第21話 旦那様が帰って来られました!
極東のヒイズル国に食材探しの旅に出たいと旦那様にお手紙を出したら、それから七日日にすごい早さで魔物を討伐して旦那様がお帰りになると報告がありました。
そして遂に旦那様がクリストロ公爵領に戻る日の朝が来ました。
早起きして庭園を散歩すると、ピンクの可愛いジニアのお花と可憐な薄い紫色のチコリの花が咲いています。
ジニアを少しただいて、旦那様の執務室に飾らせていただこうかな。
早起き庭師の許可もいただいたので分けていただきました。
少しのつもりがだいぶん沢山くれました。
すると庭園に実っていたいちごを採って来たと言う奥様、いえ、お義母様とまたお会いしました。
小ぶりの可愛いらしいいちごです。
お義母様の申し出で、私の手持ちのお花といちご一掴み分くらいを交換して頂きました。
どう考えても私のほうが得をしていますが、ありがたくいただき、そっと籠に入れて部屋に運びます。
私の好きな朝の、のどかな時間です。
この後は……旦那様の執務室に向かいます。
* * *
執務室に花を飾ったところで、窓の外からざわめきが聞こえました。
窓から下を覗いて見たら、騎士たちの一団が!
旦那様がお帰りになったようです!
私は急いでドレスの裾を掴み、小走りで城の入口まで向かいます!
「お帰りなさいませ! ゴードヘルフ様!」
皆が声を上げてお迎えしている声が聞こえています!
出遅れましたが私も頑張って走っております!
「エリアナ!! ただいま!」
旦那様が走ってくる私を見つけて破顔しました。
いい笑顔です!
「っ! お帰りなさいませ!」
「旅に出たいと聞いて、急いで戻ってきた! 置いて行かれると大変だからな!」
と、言ってたくましい両腕で私を抱き上げました。
「む、無茶はなさらないでくださいね。勝手に行ったりしませんから! それと、恥ずかしいので降ろしてください」
「ハハハ」
そんなことをしていたら、ご両親もお迎えにこられました。
「お帰り、我が息子よ」
「お帰りなさい、ゴードヘルフ」
「ただいま帰りました、父上、母上」
流石にご両親の目の前で抱き上げていちゃいちゃしているのはバツが悪いのか、降ろしていただけました。
「まあ、まあ、お坊ちゃま、とりあえずお風呂の用意もできておりますので」
「わかったよ」
乳母の言うことには素直な旦那様です。
お風呂に行きました。
それからしばらくして、旦那様が私の部屋に行られました。
急いで来たのかまだ髪の毛が濡れています。
私は布を手に、旦那様を椅子に座らせ、濡れた髪を拭きました。
「ちゃんと乾かさないと風邪をひきますよ」
「あー……エリアナに早く会いたくて」
旦那様はラウンドテーブル上の、ガラスの器に盛ったいちごを食べながらそんな言い訳をしました。
「さっき会ったではないですか」
とか言いつつも、内心は私も嬉しいです。
「はは、しばらく離れていたのだし、そこは大目にみてくれ。まず、そのヒイズル国にツテのある者が国内にいないか調べてから行こう、少しでも情報や紹介状のようなものがあった方がいい」
「旦那様は本当に一緒に行ってくださるのですか?」
「当たり前だろう、どんな危険があるか分からない船旅なんだ」
「ありがとうございます」
旦那様の想いに、私の胸はぽかぽかと温かくなりました。
「ところでこのいちご、砂糖をかけるかミルクに入れた方が美味いかもな」
「そうですか?」
それから私も朝摘みいちごを一つ食べてみましたら、なんとも甘酸っぱい味がしました。
* * *
私はその夜、また夢の図書館に行けました。
あの国に向かうにあたり、ツテはないかと探したら……驚いたことに、ウーリュ男爵令嬢のお祖母様が、ヒイズル国より嫁いで来られた方だと判明しました。
なんでも雨竜と言う雨乞いの巫女の家系の方で、ウーリュ男爵領は以前リーユ領地という名前だったけど、日照り続きで飢饉の危機に陥り、雨乞いの巫女を探してわざわざ遠方から花嫁を迎えてました。
さらに花嫁の家門の名前の雨竜を意識して、ウーリュ領と改名までされたそうです。
昔からよく色んなピンチに陥る領地なんですね……。
でも先日恩を売っていた領地ですので、マリカ状のお祖母様から紹介状もいただけました。
良かったです!
ミカドは美しい石や美味しいものや綺麗な花がお好きらしいので、そのへんを集めて持って行こうと思います。
「食べ物や宝石なら用意できる、でも花は舟旅の途中で枯れるのでは?」
「仕方ないので押し花アートを作るとか、種を持っていくとかで対応しましょう」
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