第45話 うなぎの日

 旦那様達が帰城されたので私は城の入り口までお迎えに行きました。


 旦那様は私を見つけると笑顔で駆け寄ってくださいました。


「エリアナ! もう起きて大丈夫なのか?」

「そもそも別に病気ではなかったので。あ、海綿をこんなに集めてくださったんですね」


 ネット状の袋には海綿がたくさん入っていました。

 後で綺麗に洗浄し、いいサイズに切って、ありがたく使います!



「ああ、何に使うかわからんが、騎士達も手伝ってくれた」


 ああっ! 騎士様達まで!

 いい笑顔で手を振ってくださっています!



「も、申し訳ない事を頼んでしまったかも」

「走り込みの後に海に入れて喜んでいたぞ」

「そ、そうですか?」 

「ああ。それとな、岩をどかしたらカニとかニョロニョロしたやつもいたし、食べられるやつだと思う」


「ニョロニョロ? もしやうなぎですか?」


 ネット状の袋の他に樽を持ってきてくださいました。


「これだ、食べると精がつくとかなんとか」



 あっ!!

 樽に入っていたのはやはり紛れもなくうなぎです!

 これは海のうなぎですね! まだ生きています!



「海の水は綺麗だとは思いますが、念の為にこれを食べる為に数日泥抜きをしてみましょう。それとうなぎの血には毒があるので調理中に目とか顔を触らないように気をつけなければ」


「そうか、わかった」


 しばらくして洗浄の終わった海綿を使わせていただきました。

 赤ちゃんの肌にも使えるレベルのきめ細かい天然のものです。

 私でもなんとかなりました!

 ありがとうございます! お義母さんにも紹介しておきます。

 実際に使われるかは不明ですけど!



 * * *


 数日後、私はそろそろうなぎの泥抜きも終わった頃合いかと厨房に向かいました。



「サトはこのうなぎを捌けるかしら?」



 翻訳の魔道具を公爵様が貸してくださったので、しばらく厨房にて使います。



「お任せください、目打ちと包丁がありますので」

「では、お願いね、血にはくれぐれも気を付けて」

「はい、ところで酢はどこにありますか? 魚のぬめりと臭みを取るのにいいのですが」


「ここだ」



 料理長が酢を棚から取りだしてくれました。



「ありがとうございます」

「うなぎは身がきつね色になるまで自身の油でしっかり焼かないと臭みがでるらしいから、よろしくね」


 内蔵を取って綺麗にしても身に臭みが残っていたらだいなしになる。


「はい、心得ております」



 コウヤの方も米くらい炊けると言ってますのでお願いしました。

 米炊きにはヒイズル国産のお土産の土鍋を使います。



 そして大切なうなぎのタレの材料は醤油、酒、砂糖、味醂ですが、味醂がないのでそこは省略します。

 仕方ないです。


 うなぎを捌くのはサトに任せ、タレ作りを料理長にお願いします。



「タレの作り方ですが、酒を強火で沸騰させ、アルコール分を飛ばします。

アルコールの引火に注意しつつ、うなぎの頭や骨はよく焼きこんでここで入れておきます。

それに砂糖を溶かし込み、醤油を混ぜて再度沸騰させるのです。よろしくお願いしますね」


「はい、若奥様」


 タレが完成したら、サトに渡します。

 サトがきちんと捌いて血を綺麗に取り去ってくれたうなぎを網の上で焼いていきます。


 うなぎをひっくり返したりしつつ、タレも数回ハケで塗ります。

 とても美味しそうないい匂いがしています。


 しっかり焼いていい色合いになりましたら、完成です。


「いい感じに焼けました!」

「母ちゃん、ご飯もできてるよー」



 お見事! つややかで美味しそうなご飯です!



「この外側が黒、内側が朱色の四角い器に白米を入れ、その上にうなぎを乗せてまたタレをかけてください」

「はい、奥様」


 そして出来上がったうな重を旦那様と一緒に食べます。


「前回のニョロニョロはドジョウ鍋だったな」


 はい! ヒイズル国で食べました!


「今回はうなぎです、とても美味しいです」 


 本当に! 皮はパリパリで香ばしさも出ているのにまるで蒸し焼きみたいに身もふっくらして!

 タレもよくからんでて! 白米との相性も最高です!


「たしかに身も柔らかくふっくらしてて、美味しいが、実はこのタレが一番すごいんじゃないか?」

「そうとも言えなくもないです、うなぎのタレは肉、魚料理にもなすびの蒲焼きにも使える優秀なものです」



 大満足の昼食となりました。









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