第46話 楽しい旅の話と不安な招待状

 〜 ゴードヘルフ視点 〜


 先日のうなぎ試食会では父上とお忍びデートに出て、不在だった母上がサロンでお茶を飲みながらくつろいでおられた。


 私はせっかくなので母上に新婚旅行の思い出、お土産話を今更ながらもすることにした。

 いかにエリアナが周囲に優しかったか、それを周知して貰うためだ。



「船内で泣きわめく子供を宥める為にエリアナが人魚の嫁入りの物語の朗読をしたの?」


「はい。さらにエリアナの朗読した人魚の物語では海で人魚の結婚が行われるとヴァージンロードが光るんですが、船旅の者が偶然それに遭遇できたなら、ご祝儀に真珠を光りの道に投げると幸せな結婚生活ができると言う言い伝えもありまして」


「素敵ね」

「そして我々の船旅の途中でも偶然海に光の道が出現しまして」


「まあ! ロマンチック!」


「千載一遇のチャンスなのでエリアナが真珠を投げ入れたんですが、父上と母上の分まで投げてましたよ」


「まあ、エリアナったら、新婚旅行の船旅の途中で私達の為にまで家庭円満を願ってくれたのね、優しい子だこと!」

「ええ、エリアナは優しいですし、非常に神秘的で美しい景色を見ることができました。あ、ヒイズル国の方でも川底の石が光る川を見たりしました」



 やたらと光る水場に縁があった。



「楽しそうでよかったこと」


 母上に旅の報告をした後に私は執務室へ戻った。



 * * *


「ゴードヘルフ様、おめでとうございます」


 ほとんど病気はしないけどたまに怪我はするので、我が家門にも主治医がいる。

 その主治医が突然私の執務室に現れ、何か祝いだした。



「何がめでたいのだ?」

「若奥様のことです」

「エリアナがどうした?」

「長年のご実家、子爵家でのストレスのせいかまだ月のものが来てなかったそうなんですが、ようやくお印が」


「月の……」

「子の産める女性におなりですし、そろそろ結婚式などいかがでしょうか?」


 主治医は満面の笑みでそうのたまった。



 結婚式!!

 そういえば小柄だし、見送りにしていた!

 まあ、その、なんだ、体に負担がないのであれば大丈夫なのだが……私の方は!



「そうだな、エリアナにきいてみるか」


 その後に両親にも。

 弟のケビンはまだバニラビーンズを確保の為に動き回っているが。



 部屋に向かうとエリアナは箸を使う練習をしていた。

 皿を2つ並べ、ヒイズル国から仕入れた大豆を入れた皿から豆を箸で掴んで隣の皿に入れるという地道なものだった。


 とても真剣にやっているし、集中している。

 話しかけて邪魔をするといけない。

 何しろ月のものは一旦終わるまで数日間はかかるらしいから、今はまだ話す時ではないかもしれない。


 俺は何も言わずにそっと部屋を出た。




 〜 エリアナ視点 〜



 私はしばらく集中してお箸の練習をしました。

 先ほど旦那様が部屋に来られていたとメイドに聞くまで気がついていませんでした。


 声をかけてくれたらよかったのに。

 なんだったんでしょう?


 ところでそのメイドには招待状を渡されました。

 なんと皇女殿下からのお茶会のお誘いです。


 困りました。

 何しろ皇女様からとなれば、断ると大変印象が悪いです。


 流石にクリストロ公爵家が強い家門でも、相手は皇族。


 行くしかない気がします。

 何しろ皇城最寄り神殿までの移動スクロールまでくっついてきています。

 これはとても高価なものです。



 まだ行くとも言ってないうちからこんなものを添えられては、突き返すのも無礼だと思いますし、

 絶対に来いという圧のようなものを感じます。


 しかたないから不安ではありますが、行くことにします。


 もしかしたらケビン様がやってるアイスクリーム事業の噂を聞いてそれが食べたいだけの可能性もありますし。








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