第6話 旅立ち、そして始まり

ラヴィリニに来てから1週間が経ち、他国の王からの情報が来た。魔王が復活したという情報だ。もうその影響は出ており、魔物が完全に活性化したという話もあった。

そして俺たちは魔王討伐の為、旅立つことに。


「ふあぁ...」

もう朝か...

今日、なんだよな...

「おはようございますカラ様」

「あ、おはようございます」

いつも通り使用人に挨拶をし、朝の支度をする。そして食事の間に向かうその道中で。

「あ!カラ様!」

「ん?リノア」

「おはようございます!カラ様!」

といつものようにほわっとした笑顔で挨拶をしてきた。こんな朝早いのに凄いな...リノア...

「おはよう、リノア」

2人で喋りながら食事の間に向かっていると

「眠いよ...」

今度はルヴラが起きてきた。

「ほんとに眠そうだね...」

「ほんと...眠いよぉ...助けてカラ...」

俺にもたれかかってくる。

ちなみに、なんでルヴラがここにいるのかと言うと、前日に、ルヴラはサウグさんと話したらしい。そうして宿泊の許可+旅立ちの許可を貰っただそうだ。心配しなかったの?と聞いたのだが...


「いや、カラが居るから大丈夫って言ってた」

「え?」

「だって僕のこと絶対守るって言ってたからって」

「そうだね...」

いやそれでもまだ9歳の子供ぞ。若干の心配はするやろうに...すごい信頼。

という訳だ。


「──え?寝れなかったの?」

とリノアが聞くと

「そうなの...寝れなかった...」

「だって楽しみだったんだもん!!皆でこの国を出るなんて!!」

遠足の時の子供だ...。なんて思いながら歩いていると前にクゥロが見えた。

「お、クゥロ!」

「...カラ」

相変わらず表情変わらないな...

「おはよう」

「うん...おはよ」

「よく寝れた?」

「まぁまぁ」

「そうか...」

うん。いつも通りの会話だ。


そんなこんなで食事の間に着き

「色々準備も整ったし、魔王討伐の為に旅立った方がいいよね?」

クゥロに聞いてみる。

「そうだね...もうそろそろ旅立ってもいいかも」

と3人、各々の部屋で旅立ちの準備をする。

前々から魔王討伐の旅立ちの為に準備をしていた。ちゃんと準備しといてよかった...

「お待たせしました〜!準備出来ました!!」

「僕も!」

リノアとルヴラは笑顔で城のエントランスに来た。

「気をつけてな。皆」

と今度はユラ王が見送りに来た。

「...うん。行ってくるね」

「あぁ...頑張ってのぅ」

笑顔で俺たちを見送るユラ王。

「行ってきます...!!王様!」

「あぁ...」

「行ってくる!ありがとう!国王様!」

「達者でな」

「...行ってきます。ユラ様」

「...皆のこと頼むぞ...カラ」

ユラ王から直々に任せられたので。

「はい。」

と真剣に答える。

「よし...行こ。カラ」

「あぁ、そうだな」

「では!参りましょう!!」

「おー!!」

まさか、娘だけじゃなくリノアも旅立つとはのぅ...城内が寂しくなるのぅ...気をつけてな...皆


「そういえば...なんでこんな朝早くにしたの?」

国の外に出る門の前に来たので、クゥロに聞いてみる。

「普通に人が邪魔だから」

「んぇ?」

「なるほど」

「まぁ確かに、クゥロ様は姫ですから、旅立つとなるとパレードになってしまいますね...」

1週間前にパレードしたのに、またパレードは流石に嫌だよな...

「そーいうこと!一発で理解出来なかったよ!」

と笑うルヴラ。

「もう街を出るよ...」

とクゥロが言う。

「しばらくのお別れだね...」

ルヴラはそう言い、感傷的になる。

「生まれてまだ9年ですが...寂しいですね」

大人すぎるだろ。なんて場違いなツッコミは置いといて

「魔王を倒せば戻ってこれるから、そんなに感傷的にならない!!」

と、このムードを吹き飛ばす。

「カラ...」

呆然としている3人の前に手を出し、

「カラ達はこれから伝説を作り上げるんだよ!魔王討伐という伝説を、その伝説の幕開けがこんな湿っぽかったら、なんか嫌じゃん?」

「...そうだね」

「今から伝説になるんだー!!」

「そうですよねっ!」

と皆の手が重なる。

「カラ達は、今から“歴史に名を刻む者”なんだから!」

「歴史に名を刻む...!!」

嬉しそうなルヴラ。すると


「そうだ!皆一人一人何か言わない!?」

とルヴラは提案をする。

「何かって?」

「ん〜...じゃあ僕からね!」

そしてルヴラは喋り出す。

「皆!精一杯楽しもう!」

「...ぷはっ」

「んふふっ」

「ふふ...」

笑ってしまった。単純な言葉すぎて...ただ気が楽になったな...

「なーんだよぉ...」

膨れ顔で俺たちを睨んでくるルヴラ。

「いや、そういう事ね?」

「そんなのでいいのなら」


今度はクゥロが言い出す。

「皆協力し合おう」

「協力は大事だね!」

とクゥロを肯定する。

「でしょ」


「じゃあ次わたくしですね!」

次はリノアだ。

「ん〜と...そうだ」

「皆さんが笑顔でいられますように!」

「まるでシスターみたい」

ルヴラから言われるリノア。

「別にいいじゃない...!!」


「最後はカラ様ですよ!」

「うん」

俺だな...そうだな...

「皆で協力し、笑顔で楽しく、だけどちゃんと目的も忘れず、本気でこの度を成功させよう。」

「カラ達は遊びのために旅をするわけじゃない」

「魔王討伐の為に旅をするのだから」


「うん」

「そうだね」

「はい...!」

カラの話を聞き、真剣な表情をする皆。

「だから皆、頑張って生きて帰って来よう。」

「はい!!」

「オッケイ!」

「それがカラの願い?」

そうクゥロが俺に質問してくる。そんな質問に対して

「カラの願いでもあるし、ある種の命令でもあるよ!」

と笑顔で言う。

「よっしゃー!」

「頑張ろう!!」

「生きて帰ろー!!」

各々、腕を上に上げて声も上げる。

「ちゃんと魔王討伐してから帰って来よう!」

そうして、俺たち...いや。私たちは魔王討伐への旅路の第一歩目を歩み始める。


だいぶ歩いたところでリノアに聞いてみる。

「そういえば...最初に着く国って?」

「最初に着く国ですか?確か...」

「リュグシーラ。通称、未来王国」

と先頭にいるクゥロが答える。

「未来王国...」

この世界での未来って一体どんな感じなんだ...?

「つまり最先端の技術があるの!?」

超絶嬉しそうに目をキラキラと輝かせるルヴラ。

すっごい楽しそう。

「その未来王国はここから何日かかるの?」

「歩きだと4日はかかると思う」

「遠い...」

一瞬で絶望するルヴラ。

「いやそんな近くにあっても困るよ...カラ達もいるから頑張ろう?」

と宥めてると超上空を飛んでいる人を見つける。

「え...空飛んでる」

「ほ、ほんとだ...」

「魔法...なのか?」

ただ見たところ魔法を使っているようには見えない。もしかして...未来王国って...と推測しながらも歩き続ける。


「なんだったんだろあの飛行物体...」

「なんだろねー...」

と皆であの飛行物体の正体について話していると、

「おや?」

上から声がする。女の子の声だ...

「そこにいるのはもしかしてクゥロ姫じゃない?」

と喋った瞬間、クゥロが若干不機嫌になる。

「...お久しぶりミューラ姫」

ミューラ姫...?

「お久しぶり、クゥロ姫」

「元気にしてた?」

「もちろん。元気だよ」

「相変わらず表情は動かないのね。ほんと蒼氷の姫君の名に相応しい表情だわ」

褒めているのか皮肉なのか分からない声色でそう言うミューラ姫。


「も、もしかしてリュグシーラ王国の姫...?」

と小声でリノアに話す。

「は、はい、そうです...リュグシーラ王国の姫で、1部では傲慢の姫君とも呼ばれてます...」

「ご...傲慢!?」

嘘...この子が...?でも、何となくわかるかも...

「傲慢って...?」

ルヴラは傲慢の意味がわからず質問して来る。

「簡単に言うと上から目線って意味だよ」

そんな質問に意味を答えると

「うげー...」

と、嫌そうな顔をするルヴラ。

「あら、何やらそこの3人がコソコソと話していますが...」

「あ、ご、ごめんなさい...」

「えと...」

「ふむ...」

何か分かったような表情をするミューラ姫。

「もしかしてクゥロ姫」

「...何」

「この人たち護衛の人?」

なんとなく侮辱されているような気がする。

「...魔王討伐の仲間だよ」

「ま、魔王討伐!?」

信じられない!と今にも言いそうな顔をするミューラ姫。やはりか。

「プッ!アッハハハハハ!!!」

「魔王討伐なんて出来るわけないじゃない!!英雄ライニグじゃないんだし!」

傲慢の姫君って言われる理由がわかる...。とてつもなーく癪に障るなぁ...

「カラが英雄になる」

「え?」

お、俺?

何故か俺が英雄となるらしく、唖然としてしまった。

「カラ...とは誰のこと?」

「この子」

そういい、クゥロは俺の肩を手を置く。

「...えと...こんにちは...」

「こんな子が?」

こんな子とは失礼な。まだ実力を見せてないでしょうに。

「この子が英雄...?冗談も程々に」

と煽ろうとすると

「カラは転生者」

喋っている途中でクゥロは言う。

「っ...!!!」

ミューラ姫はめちゃめちゃ驚愕している様子だ。まぁそうか...600年来なかった転生者だもんな...

「て、転生者ですって...?」

汗をかいている。焦っている様子だ。

「嘘も大概にしなさい...クゥロ...」

「いや...嘘では無い...というか私、嘘ついたことない。それはミューラが1番わかってるでしょ」

なんか凄い表情が怖いかも...クゥロさん...

「...ふんっ。どうせ私の国に来るんでしょ」

「...1番近い国がそこだから仕方ない」

「国に来たら覚えてなさい...クゥロ。たっぷり虐めてあげるわ」

なんか三流が言うようなセリフだなぁ...。

「戦うなら真正面から来ないと。ビビりなの?ミューラ」

バ、バチバチすぎる...

「...っ!!!!」

と声にならない怒りをしながら国と帰っていった。


「なんかでも...Theお嬢様みたいな人だったな...」

「え?」

「あ、あの人がですか?」

カラの発言に困惑するリノアとルヴラ。

「あ、いや...なんでもないよ」

こっちの世界の話だからね...。

「じゃ、行こ。皆」

「つ、次の国...あんまり行きたくないかも...」

と文句を言いながら着いてくるルヴラ。

「わたくしも乗り気では無いけど...仕方ないよ...」

同調するが、しょうがない所は切り捨てるリノア。

「まぁ...でも技術気になるから楽しみだよ...」

だが俺はそんなの度外視して楽しみたい。だって...

「え?」

「だって言ったじゃん」

「この旅は楽しく行こうってさ」

と旅立つ前に言った言葉を皆に言う。

「...そうですね!」

「もう忘れてた...!!そうだったね!」

「うん...そう...楽しまないと...ね」



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