第35話 ラブレター

上級生枠として、自然教室に参加することが決定したあと、僕と冬至は教室に戻るため、渡り廊下を歩いていた。


『あのね、きいてよ、かいぜる』

『ピヨ』

『あのおんな、わたしのとうじにいやらしいからだをおしつけるの、ほんとうにゆるせないわ! わたしのとうじに、いやらしいおっぱいを!」

『ピヨ』

『ね、かいぜるもそうおもうわよね?』

『ピヨ!』


 冬至の頭上では、冬至の召喚獣である妖精女王のアリスと、僕の召喚獣、マジでただのヒヨコが談義している。

 かいぜる……? かいぜるってたしか、ヒヨコの本名だった気がするけど……。まぁ、覚えていても何の得にもならないからどうでもいいか。

 教室に入ると、好実がバタバタと僕と冬至の元に駆け寄ってきた。


「どうだった?」

「自然教室に参加させられることになっちゃった……。でも、なんとか冬至は道連れにできたよ」

「ああ、生きて帰れると思わないことだ」


 バカめ、僕が、お前だけ楽な道を進ませるわけがないのに。


「……ごめんね、勇気、冬至、私の罪を被ったせいで、こんなことになって……、本当は、私が奉仕活動をするべきなのに」


 罪を被る、っていうのは、好実が、世界中に記憶改竄の魔法を使ったことを、僕たちが揉み消したことを言っているのだろう。

 好実がみんなの記憶を元に戻した後、僕たちは話し合い、なんとか好実を助けられないかと、世界的にも発言力、権限がある学園長の元に行った。

 その結果、相川好と可井日向という、二人の仮装の人間に罪をなすりつけることによって、好実は学園に残る事ができた。


「大丈夫だよ好実、僕、子供には良く好かれるからね」

「ほぼ同年代みたいなものだからな」

「冬至、それはどういう意味だい?」


 頭の良さが、年下である中学生と同じって意味じゃないよね?


「……すまん、流石に言いすぎたな」

「うんうん、分かればいいんだよ」

「失礼だよな、中学生に対して」

「上等だ! その喧嘩の特売セール、僕が全部買ってやる」


 もう許さん! こいつ、地獄の底に叩き落としてやる!



「ふぁぁぁあ」


 眠い目を擦りなら、僕は通学路をあるいていた。


「こら、襟がまがってるわよ」


 隣を歩いている好実が、襟を直してくれる。今朝少し寝坊しちゃって、急いで制服を着たから気づかなかった。


「ありがとう、好実」

「………うん」


 どうしたんだろう、急に顔を真っ赤にさせて。

 5分ほど歩くと、学校の下駄箱についた。

 上履きに履き替え、階段の前で好実を待っていると、好実は、手に持った封筒に視線を落としながら僕の元まで歩いてきた。


「どうしたのそれ?」

「……私の下駄箱に入ってた」


 そして、その封筒の留め具には、ハートのシールが貼られていた。


「こ、好実、それって、もしかして……!」


 すると、好実は、少し頬を染めながら、口を開いた。

「多分、ラブレター」

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