第31話 旦那様の誕生日
そして来たる7月19日!
未だ船旅の途中ではありますが、旦那様の誕生日です!
このタイミングでついに朝からこの大海原にマグロが姿を見せました!
「鳥山だ!」
「あそこに大物がいるぞ!」
「マグロじゃないか!?」
鳥山とは、マグロやブリなどのフィッシュイーターと呼ばれる大きな魚に小魚の群れが追われ、海面へと逃げるタイミングを狙って、海鳥たちが集まって山のようになっていることです。
その鳥山のそばにマグロが確認できました。
「この私が狩るぞ! 誰かモリを持て!」
「はい! 皇太子殿下!」
いの一番に叫んだ皇太子殿下の声に船員が応えてます。
誰も逆らえない権力者たる皇太子殿下が先陣をきってマグロ狩りに参戦しましたが……ちょっとずるいような?
「せいっ!」
「皇太子殿下のモリが刺さったぞ!」
「引け! 引き上げろ!」
先に皇太子殿下がしとめ、マグロを引き上げました!
ちょっと悔しいです!
でも勝負は仕留めた獲物の大きさで決まると言ってました。速さではなく。
そしてその後には旦那様も新手のマグロを発見しました!
「こっちもだ! モリをよこせ!」
「はっ! ゴードヘルフ様! こちらをどうぞ!」
ちょうど旦那様の誕生日に獲物になりに来たみたいですごいです。
旦那様は強運の持ち主なのでしょうか?
「とうっ!」
旦那様が見事に大きなマグロにモリを突き刺しました!
なので結果的に旦那様も皇太子殿下も、どちらも大きなマグロを吊り上げましたが、大きさで旦那様が勝ちました!!
流石です!
「キスが貰えるはずだったな?」
旦那様が期待に満ちた目でわたしを見ています。
「キース! キース!」
ああっ!? 平民のギャラリーが囃し立てて来ました!
これでは逃げ場がありません!
「旦那様……少し屈んでください」
「ああ!」
そう言って屈んだ旦那様の頬にキスをしました。
恥ずかしいので、ほっぺで精一杯です!
でもギャラリーほ皆様が盛大な拍手をしてくれてますが、恥ずかしいです!
「天の神も照覧あれ! 俺は妻の唇とキスを守り抜いた!」
おおげさです!
お声が大きいですよ、旦那様!
「まあ、誕生日くらいは花を持たせてやらねばな」
などと皇太子殿下は負け惜しみなのか本心なのか分からない事をおっしやってます。
昼には誕生日祝いのケーキとともに隠していた懐中時計を旦那様に手渡しました。
「あれ、この箱は……見覚えがあるような」
「ほ、本当はそれ、下着ではなかったのです」
旦那様が包装を解き、箱から中身を取り出しました。
「私の瞳の色に寄せた石付きの懐中時計だ! これはおそらくこれからもずっと俺のそばで時を刻んでいきたい的なメッセージが込められてるに違いない! 素晴らしい贈り物をありがとうエリアナ!」
私がわざわざ説明などしなくても意を汲み取っていただけました!
すごいです! 深読みが趣味なのでしょうか?
ともあれ、良かったです。喜んでいただけて!
ちなみに旦那様の釣りあげたマグロは立派なステーキになっています。
皇太子殿下のマグロも船にいる皆に振る舞われました。
豪華で盛大なお祝いになりましたね。
「食べ切れない分はワイバーン便で公爵家の方にも届けて貰うかなぁ? ちょうどケビンの持ってきた氷の魔石もあるし」
「そうですね、公爵家の皆様も喜ばれると思いますよ」
旦那様の優しい提案に私も賛同しました。
ところで旦那様の誕生花はセンニチコウで、花言葉は「永遠の恋」「色褪せぬ恋」です。
たしか丸っこいかわいいお花で、紫やピンク、白、黄、赤に色づく苞を観賞します。
ずっと変わらぬ恋心を、捧げていただけるでしょうか? こんな私にも……。
そうして賑やかな船旅が続いていましたが、魔法の風のブーストのおかげも有り、ついにヒイズル国の島影が見えてきました。
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