第14話 光の彼方
「何処だ...あいつ...」
辺りを見渡すカラ達。だが音も影も消えたクブリアを見つける事が出来ない。さらに気配を感じるほど感覚が鋭くない為、カラ達に焦りが生じる。
「あいつ...何処なの?」
「分かりません...音も何も全て消えましたから...」
「と、とりあえず背中合わせしよ!」
〝確かにそれ良いですね!〟
と5人は後ろを取られないよう背中を合わせ、正面だけに集中する。
「異変が生じたらすぐに攻撃しよう」
カラは皆を鼓舞するようにそう言う。
「はい...!!」
「気合い入れないと...っ!」
するとどこかから声がする。
「そうやって背中を合わせたって、君らごときが僕の攻撃を防げる訳が無いだろう!!」
と嘲笑う声が。
「何処...?」
当たりを見渡すリノア。
「声の出処も分からないなんて...まるでこの世界から消えたみたいな...」
苦虫を噛み潰したような顔をするクゥロ。
「この世界から消えた...」
そのクゥロの発言で最悪の可能性を話し始めるカラ。
「もし...もし透化がブラフで、アイツの魔法に本当の能力があったら...」
「え?」
「どういう事?」
カラの可能性の話に困惑するリノアとルヴラ。
「なるほど...確かに透化は存在ごと消せるわけが無い...」
カラの仮説に納得するクゥロ。
〝も、もしそうなら透化魔法以外のなんなのでしょう...?〟
シフィからそう問われる。するとクゥロは1つの答えにたどり着く。
「空間魔法...」
「空間魔法...ですか?」
クゥロの答えを聞き、疑問に思うリノア。
「空間を操り、その空間に自由に行き来出来る魔法。失われた魔法の1つで、古の大魔術師ユーラが使っていたと言う逸話があるけど、何故あいつが...?」
空間魔法の出自を語り、何故クブリアが空間魔法を覚えているのかを考えるクゥロ。
「っハハ!驚いた...正解だ。しかし、何故僕が空間魔法を使えるか、疑問に思っているみたいだな」
そういい、クゥロは空間の狭間から出てくる。それと同時に5人はクブリアの方を向く。
「それは、僕がその大魔術師ユーラ本人だからだよ」
クブリアから衝撃の事実を話される一同。
「大魔術師ユーラ本人...」
その言葉に唖然とするクゥロ。
「そんな嘘、誰も信じないです!」
リノアは否定する。だが、
「いいや、嘘偽りの無い事実さ」
と、ニヤケながらそいつは言う。
「さて、僕の正体も知れたところで、君たちにはもうここでさようならを送ろう。バイバイ。」
そう言うと、クブリアの赤い目が光り、魔法陣が発現する。
「
その魔法の標的はリノア。
「っ!!危ない!リノアッ!!」
すぐに気づきルヴラが叫ぶ。
「助けたって無駄だよ...?この魔法は選んだ相手を絶対に消す魔法だ」
またも嘲笑うクブリア。
「嘘...」
「僕は嘘はつかないさ...」
〈trans〉
カラの体の中でまたガゴンと音が鳴る。そしてリノアの上にある魔法陣に近づく。
「えっ...何を...」
「ハッ!魔法陣に触れたって、お前が消えるだけだぞ?」
何をバカバカしいことをしてるんだ?と思っているクブリア。煽るクブリアを無視し、カラは魔法陣に触れ、魔法陣をトランス変化させ、削除を反転させる。
「なっ...なぜ魔法陣に触れる!?」
「さぁ、それはカラにも分かんないや...。けどこれで」
魔法陣の色が反転する。
「空間を削除...。それでその魔法は確定で当たる...それなら削除という能力を反転させればいいんでしょ...?」
そして魔法陣に当たったリノアは2人に増える。
「えっ!?」
「ふ、増えた...!?」
「わたくし、2人になってしまいました...」
2人のリノアは同時にそう喋る。
「す、凄い...」
「削除の反対語は増幅。どういう意味がわかるよね?」
ニヤッと口角が上がるカラ。
「...くっ」
怒りで体が震えているクブリア。
「お前のその魔法はもう使えない。カラが全て反転させるから」
クブリアを見下すような目でそう言うカラ。
「や、やっぱカラの能力めっちゃ強いよね...」
ルヴラが冷や汗をかきながらクゥロに言う。
「そうだね...カラの能力は尋常じゃないほど強い。だけどなぜこういう能力が付いたのか...」
〝か、カッコイイです...〟
「それは分かる」
シフィの言ったことにすぐ同意するルヴラ。
「ッフフ...なるほど、勇者で変な能力を持っている。って言ってたのお前だったか...クソガキ」
「勇者かどうかは知らないが、変な能力なのは認めるよ。だけどお前の方がクソガキでしょ、人を煽ることにしか脳がない、精神がガキの醜い魔族。人間を蔑み、自分達が上だと信じてやまない、プライドだけが高い可哀想な種族だ」
目に光がなく、目の前の魔族を哀れんでいる顔をするカラ。
「なんだとォ!?」
その発言にクブリアはブチ切れ、カラの方へ急加速で向かう。が
「なっ...!?」
い、いつから魔法の準備を...!?いやそれよりも魔法を打つ速度が人間とは思えないほどに早い...ッ!!?
横から高密度の光線がクブリアの体を貫通する。
「哀れだな...魔族」
「これこそがブラフってやつだよ馬鹿野郎」
再び、哀れな魔族を見下すカラ。
「リヒトシュトラル...」
魔法を放ち終わった後に技名を言うリノア。
「この僕が...死ぬな...んて...」
その現実に受け入れられていないのか、絶望した表情のままクブリアは塵と化していく。
「ふーっ...終わりだな」
表情がフッと変わり、ニッと笑うカラ。
「た、倒しました...!!」
目を輝かせながらカラの方を向くリノア。
「うん。知ってる。良かったねリノア」
嬉しそうなリノアの頭を撫でる。
「えへへっ...良かったです!!」
「やったじゃんリノア!」
「上級魔族倒せるなんて、凄いよリノア」
〝とてもカッコよかったですよ!!〟
皆リノアを褒めまくる。
「リュグシーラで2回も上級魔族と戦うとはね...」
上級魔族が来る頻度に困惑するカラ。
「まぁでも、分かってはいたけどね」
「それでもやっぱり早いですよ...」
クゥロの言葉にしょぼくれるリノア。
「まぁでも倒せたからいいじゃない?」
そんなリノアをルヴラら笑いながらも慰める。
〝怪我すればシフィが治しますから、安心してください!〟
シフィはリノアを後ろから抱きついた後、そんな事を言う。
「そういうこと、リノア。頑張ってね」
優しく微笑むとリノアはやる気を出したのか
「...はい!」
と笑顔で答えた。
「そうだクゥロ」
クブリアを倒してから3時間後、皆でババ抜きをしていると、カラは思い出したかのようにクゥロに質問する。
「ん、どうしたの?」
1抜けしたクゥロは事務作業をしながらカラに答える。
「次の国って何処なの?」
「そうだね...。次はルズシュバラ。」
「ルズシュバラ...?」
「ふーん。あんた達ルズシュバラに行くのね」
何故かこの場にいるミューラ。
カラはもちろん、ルヴラもシフィもリノアも聞いたことがない国。
「その、ルズシュバラという国はどう言った国なのでしょうか...っ!?」
ババ抜きをしながら、クゥロのに質問していると、ジョーカーを引いてしまったリノア。それに対しニヤニヤと笑うルヴラ。
「ルズシュバラは、通称剣闘士の国。魔法使いがほとんどいなくて、いても教会にいるレベル」
と、クゥロはその国の魔法使いの少なさを教える。
「確かに、あの国は魔法使い少ないわね」
〝ほ、本当に少ないですね...あ!3抜けです!〟
「おめでとシフィ」
シフィの頭を撫でるカラ。
〝ありがとうございまふ...〟
ホワホワするシフィ。
「なんでそこに行くんだ?」
と質問すると、クゥロはこう返す。
「そこにいるの。人類最強の剣士が」
「人類最強剣士って?」
ルヴラが質問する
「強そうです...あ!4抜けです!」
「う、嘘...!?」
ルヴラが焦り始める。
「実際強いわよ?上級魔族相手でも余裕で勝てちゃうんだから。まるでライニグ様みたいで強くてかっこいいわ〜...あっ!!くっ...あんた...」
ルヴラを睨むミューラ。
「うへへ〜...ジョ〜カ〜」
「クッ!!」
眉を上下するルヴラにイラつくミューラ。
「その人類最強剣士ってなんて名前なの?」
カラはその人類最強剣士が気になり質問する。
「フルネーム。アヴァロン・リヴァティン・シュヴァリエ。その完璧すぎる剣技から、極致の剣とか言われてる。称号は剣神。」
と、アヴァロンの次々の情報を出すクゥロ。
「アヴァロン・リヴァティン・シュヴァリエ...かっこいい名前ですね...」
「名前からして男だな。よし!5抜け!」
「グゥッ...負けた...ッ!!」
ババ抜きの勝敗が決まったようだ。
「ちなみに、そのかっこよさからファンクラブもあるらしいよ」
クゥロから衝撃の情報が出る。
この世界ってファンクラブあったのか...
「えっ!?」
「そ、そうなんですか!」
〝フ、ファンクラブ...?〟
シフィが分かってなさそうだった為、カラが説明する。
「んー...ファンクラブって言うのは、その人を好きでたまらない人たちが集まる組みたいなものなんだよ」
そう笑顔で答えるとシフィはこう答えた。
〝ならシフィ達はカラさんのファンクラブ?〟
「...確かに!」
「そうですね!」
「今思えばそうね」
「んー...そうなのかも?」
「ちょっと話脱線しちゃったけど、つまりルズシュバラに向かうってこと。OK?」
「りょうかーい」
各々部屋に戻っていくが、カラはクゥロに質問する。
「ねぇ、クゥロ」
「ん?どうしたの?カラ」
「剣神って剣士の最上位?」
「そうだよ。剣士の最上位。世界で1人だけにしか許されない最強の称号。その中でもアヴァロンは歴代最強の剣士。」
「本当に強いから気をつけてね」
と、真剣な声色でクゥロは言う。
「えっ...?気をつけてってどういうこと?」
「...それは会ったらわかるよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます