないと、と皆に言うカラ。

「さっきも言ってたけど、ルズシュバラって剣闘士の国なんだっけ」

ルヴラはクゥロに質問をする。

「うん。そう。ルズシュバラは剣闘士の国。魔法使いが教会にしかいないレベルで剣闘士の国。」

「2回聞いても魔法使い少なすぎるでしょって思いますね...」

「わかるわかる」

リノアの発言に頷きながら同意するカラ。

「剣闘士の国だからか血気盛んだし、大人の男の人が多い。」

〝お、男の人...〟

クゥロの話を聞き、怯えるシフィの頭を撫でるカラ。

「大丈夫。カラがいるから安心して」

笑顔でそう言うとシフィは

「は、はい...!」

安心する。

「そして次の国で会うのは世界最強の剣士、アヴァロン。」

「世界最強の剣士...」

その2つ名に若干ワクワクしているルヴラ。

「どうしてアヴァロンに会いにいくかと言うと、彼が世界最強の剣士で、尚且つルズシュバラの王だから」

そんな衝撃的な事を言われ、驚愕するカラ達。


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