第35話 口に出すの忘れてました

 現在、私は温泉宿にて温かいお湯に浸かって浸っております。

 食事の前に汗を流したかったので助かります!


 竹で漁具を作るために慣れない編み込み作業をした手のひらが少し赤くなっていて痛みますが、まあ、そのうち治ります!


 あー、それにしても温かいお湯が沁みます! 体の芯から温まります!

 春なら親度のお部屋から桜が見れたそうです。

 今は夏なので桜の花は無理ですが、温泉がとても気持ちいいです。


 そして思い出されるミカドとの会食時のお食事ですが、メインが鯛のお作りでした!


 醤油でいただきました!

 美味しい!


 さらに赤飯!

 白米で良かったのにわざわざ赤飯が!

 でもこれはこれでもちもちしていて美味しいもので、鯛と同じくめでたい席に出される食事ですから、我々との出会いを祝福していただいているようです!


 そしてお味噌汁で良かったんですが、澄んだ色のお吸い物が出されてありました。

 かまぼこと豆腐と三つ葉と椎茸。

 上品で出汁の効いた美味しい汁物です!


 あとは塩味の焼き魚も!

 身はホクホクしてて美味しい鯖です!


 きゅうりには甘辛いもろみというものがかかっています!

 美味しい!


 あと、粘り気のある里芋の煮たやつ!

 食べると健康になれそうな味です!

 ありがとうございます!


 卵を絡めた高野豆腐!

 噛むとじゅわっと出汁の効いた汁が出てきます!

 これも健康になりそうな味です!


 全体的に長寿になりそうな味でした!


 そんな風に私は一人、会食のメニューを回想しつつ、お風呂から上がりました。

 湯上がりの肌のコンディションがとても良い気がします!


 そして、温泉宿のお食事のターンが来ました!

 夕餉です!

 そこで出たのが待望のお味噌汁と白く艷やかな白米!

 まずは汁物で口内を潤す方が多いと聞きます!


 お味噌汁の具材はわかめと豆腐という黄金コンビです!

 噂にたがわぬほっこり美味しいお味です!


 そして白米!

 お箸をマスターしてなかったのでこちらもスプーンで失礼します!


 噛めば噛むほどに優しい甘さが広がります!

 求めていた味にたどり着きました!


 お次はナスのしぎ焼き!

 ナスには甘いお味噌がかけて焼いてあります!

 ナイフとフォークで失礼します!

 最高! お味噌に砂糖が入れてあって甘辛美味いお味です!

 ナスはホクホクしてとろけます!


 さらにメインはドジョウ鍋!

 田んぼではなく清流で生きていたドジョウらしいです!

 ドジョウは上品な味の白身魚で、ドジョウ一匹で鰻の一匹に匹敵する栄養価があるんだそうです!


 ドジョウはうなぎに似ていますが、どちらかというと鯉の仲間らしく、そう言えばおヒゲがありますね。


 我々が川で仕掛けたビクにはドジョウもかかっていましたし、あの少年もドジョウをお鍋で食べたでしょうか?


 しっかり精をつけて大きくなって欲しいものです。

 あ、ドジョウと言えば妊婦さんも食べて滋養をいただくそうです。


 妊婦といえば、ミカドの后は妊娠中で悪阻がひどいのか、食事の席にもおられませんでした。

 ちゃんと食べられているでしょうか?


 妊娠で悪阻がひどい時にも食べられる食材はご存知かしら?


 おせっかいかも知れませんが年の為に寝る前に妊婦さんも食べられるじゃがいも料理の手紙でも書いて送りましょうか。



「どうした、エリアナ、おそらくは念願の料理だと思うのだが、静かだな? 移動で疲れたか?」


 あっ! あまりにも黙って食べていたので旦那様が不審に思われていたようです!


「え!? あ、脳内では目一杯フィーバーしておりましたが!」

「脳内で……」


「そう言えば口に出さないと伝わりませんね! ふっくら艷やかに炊きあがった白米は優しい甘さがあって最高ですし、ナスのしぎ焼きの甘いお味噌が素晴らしく、お味噌汁も出汁が効いていて、ほっこりする味わいで感無量でございます!」


「つまり美味しい食事に夢中になって会話を忘れていたんだな? 私もこのコメは甘さと旨味があってとてもいいものだと思うぞ」

「はい、そのように私も脳内では絶賛していたんです。お食事中でしたので、静かにしていましたが」


「ちゃんとお皿の中身は次々に減っていますから、美味しいと思ってくださったのは伝わりましたよ」



 背後からたおやかな優しいお声がかかりました。

 お宿の中居の方からフォローまでしていただきました。


「どれもとても美味しいです、ありがとうございます。寝る前にはお箸の練習を頑張りますね」

「まあ、うふふ、楽にお食事なさって大丈夫ですよ」



 中居さんもニコニコと優しく微笑まれています。



「良かった、内心は喜んでいたのだな」

「心配させて申し訳ありません、旦那様、お風呂もとても気持ち良かったです」



 そう言えば。

 お宿の……旦那様のお布団は私の隣に敷いてありますね……。

 無駄に近くてドキドキします!






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