第24話 お土産
なんとか……無事に朝を迎え、私は人間の姿に戻る事が出来ました!
神様に感謝を!
あのまま猫の姿のままだと使用人の誰かにトイレの後始末を頼むことになります!
それはとても辛いことです。
砂場をトイレにする(未来の)公爵夫人なんていやしませんから!
前代未聞です!
そんなことをさせるくらいならいっそ野山に紛れて野生動物のようにこそこそしたいくらいです。
己で砂をかけて……。
いえ、トイレのことはもう考えないことにしましょう。
私の尊厳はギリギリで守られましたので!
しかし、目が覚めると旦那様の体の上で裸だったので、起こさないようにソロリソロリと離れて素早く下着と服を回収する必要がありました。
でも旦那様は私が上に乗っていて、重く無かったのでしょうか?
幸せそうな寝顔ですけれど。
あ、でもずっと私が猫のままなら、公爵夫人ではなく、ペット枠になりそうですね……。
とりあえず、せっかく手にした情報を無駄にはできません。
ヒイズル国には行きます!!
気晴らしも兼ねて!
顔を洗って朝の身支度をしていたら、旦那様が起きてしまったようです。
「はっ!? エリアナ!? いない!?」
ベッドをぱんぱん叩いて布団をめくったりして私を探しているようです。
「こちらでーす!」
私が衝立の向こうにある洗面台の方からひと声かけたら、
「なんだ! いたな! その声が聞こえるということは人間に戻れたんだな! 良かったな!」
「はい! おかげさまで!」
旦那様が顔を見る為か、駆け寄って来ました。
まだ、身支度の途中なのであまり見られたくないのですが……。
夫婦としては普通なのかもしれませんし、人の姿の私を見て、ほっとされているようです。
ところで朝からお顔を見た旦那様にはおヒゲが微妙に生えています。
そういえば成人男性なのでヒゲくらい生えますね。
私は旦那様に洗面台を明け渡して、衣装室に行ってブラウスとスカートという1人で着れる簡単な服を着ようと思います。
鞄に旅の荷物などを詰め込む作業もありますし。
着替えた後に昨夜ケビン様がくださったお土産を確認しました。
「乾燥したローズヒップ!」
「エリアナ、私も実は遠征のお土産があるぞ」
旦那様が髭剃りを終え、声をかけて来ました。
「まあ、そうなんですか!」
「あそこだ、布をかけた箱が壁の側にあるだろう?」
私は飛びつくようにして、布の下にあった木箱を開けました。
「まあ! これは! 耐熱性のガラスの茶器! ありがとうございます!! とても素敵です!」
「喜んでもらえてよかったよ」
ポットとティーカップがガラスのようです!
色の綺麗なお茶を淹れると映えるでしょうね!
ということで、朝餐の後に私は自らお茶を淹れました。
せっかくいただいたので、お土産を使いたかったのです!
淹れたのは公爵家の庭園にある桃とマンゴーのローズヒップティーです。
ローズヒップの爽やかな酸味とそして豊潤なマンゴーと桃の風味が特徴です。
さらにガラスの容器越しにも見える鮮烈で鮮やかな赤がとても美しいです。
「この美しい茶器は旦那様がお土産にくださいました、茶に使ったローズヒップはケビン様のお土産です」
私がお茶を斈びたいと言っていたのをお二人共が覚えていてくださったことも、とても嬉しいです。
「あら、なんて美しい赤! そして……美味しいわね、初夏の朝にピッタリだわ」
「酸味がさっぱりさせてくれるな、朝から揚げ物を食べすぎたからちょうどいい」
そう言えば、お義父様は朝から唐揚げを食べておられましたね。
私のお弁当の料理が気に入ってまたシェフに作らせたようでした。
旦那様やケビン様も朝から唐揚げを奪い合うように食べておられました。
父上だけ先にエリアナの料理を食べたなんてずるいと言いながら……。
でも私はレシピを出しただけで揚げたのは料理人ですよ……。
「へー、こんな味だったのか、ローズヒップって」
「ローズヒップはビタミンが豊富なのでこれからの船旅にピッタリです。
船上では新鮮な野菜やくだものが手に入りにくいので。ロビン様も素敵なお土産を、ありがとうございました」
「へー。氷結洞窟の比較的近くの村で売っててさ、肌にいいから女性に人気とか村人におすすめされたから買ったけど、そんな風も役に立つならよかったよ」
「ええ、たしかにお肌にもいいはずです、何しろビタミンですし、あ、マンゴーと桃は厨房にあったものを使いました」
「マンゴーは皇家からいただいたものよ」
お義母様がサラリと言われた言葉に納得しました。
「そうだったのですね! なぜ南国の果物がここの厨房にあるのかと思ったら」
皇室は各地から色んな貢物が届きますからね。
おすそ分けをいただいたのかもしれません。
「皇室のためにも公爵家は魔物退治をせっせとしているからな、もちろん現地で被害に遭ってる武力のない平民を救うのが一番大事だからだが」
お義父様の言葉に皆が頷きます。
力ある者が力なき者を守る。
そのために旦那様が度々出征されるんですよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます