第29話 ワイバーン便
先日は島の海辺にて、寄せては返す浪の音を聞きながら、金色に輝く夕陽の煌めきを眺めて、同じく金色の瞳を持つ旦那様がより一層美しく見えました。
憧れていた物語の中の登場人物みたいに、浜辺で貝殻を探したりもできました。
貝殻は布で包んでから大切に箱の中にしまいました。
そういえば、金色の宝石を埋め込んだ特注の懐中時計の仕上がりはどうなっただろうか?
旦那様の誕生日には間にあわないかしら?
刺繍入りのハンカチの方はもう完成していますが。
などと考えていると、上空から声がかかりました。
「こんにちはレディ! ワイバーン便です! ヴェローナ時計店様よりのご依頼でご注文の御品をお届けしました!」
「わあっ! こんな遠いところにすみません」
なんと!
海上の船にもワイバーン便は届くのですね!
絶対に誕生日にプレゼントを間に合わせると言ってくれた店主と職人さんのプライドを感じました!
でも、この方の後ろに何故かフードを目深に被った挙げ句に仮面をつけた人が乗っています……。
バディか護衛かしら?
「いいえ、こちら方面へ向かう貴人の護衛の用事もあったので」
「そうだったのですね。ありがとうございました!」
その後、ワイバーンに乗った配達人の腰に掴まっていた人から箱を一つ受け取りました。
ああ。そうか、ワイバーンを扱う人は手綱を持ってるから、背後の人が荷物を受け渡すものなのかも。
ともかく旦那様の為の誕生日プレゼントの特注懐中時計が届きました!
金色に輝く宝石もはめ込んであります。
私のような呪い持ちのちんちくりんなど、旦那様の妻にふさわしくないと思うけど、おいそれと愛してるとか好きだとか口に出しては言えないくらいに……私の中で大事な人になっています。
なので、プレゼントには密かに思いを込めました。
これから先の未来も、あなたと時を刻んでいきたいと。
ワイバーン便の手綱を握った方が船から離れていったのに、もう一人は何故か華麗に看板に降り立ちました!
「!?」
この方も船旅をするのかしら?
「ああっ! エリアナ!」
「旦那様? どうされました?」
旦那様が甲板にいる私の元に駆けつけて来て、私を背に庇い、立ちはだかりました。
フードを被った仮面の男との間に。
確かにフードに仮面でまるで不審者のようですが、この方はワイバーン便の……
「なんのおつもりですが?」
ん? 旦那様が敬語を使っておられます。
貴人とは、もしやこの方が……
「やあ、小公爵殿、よく見ぬいたな」
!!
この声は……聞き覚えが
「皇太子殿下、何故ここにおられるのですか? 護衛もつけずに」
皇太子殿下!!
「さっきワイバーン便の者がいただろう?」
「たった、今帰ったではないですか!」
すでに空の中で遠く小さくなっていくワイバーン便の方を指さした旦那様。
そして仮面を外し、ドヤ顔で微笑む皇太子殿下は、
「これからはクリストロ公爵家の君達が守ってくれるだろう?」
などと言われました。
「正気ですか? 我々がどこに向かっているかお分かりなのですか?」
「ヒイズル国に向かうと国に申請が有ったが、たいして交流が無かったところゆえ、外交の面でも、皇族がいたほうがいいかと思ってな」
そうかしら!? かえって大げさな訪問になってしまう気がします!
「いえ、無用な気遣いです、これは一応新婚旅行なのですよ」
旦那様はあからさまに不機嫌オーラをだしています!
「まあ、まあ、夜はそっとしておくからね」
それで許されると思っているのが流石の一言皇族の傲慢さです!
何故か食材をもとめた旅に、皇太子殿下が加わりました!
強制的に!
皇族を護衛なしで放り出せませんから!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます