第14話 有益な知識

 旦那様が魔物退治の依頼に出発してしまいました。


 なのでその間、私はケビン様とダンスレッスンをすることになりました。


 お手数をおかけして申し訳ありません。


 出発前にファーストダンスは夫婦でと旦那様は皇太子様におっしゃっておりましたが、身内と練習相手はノーカン! に近い事を言ってしぶしぶ出征されました。


 私は奥様が用意してくださったお茶の本も読んで、ダンス以外にも色々勉強をしていました。

 やりたかったことなので嬉しいです。


 美味しいお茶が淹れられるようになれば、旦那様が帰ってきた時に、飲んでいただけると信じて……。


「この豆のような植物、香料らしいのよ、一応国際市場で買い付けたものだけど」


 公爵家のサロンにて、奥様が買い付けてきた物を見せてくださいました。

 これは! 夢の中の図書室で見ました!


「おそらくはバニラビーンズというもので、甘い香りがする素敵なものですね、主にアイスクリームやケーキなどに使うものだと思います」

「まあ、そうなのね、ケーキは分かるけど、アイスクリームとは?」


「では、氷室に氷があるならアイスは私が作ってみましょう」

「あら、そう?」

「はい!」


 夢の中の図書館にアイスクリームの作り方はありました。


 牛乳、卵黄、生クリーム、砂糖の4つだけで作れるはずですが、これにバニラビーンズも足しますます。


 凍る間に何度か混ぜる手間はありますが、まあ、なんとかなるでしょう。


 錫製の容器にクリームを入れて、用意した桶の底に麦わらを敷いて、その上に「氷と塩」を載せ、氷と塩で容器をつつみ、氷室で四時間くらい冷やす。

 という手法です。


 氷と塩を混ぜ合わせると、氷の温度が下がり、氷が水に融解する時に、吸熱反応が起こると、周囲の熱を奪います。これによって、氷の温度はマイナス20度まで下がり、氷菓を十分に凍らせることができるようになる。


 これは科学反応とかなんとか。

 ダンスレッスンなどの運動後に暑くなりますので、お風呂で汗を流した後に食べたら最高だともよく夢の中の本で読みました。



 お試しで作ってみたら、成功しました!



「うわ、これエリアナ姉上、口の中で溶けました! すごく美味しいですよ! 毎日食べたいくらいだ!」

「ま、毎日は甘いものの食べ過ぎになるから無理でしょう! 私も食べたいですけと!」

「すごいな、これは真夏に食べると更に最高なおやつではないかな」



 ケビン様も、公爵夫妻にも喜んでいただけてよかったです!



「はい、想像した滑らかさよりややシャリッと感は強めですが、すっきりやさしい味わいにバニラの甘い香りが足されて、とても美味しいです!」



 ちなみにバニラの香りはは割とポピュラーなダージレンという紅茶の茶葉と合わせてみたら幸せな香りがして美味しいとも夢の中の図書館にありました。


 もちろんケーキなどに使うのが一般的ですが、今度はアイスだけでなく紅茶とブレンドしてみようと思います!



「ダンスレッスン後にまた食べられると嬉しいな」


 ケビン様が、おねだりするように私を見ます。


「最初に作る時に、厨房の皆様がお手伝いをしてくださいまして、作るレシピはもう覚えたと思いますので、リクエストすると出てくると思いますよ」

「やった! 勝ち確定!」

「ふふ」


「旦那様にもこの味を届けて差し上げたいですが

 流石にアイスを遠方に運ぶには氷の魔道具が必要ですから無理ですね」


「あるぞ、送ろうか?」

「え、公爵様、本当ですか!?」

「ああ、氷の魔石を使えばいいから、例の竜種の血液もそうして送った」



「宅配、クール便が可能……なのですね」

「宅配クール便?」


 はい、これも夢の中の図書館にありました。


「は、はい、鮮度などを保つ為にそのようにして配送をするサービス事業が他国ではあるようですよ」


「へー! 氷の魔石が潤沢に手に入るなら、そのクール宅配事業を夏にやれば儲けそうだなぁ、俺、氷結洞窟まで氷の魔石狩りに行って来ようかな」


 ケビン様が新たな事業を思いついたようです。


「いい事業だとは思うけど、ケビンあなた、ダンスレッスンはどうするの?」

「姉上覚え早いのでそろそろ大丈夫ですよ」


「あ、奥様、私は大丈夫です、そろそろ一人でもレッスンで来ます」


「そうなのか? でもエリアナ、そろそろお母様とかお父様とか言ってくれてもいいんだよ、無理強いとかではないけどな」

「それはそうよねぇ」


 公爵様と奥様!


「あ、ありがとうございます、お二人とも……」


 もう少し、自信がついたら、呼んでみたいと思います!


「あ、姉上、そのさっきのクール宅配とかいうアイデア借りていいかな?」


 そもそもは例の知識で私が考えたものではないので、


「はい、どうぞ、ケビン様」

「やったぜ! まあ、夏が終わる前にはなんとか形にしたいな」 



 当然ながら長子の旦那様が家を継ぐので、次男の

 ケビン様は事業などで成功した方が安泰ということでしょうか?

 兄の補佐で十分食べていけそうな気はしますけれど。

 ともかく夢の中の図書館の知識とはいえ、家族の役に立てるのは嬉しいです。


 寝てばかりの無能と実家では言われてましたが、あの特別で有益な知識をあの意地悪な人達にはあげたくなかったので、あの知識はこの今の家族や領地の為に使いたいと思います。


 ひとまず旦那様にアイスクリームをクール宅配でお届けできるよう、頑張ります!





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