第8話 転生に伴う力

「わ、私の実力...ですか...?」

「あぁ、転生者の実力をこの目で見てみたい」

リュグラ王は真剣な眼差しで言う。

「えと...リュグラ...カラはまだ自身の力を理解してないから止めておいた方がいいよ...」

クゥロがそう言ってリュグラ王を止めようとする。

「...そうなのか?」

「その通りです...私はまだ自分の実力を理解していません...」

前に修練場壊してしまったしな...いつみんなに危害を加えるのかも分からないし...

「ならば余計見たい!」

と何故か逆に興奮するリュグラ王。

「...え?」

「リュグラ...カラの能力は...」

「黙りなさい?クゥロ」

クゥロが俺の能力について話そうとすると、後ろの扉から聞き覚えのある声がする。

「チッ...最悪」

クゥロはぼそっと呟く。

「姫にあるまじき舌打ち、それにセリフでしてよ?」

地獄耳かってくらいに耳が良いミューラ姫。

「ミューラ、なぜここに来た」

何故か兄であるリュグラ王はミューラが来て呆れている。いやなんとなく理解はできるが。

「それはもちろん兄様にいさまに会いに来ました」

目をキラキラさせるミューラ姫。だがリュグラ王は

「今はこの者たちと話しているから、大人しくしていなさい」

と遠回しに空気を読めと言うリュグラ王。

「...分かりました」

と不機嫌になるミューラ姫。

「...すまないな皆」

「ところでだが...本当にダメなのか?カラよ」

正直、使うのが怖い。って言うのが事実だが...このままこの能力を避け続けても強くなれない...それに魔王を倒せない...覚悟を決めなければな...

「分かりました...」

「えっ?」

「カラ様...?」

「能力、見せます...」

「それは本当か...!」

「はい...」

魔王倒すために強くならなければ...

「大丈夫なのですか...?」

「そうだよ、カラ...無理にやらなくても」

2人は心配そうに言う。

「うん...カラは魔王討伐するんだ...その為にも頑張らなきゃならないんだ...」

「...カラ様...」

1度驚くも、その後笑顔になり。

「分かりました...!カラ様が決めたことでしたら止めはしません!」

ありがとう...リノア...

「...うん...覚悟を決めたのなら私も何も言うことは無い」

ありがとう...クゥロ...!

「ちょっと待って」

と間に入るミューラ姫。

「な、何ですか...?」

そう質問するとミューラ姫は答える。

「貴女、何で兄様にいさまに能力を見せるの?それくらいなら質問してもいいでしょ?」

ミューラ姫は疑問に思っていることを聞く。その質問に対し、リュグラ王は答える。

「...このカラと言う子は転生者でな...前の転生者の授かった能力は、光魔法とその圧倒的な魔力量という能力だった。だからもしかしたらと思い、カラにも能力を見せて欲しいと頼んだのだ。」

「...転生者ってそんなに凄い人なのですか?」

とミューラ姫は再び質問する。

「そういえば、お前には話してなかったな...。ライニグの逸話は知ってるだろう?」

「ライニグ様のことはもちろん知ってます!!私の大好きな方ですもの!!」

と興奮しているミューラ姫。

「なら、そのライニグが今話題に出てる転生者だ。って言ったらどう思う?」

「ライニグ様が転生者...?」

「まず、転生者とは何ですか...?兄様...」

「...そういえば、そこから話さなきゃならなきゃいけないんだったな...」

と半分呆れ気味で言うリュグラ王。

「転生者、つまりこの世界とか違う世界から来た者のことを言う。英雄ライニグもそうだ。」

「この世界とは違う場所...?」

「あぁ、そうだ」

「兄様が言うなら本当ね...事実、貴女みたいな人見たことないし...」

この人、リュグラ王のことしか信用しないじゃん...

なんてミューラ姫に呆れる俺ら。だがそんなことを無視しリュグラ王は続けて話す。

「ただ、転生者は他の人とは格の違う強さの能力を持っている疑惑があるんだ。」

「格の違う強さの能力ってどのくらい違うの?」

「それこそ、前転生者のライニグの能力は光魔法と人とは思えないような魔力量だよ。その結果たった一人で魔王討伐まで行ったんだからな。」

「...そうなの...。じゃあこれも転生者で格の違う強さの能力を持ってるってこと?」

人をこれ呼ばわりするなんて...本当このガキ...と思っていると

「その可能性があるってだけだ。あと人のことを物扱いするな」

早速リュグラ王に注意されるミューラ姫。

「...分かりました...」

そしてめちゃめちゃ不服そうなミューラ姫。

「さて...もうそろそろ行こうか」

話を切りかえて、立ち上がるリュグラ王。

「...え?どこに?」

「門の前の草原にでも行こうか」

「わ、分かりました...!」


皆で雑談しながらも国の外に出て、草原に着く。

「こんだけ離れていれば大丈夫だろう...さてカラ君。」

「は、はい」

「今から君の能力について調べていく。良いね?」

「...はい...!わかりました!」

俺の能力について知れる...!

「では、皆の者。準備は出来ているか?」

えっ?準備?なんて思っていると

「はっ!!」

とリュグラ王の臣下しんからしい人達がそそくさと何かの準備をする。

「出来ました!」

「よし」

「...リュグラ。これ何?」

クゥロが当たり前の質問をする。

「これは能力算出機。魔法か特殊スキルかを見極め、その能力の詳細をデータに出してくれる機械だ。」

「...な、なるほどです...」

リノアは全く理解出来ていないが、未来の機械とはいえ、まぁまぁに進んでる科学の世界で生きてきたから何となくわかる。


「では海に向けて能力を放ってくれないか?」

「...は、はい!」

前と同じ様に目を瞑り、気持ちを乗せながら左手を前に出す。

強い感情...今思ってること...今は...

すると耳元でクゥロが言う。

「私たちが殺されるかもしれない所を想像して」

「ク、クゥロ様...それは...」

「良いのリノア。大丈夫。」

クゥロやリノア...ルヴラがやられるところ...そんなの...そんなの...っ!!殺させて...!!!

「たまるかぁぁぁああ!!!!」

「えっ!?」

「何これ...」

「嘘だろ...」

「なんだこれ...」

「い...一体何だこの力は...」

その場にいた人がザワついている。

「はぁ...はぁ...」

でも、衝撃音が聞こえないってことは...前より抑えれてる...よな!?

「...前とは違う力の作用をしてる...これ...」

「な、何なんですか...?カラ様の力って...」

「えっ...皆どうしたの?」

「目を開けて海、見てみなよ...カラ」

「えっ?」

クゥロがそう言ったので目を開けてみる。すると

「えっ?な、何これ...」

自分でもその光景に驚いてしまう。何故か。理由は単純。海が割れたのだ...見えないところまでに...

「も、もうそろそろ能力算出機が答えを出すと思うから、しばらく待っててくれ...」

数分後、能力算出機が計算し終わり、ホログラムで出た答えをその文字通り読む。

「...スキル名..."トランス"...?」

トランス?トランスって言うと...変圧器か?ただなぜその変圧器がここまでの力に...?

などを考えていると、さらに詳細が追加された。

「変わった...」

『この者の能力は、トランス単体の意味であれば全て能力へと変換できる。』

「ん??もう理解できないんだけど」

と呟くが、続けて文字が出る算出機。

『変圧器の意味を持つトランスの場合。使用者の感情の種類、強弱により能力が変化する。怒りであれば使用者から強力な波動が放たれる。』

「つまり、感情を力に変換してるってこと...?」

俺は全く理解していないながらにそう言うと、クゥロが言う。

「でも1つ違和感なのは、変圧器の意味を持つトランスの場合ってとこ。」

確かにクゥロが言った通りだ...つまり...

「つまり別の能力もあるって事か!?」

『言葉の意味を持つトランスの場合。1、反転。この能力は感情左右されないが、その力は性質的に全てを反転させる。』

「反転...?」

「難しいな...」

「理解ができない...」

と皆が脳を動かしていると、算出機から出ているホログラムの文字が変わる。

『使用者が反転トランスを使い、人に触る。そうすると能力が反転する』

「えっ?」

「んぇ?」

能力が反転?どういうことだ??さらに理解ができなくなった。が、算出機は更に文字を変える。

『反転化するとその能力の反対。つまり光だと闇になり水だと炎へと変換される。』

「何この能力...」

『2、超越。この能力は使用者にのみ使える。この能力は、使用者が物理的に越えたいと思った時にのみ発動する。』

「あ...この能力って...」

と呟くと

「わたくしをお姫様抱っこした時のやつですよね!」

リノアが興奮気味で言う。

「そうだよね!」

と話しているとまた算出機の文字が変わる。

『3、変換。この能力は使用者のみ使える。この能力は、外部から受けたエネルギーを変換する能力』

「えと...つまり...」

『魔法攻撃、物理攻撃等の攻撃を受け、別の攻撃に変換する、そしてその変換したエネルギーを自身の攻撃として使用出来る。そしてこの能力は溜め込むことが可能。』

「エネルギー変換...」

「それに貯めることが可能って...」

俺、発電所かなんかにでもなるのかなぁ...

なんて心の中でツッコミを入れていると、またもや算出機の文字が変わる。

『意識の意味を持つトランスの場合。』

「まだあるんだ...」

「す、凄いな...カラ君の能力」

「自分でもびっくりしてます...」

事実そうだ...それに俺1人にこんなに能力を付与しないでくれ、この世界の主よ

『自身を催眠状態へと移行させ、意識を無くし、自身を癒す能力。』

「自己回復能力ってこと...?」

『ただし、この能力は感覚がない為、攻撃を食らっても死んでも分からない。』

「デメリットもあるってことか...」

『以上が算出対象、カラの能力。』

そうして算出機は稼働を停止させる。


「情報が多くて何もわからん...」

そう言い放ってしまう。だが事実分からない。

「それもそうだよね...」

「それに、転生者の能力はとてつもなく強いって本当でしたね。」

リノアは総括して感想を言う。

「長かったけど多分強いんだろうね」

クゥロは俺の背中をさすりながら言う。

「まぁ多分そうだろうね...あの光景を見たら強い以外の言葉がない...」

俺も同じようなことを言う。するとリュグラ王がこっちに来る。

「カラ君...君の能力強すぎないか...?」

「私自身もここまで強くなくてよかったんですけどね...」

心の底からそう思う。チートは好きで憧れるがチートすぎるのは嫌だ。ラスボスで手こずるくらいのチートさ加減が良い。まぁチートすぎる転生を見るのは好きだが。


そうして、能力算出が終わり、皆で城へと戻り、クゥロ、リノアと一緒に部屋に戻りみんなで話す。

「いやぁ、それにしても能力ちょっとややこしいや...自分でも理解できない」

「まぁ追々理解しよ。カラ」

「そうですよ!カラ様!一緒に頑張りましょう!」

そう2人は言う。本当にとても優しいな

「ありがとう。2人共」

と言い。2人をハグする。

「ふぇ...っ」

「な...っ」

俺は2人の顔を見れなかったが、肌に触れた箇所が徐々に暑くなったのは感じた。

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