第15話 旦那のいぬ間に。

 公爵様に氷の魔石をいただいて旦那様にお手紙とアイスを送りました!

 無事に溶けずに届きますように。



 そうだ、旦那様がいぬ間に誕生日プレゼントを何にするか考えましょう。

 旦那様のお誕生日は夏でした。

 もうじきです。

 お誕生日までには帰ってくると信じて。


 さてどうしましょうか、ハンカチに刺繍?

 地味かしら? でも、確かお守りになるのではなかったかしら?

 

 でも宝石とかでお守りを作った方が見栄えしますよね。

 お守り……。

 あ、本で読んだ事があります……。


「……えーと……懐中時計!」


 胸に攻撃を受けた時に胸の懐中時計が守ってくれたとかそういう物語がありました。

 そういうアクシデントがなくても時計は使えるものですし!



 懐中時計に宝石を装飾したものとか、華やかでいいのでは?

 それを包む布に少し刺繍をすれば、刺繍だけなら多少みすぼらしくなっても、懐中時計があればなんとかなるはずです。


 私は使用人のメイドに頼んで懐中時計のカタログを取り寄せることにしました。

 細かい現金のお小遣いも、貰ってはいるので、



「できればこっそりと懐中時計のカタログを手に入て欲しいの」

「それはもちろんかまいませんが、若奥様は何故こっそりされるのですか?」

「ヒントは誕生日です……はい、これは御駄賃」

「あっ! かしこまりました!」



 あっ! 察し! みたいな顔をした後で使用人はにんまりと笑いました。


 照れます。


 さて、私にはお茶の勉強の他にもこの国の貴族の勉強もしなければなりません。


 お勉強の合間に刺繍もしましょう。


 事実の机に向かいながらお勉強です。

 地味に忙しいので食事は部屋に運んでいただきました。

 サンドイッチを。


 それにしてもハーブティーの種類が多くて嬉しい反面、妊婦さんが飲んではいけないものも多々あるらしいから、気をつけないとです。


 でもこの家門、あまりお茶会などの社交もされないから、大丈夫……かしら?


 そんな風に考えていたら、数日後、懐中時計のカタログをうきうき見ていると、



「若奥様、お手紙をお届けに参りました」

「どうぞ!!」


 メイドが部屋をノックして、手紙を届けに来ました!!


 もしや旦那様からの手紙のお返事!?


 かと、一瞬期待したのですが、旦那様に手紙を送る余裕はなかったのか、まだアイスと手紙が届いてないのか、違いました!


 シーリングスタンプが皇室のもので戦慄が走ります。

 なんと中身は皇太子様からピクニックの招待状でした!


 何故このタイミングで!?



 旦那様が留守なので一人の参加はとても無理です

 と、お断りの手紙を出したのですが、移動スクロールを持った護衛騎士を迎えに送るからエスコートは心配しなくていいとか今度は魔法の鳥で返事を返して来ました。


「なぜ、そうまでして……私を!?」



 私は使用人に声をかけて、公爵様の居場所を聞き出しました。


 どうやらサロンにてご夫婦でお茶を飲んでおられるらしいので、お二人に相談することにしました。




「まあぁ……エリアナが可愛いからかしら? 皇太子殿下にも困ったものね」


「今回の魔物退治の依頼は王都経由だからゴードヘルフが留守にしてるのはご存知だろうに」

「ケビンにエリアナのエスコートをさせたくても氷結洞窟に行ってしまったし、なんて間の悪いこと」


「逆にあちらにとっては好機くらいに思ってるふしがあるな、仕方ない。あちらの護衛騎士だけではエリアナが不安だろうし、私が共をする」 


 え!? お義父とうさま、公爵様が!?


「そうですね。義理父同伴のピクニックなんて微妙な感じはしますけど、私はここを領主一族、全てが空にするのもまずいでしょうから、お留守番をしますので代わりにエリアナをお願いします」


 奥様! 私の為に留守番をさせてしまい、申し訳ありません!


「ああ」


 奥様に頼まれた公爵様は力強く頷きました。









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