第17話 旅の再開

それから3日が経過し、カラたちはルズシュバラへと旅立つ準備をする。

「長いようで短かったなぁ」

ルヴラがそう口にする。

「そうだね〜...1週間くらいいたのかな?」

リノアは荷物を詰め込んでいるルヴラの独り言にそう答える。

「意外と長いこといたね。っていうかもう終わったの?!」

驚きながら質問するルヴラ。すると、さも当たり前のように

「終わったよ」

とリノアは答える。ルヴラは驚愕しながら準備をする。

「やっぱ早いねぇ...リノアは」

「当たり前だよ!わたくしは王族に仕える専属メイドですから!」

とリノアはむふーっとドヤ顔をする。

「そういえばそうだったね。すっかり忘れてたよ」

作業しながらそう言う。

「忘れてたって...。」

折角ドヤ顔したのにしょんぼりするリノア。

「もう準備出来た?」

クゥロがドアを開け、リノアとルヴラにそう聞く。

「わたくしはもう終わりました!」

「まだもうちょっと待って...!」

ルヴラが焦り始める。

「別に急いでる訳じゃないから焦らなくていいよ」

クゥロは焦るルヴラを落ち着かせる。

「ごめん...。というか皆もう支度終わってるの?」

支度をしながら質問するルヴラ。

「もう終わってるよ。だから焦らなくていい」

そう言い、柔らかい表情をするクゥロ。

「そっか!なら焦らずゆっくりやる!」

と、ルヴラはかざり目になり元気に返事をする。

〝出発しないと思ったら、ルヴラさんがまだでした...〟

すると、今度はシフィとカラがやってくる。

「ほんとだね」

「結局全員ここに集まりましたね...」

「そうだね」

そんな風に駄弁っているとルヴラが立ち上がり

「よし!終わったー!」

と、荷物を背負うルヴラ。

「じゃあ行こう。皆」

俺はそう言い、城の外へ向かう。

「分かりました!」

と、元気ハツラツで了承するリノア。やはりリノアは良い子だ...。

〝ちょっとだけ遅かったですね...ルヴラさん〟

シフィはルヴラと話し始める。

「いやぁ...実は1個だけ見つからなくて、ずっと探してたんだよね...」

自分の頭を擦りながら笑うルヴラ。

〝そうだったんだ...。探し物は見つかったのですか...?〟

心配そうな顔でシフィは言う。するとルヴラは満面の笑みで

「大丈夫!見つかったよ!」

と、親指を立て、ウインクをしてシフィを安心させる。

〝良かったです...!〟

「あれ、そういえば皆の荷物は?」

ルヴラがそう聞く。その質問にクゥロが答える。

「門の前に置いてる。でも、ちゃんと執事の人が見守ってくれてるよ」

「え、そうなの?じゃあ待たせちゃってるじゃん...。ごめんね...。」

ルヴラは申し訳なさそうな顔をしながらそう言うが、俺はそんな謝ることの程では無いのに...と思い。

「謝らなくていいよ。そんなに時間経ってないし。早く行こ?」

と言い、俺はルヴラの手を取り走り出す。

「えっ!?」

ルヴラは突然のカラの行動に驚き赤面するも、嬉しそうな顔をする。

「あー!!ずるい!!」

リノアは羨ましそうにそう叫ぶが、クゥロがリノアの頭を撫で

「今日ばかりはルヴラに譲ろ?」

と、宥める。リノアは納得はしていないが、クゥロが言うならと頬をふくらませながら

「ぐぅ...。分かりました...」

と呟く。その様子を見たシフィは

〝リノアさんもルヴラさんも可愛いですね...!〟

可愛い笑い声を微かに出しながら言う。

「とりあえず、私達も少し急ぎ足で荷物のところに行こ?」

クゥロは2人にそう言い、シフィの手とリノアの手を取り早歩きで向かう。

「わわっ!?」

〝うわぁ!〟

急に手を引っ張られ驚くも、シフィとリノアも早歩きをし、クゥロの横に並び荷物の場所へ向かう。


「おっ、3人来たよ!カラ!」

先に着いたカラとルヴラが3人に気づく。

「あっちの3人も仲良く手繋いでるよ。ほら見てルヴラ。」

俺は指を指し、ルヴラに伝えるとルヴラは顔を赤くし、焦ったかのように

「そ、そういえばすぐに出発するの?」

と話をそらす。そんなルヴラの様子を見て悪戯心がくすぐられ、俺はルヴラの手を握る。そして

「ルヴラって照れ屋だよね〜...自分から好きとかは言うけど、言われたら弱いってとこ...可愛くて好きだよ」

ニヤケながらそう言うと、ルヴラの顔が髪の毛と同じくらい赤くなる。やべ...やりすぎたか...?と思ったと同時にルヴラは気絶する。

「うあぁ!?」

「...や、やりすぎた...。」

とてつもなく反省していると、3人が走って来る。着くや否や3人はこの状況で当たり前の質問をする

「ど、どうしたの...?」

俺は、正直に全て話した。するとリノアは

「それはカラ様が悪いです...。そんなことされたら誰でも気絶しますよ...。嬉しすぎて」

そう言う。リノアがそう言うとクゥロは頷く。そうだったのか...。と俺は深く反省をする。

「今後は気をつける...こういう事はあんまりしないよ」

俺はそう言ったが、リノアは若干照れながら

「わ、わたくしにはしていいんですよ...?」

と言う。するとクゥロもそれに続き

「私も言われたい」

そんなことを真顔で言う。そんな真顔で言われても。

「...気が向いたらね。全く...カラが信用できるのはシフィだけだよ...」

俺はシフィを腕の中に入れ、頭を撫でる。するとシフィは

〝シフィは恋愛のことはわかりませんが、カラさんに撫でられるのは好きですよ...!〟

と、満面の笑みになる。そんなシフィに浄化される俺であった...。


ルヴラも起き、荷物を背負い、もうそろそろ行こうとすると、リュグラがやってきた。

「もう行くのか。クゥロ」

ほんのり悲しそうな顔をするリュグラ。

「うん。リュグシーラを出るよ」

クゥロは真っ直ぐリュグラを見つめる。

「...クゥロ達が来てもう1週間以上経っていたか...。長くも短いな...。」

そんなことを言い、リュグラは感傷に浸る。が、俺は感傷に浸るのはちょっと嫌いだ。これで別れじゃないのにまるで一生の別れのようなこの感じが、だから俺は包み隠さずに

「今生の別れじゃない。だから湿っぽいのはやめよリュグラ」

と、手を伸ばしリュグラに握手を求める。するとリュグラは笑い握手をする。そして

「そうだな...カラ殿。いやカラ。君の言う通りだ」

リュグラと固い握手を交わす。

「そういえばミューラ姫は来てないんですね...?」

リノアが辺りを見渡しながらそんなことを言う。確かにミューラ姫はいない。なんて思っているとクゥロが

「来るか来ないかはその人本人の自由なんだから良いよ」

と少し寂しそうな雰囲気で言う。クゥロも最後にミューラ姫と話したかったのだろう。すると遠くから走って来る人影が見える。

〝あ、あれ...〟

いち早く見つけたシフィが指を指し伝える。皆そっちを向く。そしてそこには見知った人影が

「あれ...ミューラ姫じゃないですか...?」

リノアがそう言う。確かにあの人影はミューラ姫に見える。リノア目良いな...なんて思いながらクゥロの方を見ると、クゥロは嬉しそうオーラを出す。そんなクゥロを見たカラは、可愛すぎて笑みがこぼれてしまう。

「はぁ...はぁ...っ」

汗だくで息を切らしながらミューラは現れた。そんなミューラを見て、クゥロは

「そんなに急がなくてもまだ行かないのに」

と先程の嬉しそうなオーラを抑え、ミューラにそう言う。するとミューラは

「わ、私が急いで来たかったの...!」

呼吸が整ってないながら言う。

「...ミューラ。とりあえず息を整えてから伝えたら?」

リュグラはミューラの背中をさすりながらそう言う。

「う、うん...」

数分後。呼吸が落ち着き、ミューラはクゥロの顔を見つめる。

「私に話?」

クゥロはそう聞くと

「...」

ミューラはこくりと頷く。するとミューラは頭を下げ

「...今まで冷たくしてごめん!」

と謝罪する。このミューラの行動に驚き困惑するクゥロ。

「えっ...?」

「私は、約束を破ったクゥロを冷たく接してた...。そして3日前にクゥロはその件で謝ってくれた。のに私は謝ってなかった...それは不平等だし、前と同じ様にクゥロと仲良くなりたい...から...。」

と、顔がどんどん下を向き、自身の服をギュッとするミューラ。その様子を見て、クゥロはミューラに近づき抱きしめる。そして

「ミューラ。この件は私が悪いよ。それにミューラが謝らなくたって、私は3日前の時点で許してたよ...」

優しく微笑みながらそう答えるクゥロ。するとミューラは安心したのか涙が溢れはじめる。

「うわわ...!?」

「ミュ、ミューラ姫!!」

と、皆慌て始める。そんな中ミューラは

「ありがとう...クゥロ...」

クゥロに抱きつきながら、感謝する。

十数分後。ミューラは落ち着いた。そして俺たちはルズシュバラへ向かい始める。

「じゃあね、クゥロ。皆。」

と、ミューラは嬉しそうにしかしお淑やかに手を振る。

「皆、元気で」

リュグラは優しい微笑みで見送る。

それに呼応し、俺たちは見えなくなるまでリュグラ達の方を見、手を振った。


「いやぁ、リュグシーラ...いい国だったね!」

満面の笑みでルヴラは言う。リノアも

「そうだね!皆いい人だった!」

そう答える。すると

〝は、初めて国の外に出ました...〟

とシフィが、半分ワクワク半分怖がっているように見えたので、俺はシフィの前に立ち少し屈み、シフィのほっぺをむにむにする。

「ぅぁ」

突然頬をむにむにされ、シフィは可愛い声をちょぴっとこぼす。

「シフィ、カラがいるから大丈夫だよ。安心してカラの後ろに居て。ね?」

そう俺は言い、シフィの頭を撫でる。するとシフィは

〝...はい!!安心です!!〟

一瞬驚いたが満面の笑みでそう言った。


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