第25話 VSミドリガメ その③

「はぁ、はぁ」

『クルル!』


 神崎さんは息を切らし、ユニコーンの体にはちらほらと傷が見え始めた。


『ピヨ!』


 ヒヨコを移転術で、亀の甲羅の上に移動させる。


「ミドリガメ!」


 発光させようとした瞬間、亀の周りに魔法による水が生成され、その水によってヒヨコが流されてしまう。

『クル!』


 そして、ユニコーンの突進はバリアで防がれてしまった。


 通じない、命中した攻撃は一度だけで、それ以外の攻撃は全てが通用していない……!


「どうした、さっきまでの威勢はどこに消えた?」

『ミドリガメ〜』


 疲弊している僕たちに対し、皇さんは息一つ乱していない。

 このままじゃ確実に負けてしまう、僕たちにはやらなきゃいけないことがあるっていうのに……!


「……あのバリアは、精密な魔力操作が要求されているはず、皇さんと召喚獣を引き離せれば、バリアが解けるかもしれませんわ。けれど……」


 あの鉄壁の守り、移動させることなん不可能だ。

 何かの間違いで、皇さん自身が瞬間移動術でも使わない限りは……。


 …………いや、できるかもしれない。


 一つの方法が頭に浮かんだ。

 成功する可能性は無いに等しいかもしれない、でも、不可能とも言い切れない。


「神崎さん、10秒後に皇さんと亀を引き離すから、タイミングを合わせてほしい」

「……何か作戦がありますの?」

「作戦ってほどでもないんだけど、僕の頭じゃこれしか思いつかなかったんだ」

「……分かりましたわ、冬至君が信じたあなたを信じます」


 そう言うと、自身の近くにユニコーンを移動させ、魔力を貯め始めた。


 僕は目を閉じ、精神を集中させる。

 真っ暗な視界の中に、流れが見えた。

 黄色い波の流れ、魔力が流れが。

 基本的に、どんな場所にも空気のように魔力は充満している。

 その魔力を扱うことのできる召喚獣も存在するらしいけど、その魔力量は微々たるもので、かき集めたところで、魔法を発動する魔力の足しぐらいにしかならない。

 そして、その魔力の流れを押し返す、緑の魔力の流れも見える。

 これは、ミドリガメの魔力だ。


 ………捉えた!


「……なっ!」


 思わず、驚きの声をあげる皇さん。

 それもそのはず、突然目の前から、自身の召喚獣が消えたのだから。


『カ、カメ?』


 そして、ミドリガメは僕たちの目の前まで移動している。


「神崎さん!」

「ええ!」

『クルル!!』


 ユニコーンの周囲に氷柱が生成され、その氷柱が亀に向けて一斉発射される。


『ミドリガメ〜!』


 亀に全弾命中し、勢いよく皇さんの後方の壁に激突した。


「ミドリガメ、戻れ!」

「させるか! ヒヨコ」

『ピヨッ!』


 瞬間移動術を使おうとする皇さんに向け、僕は思いっきりヒヨコを投げつけた。


「くっ!」


 ヒヨコが顔に命中し、耐性を崩す皇さん。


「神崎さん、今のうちに!」

「勇気さん、見直しましたわ! ユニコーン!」


 ユニコーンは頭を30度下げ、額に生えている角を真っ直ぐ突き立てる。

 そして、亀を向けて、全速力で走り出す。


『クルルル!』


 ユニコーン全力の突進が、亀に命中した。



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