第33話 主への謁見

「そういえば、なんでミカちはここに戻ってきたの?」

ガブリエルは、ウリエルを含んだカラ達と一緒に、オリンポスの中へ向かっている最中、疑問に思ったことを聞く。そんな質問にミカエルは

「僕がガブから去った後、右を向いたら、何故か、ガブ達の方にとんでもない速さで向かってる天使がいたもんだから、急いでUターンしたんだよ。なんとなくウリエルだろうなぁとも思ってたし」

と、ほんのりウリエルを睨みながら答える。そんなミカエルの目線にウリエルは

「ご、ごめんって...」

と、謝罪する。

「まぁこれまでもウリエルは仕事終わらせた後、ちゃんと切り替えないと無理なのは分かってたけどさ」

文句を次々に言うミカエルにウリエルは

「ごめん〜」

と滝のように泣きながら言う。そんな2人をホンワカしながら見つめるカラ達。

「仲良しだなぁ」

「ね〜」

「ごめんね、この2人はいつもこんな感じなんだ...」

ガブリエルは困惑しながらも、カラ達にそう説得する。

「いえいえ、大丈夫ですよ」

「やはり、長年一緒におる仲間というのは良いものじゃのぅ」

そんなガブリエルの言葉に、心配しなくてもいいと伝えるカラ。むしろもっとみたいと心の中では思っている様子。


「ところで、天使ってどれほどいるのですか?」

オリンポスに着く間際、クゥロはガブリエル達にそう質問する。その質問を聞いた瞬間、ガブリエルは笑顔になる。

「そうだね、わかりやすい様に階級で言おうか」

ガブリエルは、ミカエル達と一緒に先導していたが、説明するために、歩くペースを落とし、カラ達と同じペースで歩き始める。

「天使には階級が9つあるんだけど、皆が想像するような子供の天使が、第九階級のエンジェルズ。裸の子供で小さい羽が生えたみたいなのが良く出てくるアレだね」

「あー、おとぎ話とかでよく見ます!!」

「あの天使が第九階級なんだ...」

そんな事実に一同驚く。

第9の子ならガブリエルとかウリエルみたいな名前の付いた天使なんて知らない子が多いよなぁ...と心の中で納得するカラ。

「第八階級。大天使。ここにはミカちやウリリ、さっきも言ったアズリエルとか...後は私も指揮官の階級。他にもいるんだけど、まぁ皆が知ってるのはそのくらいかな」

「そういえば、何で天使は階級の兼任しているのですか?」

リノアはガブリエル達の階級にふと疑問に思う。ガブリエルは

「単純に少ないんだよね...」

と、乾いた笑いで言う。

「そ、そうなのですか...。なんか、ごめんなさい」

そんな天使事情に思わず謝るリノア。ガブリエルはリノアは悪くないと頭を撫でる。

「第七階級は権天使。ここの指揮官の天使は2人なんだけど...。まぁあの2人に会うことは無いし、教えなくても良いよね?と言うか、もうそろそろオリンポスに着くし、良い?」

面倒くさくなったのか、端折ろうとするガブリエル。しかし、時間もないし仕方ないと許すカラ達。

「というふうに、天使には第一階級から第九階級まであって、権力を持つ天使はそれぞれの指揮官を担ってる。私とかミカエルとかはね」

〝そんなに兼任してると言うことは、忙しいのじゃないですか?〟

シフィは天使たちの忙しさを心配する。そんなシフィを見てガブリエルは笑顔になり、優しく頭を撫でる。ウリエルとミカエルもシフィの言葉を聞き、優しく微笑む。

「ありがとう心配してくれて。確かに忙しいけど、これが指揮官天使の仕事だから。それに私やミカエル、ウリエルより圧倒的に忙しい天使が1人だけいるんだよね...」

「え...。3人も忙しいだろうに、さらにその上がいるの...」

ルヴラは更にその上がいると聞き少し引く。

「まぁでもその子は人間大好きだから、仕事で人間が浄化できるなら!って喜んで仕事してるけども...」

「そ、そうなのですか...」

若干違うような気もするが...。なんてそんな事を思うカラ。

「あ、もう目の前だよ」

ガブリエルがそう言ったので前を見ると、目の前にはとてつもなくでかい神殿が。

「やっぱ近くに来るとデカいなぁ...」

そんな事をぼそっと呟くと、リノア達も頷き

「ほんとにそうですね...」

「バットゥヴェリ城とほぼ同じくらい大きくない...?」

ルヴラがそう言うとクゥロが

「多分、私の城よりデカいと思う」

と言う。そんな発言を聞き、無言で目を大きく開き、ちょっとだけ引くルヴラ。

大きさは違うけど、パルテノン神殿みたいだ...なんて思っていると、目の前に人がおり、こちらを見つけるや否や近づいてくる。

「ミカちゃん!ウリちゃん!ガブちゃん!!」

そう言いながら3人に飛び込んできた、ピンクのような紫のような色の髪色をしたウェーブがかったロングの女性。

「あははっ!」

「うぁあっ!?」

「ちょっ...!?いきなり飛びつかないで!」

突然抱きつかれ驚くミカエルとウリエルに対し、笑ってしまうガブリエル。

「この方は...?」

カラがそう質問すると、ピンク髪の人は抱きつくのをやめ、カラ達の前に出る。

「人間さん達、ごめんね?突然現れて」

そう言い、その人は頭を下げた後、すぐに頭を上げ、満面の笑みで自己紹介をする。

「ボクの名前はアズリエル!気軽にアズにゃんって呼んでね♡」

そんな衝撃的な自己紹介をされ、一同困惑のあまり静止する。

「ほら、アズ。そんな自己紹介するからみんな止まっちゃったよ」

「そうだよアズリエル。この子達は初対面なんだから」

「あ、あはは...」

3人の天使はアズリエルの自己紹介にツッコミを入れる。

「ん〜。確かにそうかも!ごめんね〜☆」

な、なんなのだこの個性が強いキャラは。そう心の底から思うカラ。

「きゃはっ!☆もしかしてアナタが転生者ってヒトかな〜?」

アズリエルはカラをツンツンしながらカラに質問する。

「まぁ、はい...。そうです」

少し、アズリエルに引きながらちゃんと質問に答えるカラ。

「アズ。カラ引いてるからもうやめたげないと」

「はーい☆」

ガブリエルの忠告でアズリエルは離れる。

「す、すごい個性的な天使ですね...」

「テンションが高い天使だね」

リノア達はアズリエルのキャラの濃さに言及しているが、アヴァロンはアズリエルを見て

「彼奴、力自体はミカエルと同等レベルじゃな」

と言う。そんな発言にカラ達は驚く。

「え...。あの子が?」

「まぁ、確かに只者ではなさそうだけど」

〝アヴァロンさんが言うということは、本当なんですよきっと〟

各々、アズリエルを見ながらそう言う。

「あはっ☆アズにゃんってば、もしかして人気者〜?」

「そうかも」

「アヴァロンがいるし、アズリエルの実力なんとなく測られたんじゃない?」

ミカエルが笑いながらそう言うと、アズリエルは

「え〜?アズにゃん、そこまで強くないよぅ」

と困り眉で、少し涙目になりながら超あざとく言う。

「アズリエルはいつも通りですね...」

「ウリちゃんもね〜」

そんな事を話しながら、一同はオリンポスへと入っていく。

「いらっしゃい。ここが神々が住まう地。オリンポスだよ」

「うおぁー!!」

外観では分からなかったが、内装はとてつもなく豪華で、まるで宮殿のような雰囲気。そんな内装に、カラ達は目を輝かせる。

「さ、こっちだよ皆」

ガブリエルは周りを見渡すカラ達を呼ぶ。カラ達は素直にガブリエルの後を着いていく。

「こっちの方におるのか?お主らの言う主が」

アヴァロンがそう質問すると、アズリエルが指を差し

「そだよ〜!主がこの先にいるの」

と答える。カラ達はアズリエルの差した方向を見ると、そこにはとてつもなくでかい扉があった。

「す、すごいオーラ...」

「僕でもわかる。あの扉の向こうにとんでもないのがいるって...」

「とんでもない所なのかな...」

〝ちょ、ちょっと怖いです...〟

その扉を見た瞬間。そんな反応をするクゥロ達。

「扉越しにも関わらずこんな威圧感が...。とてつもないのぅ。じゃが、こんなところで怖気付いても仕方なかろう。行くぞお主ら」

「そうだね...。行こう」

そう言い、カラとアヴァロンは扉の方へと歩いていく。そんな2人の後をついて行くリノア達。

「凄いねあの2人。扉越しとはいえ、主のオーラを前にしてるのに恐れずに立ち向かってる」

「ホントすごい。アヴァロンは分かるけど、やはり転生者は凄い」

「あの2人だけが今のところ別格だね...」

「初対面なのに凄いね〜☆今後が楽しみだよ☆」

と、2人を褒めるガブリエルたち。

扉に近づくと、ゆっくりと開いていく。目を刺すような眩い光にカラ達は目を細める。少し経つと目が慣れ、各々目を開け始める。

「...っ!!」

一同、気を引きしめる。扉の向こうに居たのは座席に座っている7人の人型の誰かだが、その者から放たれているオーラが尋常ではない。

「主よ。彼の者を連れてきました」

ガブリエル達はその者を前に跪く。7人の内の真ん中にいる人が手を上げ

「よい。下がれ我が子らよ」

と命令を下す。

「は...」

そう告げられたガブリエル達は部屋から出ていく。

あまりにもオーラが大きすぎて、この人らの前では無闇に喋っては行けない。と思わず思い込んでしまう程にオーラに圧迫されているカラ達。

「汝らは」

突然、話を始める先程とは違う別の主。その言葉一つ一つに重みがあり、身体中に、臓器に、脳に訴えかけている。逆らってはいけないと。

「今の魔王と会ったそうだな」

そう質問する主。その質問に対し、口を開き、質問に答えようとするが、何故か喋れない。理由は簡単。心の奥底から恐怖しているからだ。カラ達人間とは全く違う存在に。

「誰も答えないのか...?」

ほんの少し静寂がその場を支配した後、疑問に思った主は、そう疑問を投げかける。するとアヴァロンは、大量の汗を垂らしながら答え始める。

「はい...。妾達は現魔王、ロキと出会いました」

あまりの緊張感にアヴァロンでさえ敬語を使うレベル。それ相当に主の威圧感という物がデカすぎる。

「...ふむ」

「やっぱあの反応居たってことか。ならやはり魔王は今すぐにでも殺すべきだ」

「だが、魔王への対抗策がな...」

「んなもん、今の魔王もどうせ闇魔法だろ...」

アヴァロンが答えたことにより、主らは言い争いをし始める。すると、真ん中の1番オーラがある主が椅子の持ち手の部分を叩く。すると他の主は静まる。

「汝よ、現魔王の能力を教えてくれないか。我らは何も知らぬのだ」

「...そ、それはですね」

アヴァロンはほんのりフラフラする。喋ることだけに全力で精神使っているため、意識が朦朧としているのだ。それを感じとったカラがアヴァロンを支えようとする。

「アヴァロン...!」

すると、動作も何もしていないのにも関わらず、主の内の一人が一瞬でこっちに来て、アヴァロンを支える。

「!?」

「っ!!」

突然こっちにやって来て血の気が引くカラ達。

「汝、大丈夫か?」

アヴァロンの具合を心配する主。

「...は、はい」

「お主らは世界の希望なのだ、私たちと対等に話して良いのだぞ?」

「わ、分かりました...」

そんな会話をし、主は自身の椅子に戻る。そしてカラ達は深呼吸をし、気を張らずに素へと戻して行く。

「それで確か...魔王の能力。つまり魔法の事でしたよね?」

しかし、敬語を止めないアヴァロン。流石現国王と言えるべきだ。礼儀がキチンとしている。

「あぁ、そうだ」

「魔王の能力はこれまで闇魔法が継承されて行っておりました。これは主の皆様も分かっておられると思います」

アヴァロンは主らにそう問いかける。主らはその問いに対し、頷き肯定する。

「ですが、今回の魔王は、これまでの魔王と違い魔法の種類が違います」

「なんと...」

「そんな馬鹿な...」

アヴァロンから聞いた今の魔王の事情を聞き、主らは驚き、ザワつく。

「魔王の本当の魔法は現状分かりません」

「そうか...現状分からないのか...」

「対策のしようが...」

アヴァロンの答えに落ち込む主ら。しかし、とアヴァロンは言い、ナーバスな空気を切り裂いて話を続ける。

「妾達の推測なのですが、おそらく現魔王の魔法は理を逆らう魔法。つまりパラドックス魔法を扱うと思われます」

「パ...パラドックスだと!?」

アヴァロンは主らにそう告げると、主達は驚愕し、困惑する。

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