第13話 光をも透ける

「なんだかんだでリュグシーラに来てもう1週間くらいか...」

次の日、起きて早々そんな事を口にする。

〝そうですね...〟

何故か布団の上にホログラムが出てきた。その後シフィがもぞもぞと布団から出てくる。

「...なんでシフィはカラの布団の中にいるの?」

〝あ、え...ごめんなさい...。カラさんの近くにいたくて...〟

なんだその可愛い回答。まるで付き合いたての彼女みたいな可愛さだな...。いや誰とも付き合ったことないからわかんないけど。

そう思いながら俺はシフィの頭を撫でる。

「わふっ」

「...ん?今...」

そう言うと、シフィの顔が赤くなる。

〝き、聞かなかったことにしてください...〟

そう言い、ホログラムを出力している機械で顔を隠すシフィ。その姿が狂おしいほどに可愛い。だが、そんな気持ちを抑えながら、シフィの頭を撫でる。

「分かった。聞かなかったことにするね」

〝あ、ありがとうございます...〟

赤くなった顔でそう言うシフィ。


「そろそろ、朝食のとこ行かないと」

体を動かすと、シフィも俺の上から離れてくれた。

〝あ、はい!そうですね!〟

そして、部屋から出ようとすると、リノアが部屋に入ってきた。

「...な」

「あ」

この状況、勘違いされるかもな...

〝リノアさん!〟

「なんでシフィちゃんがカラ様の部屋に!?」

〝あ、えと...これは...〟

「まさか...シフィちゃん、カラ様と!?大人なことを!?」

「...え?」

え!?そっち!?てか貴女9歳だよね!?なんでそんなの知ってるの!?と、俺は心の中でリノアにツッコミを入れる。

〝大人なこと...?〟

シフィはなんのことか分かっていない。当たり前だ。本来この歳は知るわけが無いのだ。ネットがなければ。いや...俺が知らなかっただけで小学生でもやってることはやってるらしいしな...いやそんな事はどうだって良くて。

「いや、シフィは知らなくていいんだよ...」

シフィの頭を撫でながら言う。

「あ、わたくしとしたことが想像が行き過ぎてしまいました...申し訳ないです...」

リノアは、ふと我に返り反省する。

「い、いや良いんだよ...」

もしリノアがこっちの世界にいたら妄想百合厨になっていたのかもしれない。そう思ったな。

「なんか騒がしいなと思ったら、なんで皆カラの部屋にいるの...?」

今度はルヴラがやってきた。

「なんでカラの部屋がたまり場みたいになってるの...」


「───今日から次の国についてを話すよ」

色々あり3時間後。皆俺の部屋に集まった。

「だからなんでカラの部屋なの」

そうツッコミを入れる。

「いや、カラの部屋ちょうど真ん中にあるから集まりやすいんだよね」

「分かる!ちょうど通る道だし!」

「わたくしはよくカラ様の部屋に来ておりますので、ある種のくせになっておりますね」

〝シフィはさっきからここにいたから...〟

各々がそう言い訳をする。まぁ咎める訳では無いが...実際、俺も動かずに済むのはありがたいし...。

「んで、次の国でしょ!!?」

「も、もう出発するのですか...?」

「いや、次の国の情報。まだ準備も終わってないし、お別れも言ってない。」

「そうですよね!良かったです!」

リノアはそう聞きほっとする。するとルヴラはこういう。

「それに、もうって言うけど魔王は復活してるんだし、更に言うと、なんだかんだここに来て1週間以上経ってるんだよね...」

確かにもう1週間以上経っていたな...楽しすぎて日にちの感覚が無くなっていた。

〝は、初めて国の外に出ます...〟

「確かにシフィは楽しみな反面、緊張するだろうね...」

「大丈夫だよ!シフィちゃん!!僕たちが支えるから!」

〝はい...!!ありがとうございます!〟

皆でシフィを撫でる。そして続けてクゥロは喋り出す。

「...だけどここ数日、魔族が襲ってこないのはおかしい。」

...確かにそれはそうだ、襲ってくるにしてももう少しスパンが短いはず...

「まぁ、流石にんぅっ!?」

ルヴラがフラグを立てそうになった為、急いで口を閉じさせる。

「その言葉だけはやめて...ルヴラ」

鬼の形相で俺はルヴラに対してそう言う。

「ど、どうしたんですか...?カラ様...」

リノアが俺に対して質問してきた。

「俺の世界にはフラグってのが存在してな...。起きる可能性があることの反対のことを言うと────」

地響きがした。フラグ成立だ。

「...やっぱり」

「来ちゃいましたね...」

「ご、ごめん...フラグ?というものを立ててしまって」

「いや、ルヴラは何も悪くないよ」

「そうだよ!ルヴラ!」

「それこそこっちの方こそごめん」

敵が来ているのに、気まずい雰囲気になってしまった。まぁそんなことはどうだって良く。

「とりあえず行かなきゃな」

「そ、そうですね!」


「クフフフッ...僕はアイツとは違う...。無闇矢鱈に関係の無い人や建物を破壊しない...。だけど1度狙ったら二度と逃がさない!」

クブリアは城へと向かう。

「見つけた...ブシュグレッドを殺した人間ッ!!」

無邪気に笑いながら、カラへ向かう。

「っ!!避けろ!!皆!」

とカラは皆に言うが、クブリアが狙っているのはカラ。そしてクブリアの特殊能力で城の壁を透け、カラの頭を掴む。

「なっ!?」

「すり抜けた!?」

「クッヒハハッ!」

「ブシュグレッドが殺されたと聞いてすぐさまやってきて、殺したヤツを見つけたらこんな奴に殺されたのか?ブシュグレッドは」

クブリアはカラに対して嘲笑あざわらう。

「こんなガキに殺されるとは...。クフフッ...キャッハハハハ!!やはりアイツは最弱なんだな...物理耐性が僕らよりちょっと高いだけのカス」

今度はブシュグレッドに対して嘲笑あざわらう。

「...お前ら仲間じゃねぇのか?」

そう聞くと、クブリアはこう答える。

「はぁ?あんな奴が仲間なわけねぇだろ!!僕より位が低いカス」

喋って油断させる...。そうすることによりリノア達がクブリアに対して攻撃が出来る...。

「ちなみによ...お前」

クブリアは表情を変え、ニヤリとわらう。まさか気づかれたのか...?と冷や汗をかくカラ。

「この上空から落としたら、他の人間と同じく死ぬのか?」

「...は?」

一瞬理解ができなかった。だが、これだけは理解できる。この魔族は...命を軽く見ている...。

「試してみ──」

すると、下からレーザーのようなものが発射される。

「っぐ...!!」

しかし、その勢いでカラは落ちていく。

「うぉぁ!?」

「カラ様っ!!」

しかし真下にはルヴラ。

「ちょいちょい!!このままじゃ危ないって!!」

と叫ぶカラ。

「ふっふっふっ。こんなこともあろうかと...テッテレー!ウォータースライム!!」

ドヤ顔でクソデカ球体を出すルヴラ。

「な、何これ...大きすぎない...?」

「す、凄いです...」

〝大きいクッション...?〟

「この魔道具の周りの膜は一定の衝撃の弱さになるとその膜が空いて、中に入る様な作りになってるの。そして中には水が入っていて、残りの衝撃を吸収する。そう!いざと言う時のための衝撃吸収の道具!!それがウォータースライム!!」

「ちなみに、事前に登録した人じゃないと中に入れないし、外にも出れない様になってるよ!あと、膜は一瞬で再生するから水が出てくる懸念もないよ!」

と、何故かどこかにあるカメラ目線で決めながら説明が終わり、カラはそのウォータースライムに落ちる。

「おぼふっ」

「...っ!!」

「そしてこのウォータースライム、中の水は特殊な水なので呼吸が出来る!そして服が濡れない!!更に便利機能があって、衝撃が完全になくなったら、勝手に地面に道を作ってくれて外に出してくれるよ!」

と、またもやカメラ目線で決めながら説明するルヴラ。

「凄い便利ね...」

〝て、天才です!!〟

「いっつも思うけどどうやって作ってるの?」

リノアは普通に疑問に思ったことを聞くと

「思いついたのをそのまま作ってるから、どうやってかはわかんない!」

「...て、天才だ」

皆がルヴラに感心していると、ウォータースライムからカラが出てくる。

「凄いよ!あの魔道具!あの中でも息できるし、親切に地面に送り届けてくれるし、水の中だったのに、服が濡れてない!!ルヴラ!天才だよやっぱ!!」

「えへへ...へへ...」

そんな事をやっていると

「クッソ!!誰だ!!僕に不意打ちをしたのは!!」

クブリアが激怒しながらこっちの方を向いてきた。

「今の魔法は光魔法だなァ!?なら!!」

超スピードでこっちに、いやリノアに向かうクブリア。

「まずい!!」

咄嗟にリノアの前に出て技を使おうとするものの出ない。

「...なっ!?で、出来ない!?」

まさか前の戦いの反動か...?

「フハッ!何も出来ないのならお前このまま死ぬぞ!!」

そう言いながら殴りかかろうとすると、リノアが前に出る。

「カラ様を殺させません!!」

「リノア...ッ!!?」

「ブラストシャイン!!」

「うぐっ!!」

光がクブリアの目の前で爆裂し、直撃する。その瞬間、リノアはクブリアの背後に瞬間移動する。

「早っ!!」

「くっ...目が見え...」

リノアの横に多数の魔法陣が生まれる。そして。

「タキオンキャノン!!!」

とリノアが言うとその魔法陣から無数の光弾が放たれ、クブリアに命中する。

「グギァッ...!?!」

「す、凄い...いつの間にリノアはここまで光魔法を操れることが...」

成長が止まらないリノアに驚愕するカラ。それに対しクゥロが

「魔法はイメージで生まれるものだからね...。出来るイメージがあるのなら無限にできる。それが魔法。その魔法で勝てるのなら勝つことが出来る。」

そう冷静に状況を見てそう話すが

...!!あの某魔王討伐後の作品での魔法の説明って間違ってなかったのか!!

と別のところで驚愕するカラ。

「うざったいなァ!!!」

光魔法にムカつくクブリア。

「なら、こっちもやってやる..."透化魔法"」

「透化魔法!?」

〝そ、そんな魔法があるの...〟

「聞いたこともないけど...」

「そりゃあそうさ!!この魔法は"禁忌魔法"だからなァ!」

そう叫ぶクブリア。

「禁忌...」

「嘘でしょ...」

「存在してはいけない魔法...ってこと...?」

禁忌魔法と言うヤバいワードを聞いてしまうカラ達。そしてクブリアは魔法陣を開き。

「クラールハイト」

そう告げると、クブリアは目の前から消えてしまう。

「消えた?」

リノアが驚愕する。

「ど、何処に行ったの...?」

周りを見るルヴラ。

〝影すらも消えてます...〟

困惑しながらそういうシフィ。

「これ...無理じゃない?」

クゥロはそう俺に対して言う。

「...うん...これ、詰みだね」

「透明化は流石に強すぎる...」



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