第3話 買い物デート
街に買い物デートに行くことになりました。
乗り物は立派な装飾のついた豪華な馬車です。
流石公爵家です。
私の持参した服はあまり多くは無かったのですが、衣装室にはちゃんと既に色々と用意されてはいましたのに。
初め見た時は驚きました。
子爵家の令嬢なら誰でもいいみたいな書き方の求婚状だったので、きっと使い捨ての道具みたいにぞんざいに扱われると思っていましたので。
ただ、用意されていたドレスは、私が想像以上に小柄だった為、サイズが合わないものが多く……。
「ドレスは、その、針仕事はそこそこ得意なので仕立て直せば着れると思うのですが」
旦那様が、宝石店の他にドレスショップも向かうと馬車の中で説明されたので一応進言してみます。
「用意したドレスが合わないのはエリアナの身体的特徴を聞き忘れていた我々の落ち度だ、君がその手を煩わせる必要はない」
「そもそも何故うちの家門から妻を選ぶ事になったのですか?」
旦那様は少し逡巡された後に口を開きました。
「これを聞くと……そちらは気を悪くするかもしれない」
「何でもおっしゃってください、呪いを隠して嫁いだ当家が悪いので」
旦那様はついに眉間に深いシワを刻みました。
そんなに苦悩されるほど言いにくいのですか?
「……くじ引きだ」
「くじ!?」
「悩みすぎて運命をくじに任せたのだ」
ほ、本によれば、人は未来が見えず不安になった時、占いのようなものに頼ることも多いと聞きます。
「そ、そういうこともあるでしょうね」
「あまりないとは思う」
そうなんですか!?
私は引きこもりなのでよく分かりません。
「社交界のパーティーなどで素敵な女性と会うことはなかったのですか?」
「どちらかというと戦場にばかりいて、そういうのはほぼ、経験がない」
そう言えば、歴史書にありました。
竜属の血を引くと言われる彼らの家門は古くからお強く、国境で争いが起こるたびに、あるいは魔物が多い地域に王命にて出征されている。
「武勲で名の知られる家門ですものね」
「血生臭い噂だらけだろう」
妹もそういう噂に恐怖を感じ、嫁ぎたくないと騒いでいましたね……。
それでも……呪い持ちの私よりはいいと思いますわ。多分。
少し気まずい雰囲気になりましたが、場所は最初の目的地に着いたようでした。
華麗な装飾の絵描かれた看板にはヴァレンティと書いてあります。
「ヴァレンティ宝石店にようこそいらっしゃいました」
女性店員さんが笑顔で迎えてくださいました。
「今回は妻の結婚指輪と装飾品としての指輪を買いに来た」
旦那様はすぐに用件を話されました。
「かしこまりました、こちらの可愛らしい方が奥様ですか?」
「は、はい、一応」
急に話を振られて私は慌てて反応しました。
「好きなのを選ぶといい」
「え、ええと」
脳裏に公爵様がくださった予算欄が白紙の小切手がよぎりました。
でも私ごときにあまりお金を使わせるのは申し訳なく、ただでさえお茶の勉強の件で予算を使っていただけるようですし。
シンプルなシルバーの指輪を結婚指輪にして、それから旦那様の瞳の色の指輪でも……。
と、視線を店内に彷徨わせる私。
旦那様の瞳の色は金色、髪色は黒。
この、ゴールデントパーズとかシトリンというのはどうでしょうか?
私の読んてきた本によればお相手の瞳の色やイメージカラーで装飾品を買うことは多いようですし。
値段を見比べて慎重に選びたいところですが、何故か値段が書いてなくて怖いです……。
宝石店とは値段を書かないものなのですか?
「このサファイアとアクアマリンは君に似合うと思うが」
好きなのを選ぶといいと言いつつも、リングはシルバー。そしてアクアマリンとサファイアの石がついている2種類の指輪を私に示してくる旦那様。
私が銀髪に青い目をしているから色的に合うと思って……私のためにわざわざ選んでくださったの?
「あ、ありがとうございます」
ドキドキと心臓が早鐘をうちます。
実家のデボラお母様に叱られた時もそれは怖くててドキドキしましたが、それとは少し違うような気もします。
だけどまだ猫……ペット扱いかもしれないので油断はしません!
しませんとも!
「じゃあこれ全部包んでくれ」
「!?」
「こちらのサファイアと、アクアマリンの指輪と、シトリンとトパーズでございますね」
「ああ、指輪に色を合わせて首飾りもいるな」
「かしこまりました」
「だ、旦那様、流石に数が多いのでは!?」
結婚指輪ならば普通は一つでは!?
それに首飾りまで!
「結婚指輪以外にもドレスの色に合わせて他の色のアクセサリーもあった方がいいだろう。あ、そこのダイヤも」
「かしこまりました!」
また購入するジュエリーを追加して店員さんが大喜びしています!
そして旦那様も胸元から小切手を出してサラリと購入してしまいました!
書き込んだゼロの数が多い!!
こ、これが公爵家の財力!
でもこんな贅沢して本当に大丈夫でしょうか?
旦那様達が魔物を命がけで討伐した報奨金なのでは!?
一応貴族なのに名ばかりなせいで私は心が小市民なのです。
散財はハラハラします。
「エリアナ、顔色が悪いようだが大丈夫か?」
「だ、旦那様……私には不相応な装飾品で」
「家格に見合うものをつけなければ、君は公爵家に入ったんだぞ、もう子爵令嬢ではない」
そう言えばそうでした……!
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