第29話 予想外の来訪者
「ま、魔王...!?」
「そんな...なんで!?」
突然のラスボス登場で動揺するカラ達。そりゃそうだ。いきなり親玉が登場するのは予想をしていなかったから。
「民は!民は避難させたか!!?」
アヴァロンは焦りつつも、最優先の民の命を知る為にアーサーに聞く。
「はい...。もう全国民逃がしました。今この国にいるのは、俺と近衛兵。そして地下に行った師匠達だけです。後、敵は魔王のみです。」
「...なんじゃと?魔王だけなのか?」
やはり魔王が理解できないアヴァロン。何故単独でこの国に来たのか...と。
「はい...。それに、今のところ殺意がある訳では無く...」
「な、なんじゃと...?」
聞けば聞くほど理解ができないアヴァロン。その為
「と、とりあえずそっちに急いで向かうから、魔王を見張っておれ」
「...はい!」
そうして、通信が切れる。
「ど、どうしたの?アヴァロン...」
クゥロはアヴァロンに質問するが、アヴァロンは
「妾も分からん...。とりあえず地上に戻るぞ...」
と言い、部屋から出ようとすると、ルヴラがまたも謎の空間に手を入れる。
「...待ってて〜っと!あった!!これこれ!」
取り出したのは球体の周りに環がある、まるで土星のような魔道具。
「何これ」
リノアがそう聞くと、ルヴラは自信満々に答える。
「これは、どんな所に居ても絶対に地上に戻る魔道具。その名もテレボウプ!!」
「なんでそんな都合のいい物作れるの?」
カラはルヴラにそう聞くと、ルヴラはドヤ顔で
「基本的にピンチの時に使える魔道具を、毎日150種類以上作ってるからかも」
そんなヤバすぎる制作秘話を聞いてドン引きするカラ達。
「ほいじゃ〜ポンッ」
ルヴラはテレボウプを地面に投げると、カラ達を囲む透明な何かに浮かされる。
「うおぉ!?」
「な、何これ!?」
〝ルヴラさんって凄すぎません?〟
瞬間。テレポートする。そして、いつの間にか城の中の部屋に戻っている。
「わぁ...戻ってる...。」
「...凄すぎるのぅ、お主の魔道具開発センス...。」
「へへ」
カラ達はそのまま急いで外に出る。
「アーサー!!」
アヴァロンは扉を開け、大声でアーサーを呼ぶ。外にいたアーサーは振り返り、アヴァロンを見かけるや否や
「師匠!」
と、言うもその場を離れない。何故か。それは奥に魔王がいるからだ。
「なんというオーラ...。」
「と、とりあえずアーサーさんの所に近づきましょう...」
リノアの提案により、カラ達はアーサーの方へ近づく。
「あれが、魔王です...。けれど、何故か国の中に入ろうとしないんですよ...。」
「...何故だ」
何故か門の前で棒立ちしている魔王を見つけるアヴァロン。
「あれが魔」
カラが魔王を見つけた瞬間、ワープしたかのように、いつの間にか魔王は目の前にいる。そして気づいた時には魔王の拳がカラの事を殴りかかっている。
「ぐっ...!!」
その拳を剣で止め、なんとか魔王の突然の攻撃に間に合ったアヴァロン。
「ほうお前が...」
魔王はニヤリと笑った瞬間。アヴァロンは、その者の奥底にある殺意に塗れた感情を感じ、ゾッとする。
「な、なんじゃ貴様...」
弾き返された勢いで宙返りを何回転もした後、スタっと華麗に着地する魔王。ゆっくりとアヴァロンの質問を答える。
「我の名か...。ここで会ったのも何かの縁だ...。君たちには特別に教えてあげようか」
ニヤり笑いのまま、魔王は自己紹介をする。
「我の名は魔王ロキ。この世界を終わらせる者の名だ」
焦点の合っていない瞳。嘲笑っているような表情。上から目線の口調。人ならざる者から放たれる強力すぎるオーラ。
「カラと言ったか...。我は、君の事が嫌いだ」
「...え?」
突然、そんな発言をされ困惑するカラ。
「それは何故か?それはね...君、いや君たちは我の記憶を勝手に読んだ」
またも焦点があっていない。そして不気味すぎる笑み。何なんだこいつは...そう思った瞬間。ロキの拳はカラの腹に直撃していた。ぶつかった時の風圧で皆、吹き飛ばされる。
「ガァッ!?」
あまりの威力にカラは遠くへと殴り飛ばされる。吐血しながら
「カラ!!」
「フフッ...ただ、我のこの一撃でもおそらくカラ。貴様は死なんだろう...?ならば」
「カラ様に何やってんだァ!!」
ロキはカラの方へ追い打ちをかけようとすると、リノアは大声で叫び、ロキは止まる。
「ま、待てリノア。此奴はお主の適う様な相手では...っ!!」
「ん?なんだ?子供か...。我は貴様の様な」
「リヒトシュトラル」
アヴァロンはリノアを止めようとするが、もう魔法は放たれていた。
「...成程、貴様が光属性魔法か。もうそこまで経ったか。いいぞ受けてやろう」
と、ロキは真正面からリヒトシュトラルを食らう。
「な...」
そんなロキに驚愕するアヴァロン。
何故、真正面から食らうのだ...
そう思っていると、砂埃の中からロキは現れる。
「...こんなものか。やはりまだ子供だな」
無傷で。
「...っ!!」
「リヒトシュトラル!テスタメントロード!テスタメントロード!リヒトシュトラル!!」
そんなロキを見、やたらめったらに魔法をぶち込むリノア。
「はぁ...ダメだダメだ。」
瞬間移動し、リノアの腹をぶん殴る。
「まだ浅い...」
殴られた結果、リノアは気絶する。
「ふ...これでやっとっ」
ロキはまたもカラに追い打ちをかけようとするも
「フロージアダスティング」
と止められる。
「おっとと、今度はお前か...」
またか。と呆れた表情をするロキ。
「リノアに何をした。答えろ魔王」
クゥロから今まで出したことの無い殺意と敵意が滲み出る。
「良い。良い殺意だ...」
ロキはクゥロの殺意を見て、笑顔になる。
「何笑ってるんだ貴様ァ!!!」
クゥロは怒りの感情が爆発し、今まで動いたことの無い表情をする。その感情を全て魔法にぶつけた。その結果、天候が変わるほどの魔法へと進化する。
「ふ、吹雪...!?」
〝なんで、さっきまで暑かったのに...〟
「ほう!!貴様、天候変化したのか!!」
ロキはこれまで以上に無邪気に笑う。
「天候変化じゃと...?!」
天候変化。
自然系魔法を扱える者の中でも、極小数しか扱えない常時発動型魔法。しかし、この魔法は魔法陣が必要無く、魔法を発動する際に同時に起きる魔法である。天候変化を発動すると、魔法の威力、発動速度、緻密性が大幅に上がり、その力は初級魔法でさえ上級に匹敵するほどにまで変化する。ただし、天候変化を発動する際、魔力をかなり消費する。
「パーマフロスト」
そう唱えた瞬間。ロキは一瞬で凍る。そんな様子に一同、驚愕する。
「こ、凍った...」
しかし、クゥロは力を抜いた瞬間、その場に倒れ込む。
「クゥロ!!」
アヴァロンは即座にクゥロの元へと行く。魔力切れで気絶したみたいだ。
「ふぅ...よかった」
すると、バリンと大きな音が鳴る。アヴァロンは後ろを振り返ると、ロキが氷を割り、自力で出ているのが目に見えてわかる。
「シフィ、リノアを回復させてやれんか」
〝は、はい...!!〟
シフィはアヴァロンの言う通りにリノアの方へ向かい、回復魔法を使う。
「ほう。彼奴は回復魔法か...。珍しい魔法を扱う者ばかりだなぁ...。このキッズ共は」
「そうじゃな。希少魔法しかおらん」
ロキの発言に答えるアヴァロン。
「ルヴラ!!魔道具を使ってカラを地上まで下ろしてくれんか!!」
ロキを見つめ、剣を構えながら大声で言うと、ルヴラは頷き
「分かった!!」
と言い、魔道具を使いカラの方へワープしようとする。
「おっと、それはマズい!!」
ロキはカラの方へ移動しようとするも、アヴァロンが剣でロキを止め
「ここから先へは行かせんよ、若造」
「...クソババアが」
「ワープする魔道具...あった!!これで...」
ルヴラは異次元から魔道具を取りだし、カラの所へワープする。
「カラ!カラ!!」
大樹の傍で倒れているカラを見つけ、揺さぶるも目を覚まさない。
「これ...マズいのでは」
とかなり焦るルヴラ。すると、カラは起き上がる。
「ぐっ...。んん...」
「あ!カラ!!」
「ル、ルヴラ...。ロキは...魔王はどうなったの...?」
カラはよろめきながらも立ち上がり、ルヴラに今の状況を聞く。ルヴラは空を指差し
「今はアヴァロンとロキが戦ってる」
と答える。カラはその方向を見た後にルヴラの方を見
「ルヴラ、今はとりあえず、アーサーさんのところに行って一緒に逃げるんだ」
「わ、分かった...っ!!」
ルヴラはカラに言われた事を聞き、アーサーの所へ向かう。
「アヴァロン...耐えてくれ...っ!!」
そう言い、カラはアヴァロンの所へ全力で向かう。
「クッハハハ!!やはり人類最強の剣士!!その実力はお見事だ!!」
ロキは拍手しながら笑顔でアヴァロンを褒め称える。
「そっちも、流石魔王じゃのぅ...。強さがイカれとるわい。」
汗をかき、息を切らしながらアヴァロンは言う。
「さて、物語ももうそろそろ終わる頃か」
「...そうじゃな。最後の一撃じゃ」
アヴァロンとロキはお互いにオーラを解き放つ。
「...クラウ・ソテス」
「キッハハハ!!」
この一振に全てを...賭けるッ!!!
「アダマス...ッ!!!」
アヴァロンはニーズヘッグと戦った際に放った大技を放とうとする。対してロキは殴りでアヴァロンを攻撃しようとする。
「フェンリル!!」
突然、アヴァロンは何者かに噛まれる。それは何か、アヴァロンは噛まれた方向を見ると、そこには真っ黒なオオカミが、アヴァロンを足止めするために噛んでいるのがわかる。
「ロキ貴様ァァ!!!」
「ダッハハハ!!アヴァロン!!我が正々堂々と戦うわけが無いだろう!!このまま死に晒せぇ!!」
ロキの攻撃が、アヴァロンに命中しそうになった瞬間。何かがぶつかった衝撃波が生まれる。
〈trans〉
「間に合ったぁ...」
「...カラ!!」
アヴァロンは満面の笑みになる。カラが間に合ったからだ。
「カラ...フフッお前、ここぞと言うタイミングで間に合うとは...。運がいいな」
「まだ、借りを返せてねぇからなッ!!」
カラは力を込め、ロキの拳を打ち返す。
「ふっはは...。やはりお前らは面白いな」
またも笑い始めるロキ。
「よし、ここで貴様が本気を出すおまじないをかけてあげよう」
そう言い始めるロキ。そんな発言に
「何言ってんだ。カラはいつだって本気だ」
と反論するも、無視される。そしてロキは下を指さし
「あれを見ろ!!カラ!!」
「待て、ロキ!貴様ッ」
アヴァロンは止めようとするも、カラはロキの指さした方見てしまう。そこには倒れているリノアとクゥロの姿が。
「...ッ」
「さて、どうするカラよ」
ニヤりと期待しながら笑うロキ。
「あ、あぁ...そんな、はず...無い...。」
「待て、落ち着くんじゃカラ。深呼吸をするんじゃ」
と、アヴァロンはカラを落ち着かせるも、ロキは追い打ちをかける為、嘘をつく。
「貴様の仲間、リノアとクゥロは死んだんだ。貴様のせいでなァ!」
「ロキ!!貴様ァ!!」
アヴァロンがロキを切りかかろうとしたその瞬間。カラの心臓が強く鳴り響く。
「嘘だ...嘘だ嘘だ嘘だ嘘ダ嘘ダ嘘ダウソダウソダウソダァアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
仲間が、友達が死ぬのを信じたくないという、現実の逃避と、また友達を助けられなかったという後悔と事実から、カラは理性の扉が壊れ、またもスイッチが入ってしまう。
「...最悪じゃ。また出てきてしもうた...」
「良いねぇ!!我はそれが見たかったんだよ!!」
「殺意に塗れた君をさァ!!!」
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