第11話 試合の結果
可井君との模擬戦闘の翌日。
僕は、通学路で、信じがたい事実を悪友から知らされていた。
「……冗談だよね?」
「冗談じゃない」
僕のその事実を受け入れることができず、ただ立ち尽くしていた。
「嘘でもいいから冗談って言ってよ!」
「冗談だ」
「え、本当?」
「嘘だ」
「てきとうな事を言うな! 恥を知れ!」
バカな事を言ってきた冬至を叱責する。世の中には、ついて良い嘘とついてはいけない嘘がある。
「……いい加減諦めろ。いいか、勇気、お前は、どんな理由があれ、学年ランク一位の可井日向とその召喚獣を倒したんだ。 そして、その試合は、立会人として先行がいた。学校公式の試合だ」
そう、僕は昨日、可井日向との公式戦。
「……俺たちが通っている、公立召喚獣育成学校は、日本で唯一、召喚士の育成を行っている学校。現在、日本にいる召喚士の九割はこの学校の卒業生だ」
……残り一割は、外国から日本に移動してきた召喚士達が該当する。
つまり、日本で誕生した召喚士達は、ほぼ全て召喚士育成学校の卒業生なんだ、と、授業で聞いたことがある。
「そして、その学校の顔である。あの〜、なんだっけ、川崎(かわさき)?」
「可井(かわい)」
「そう、可井を倒したんだ。公式戦でな」
……僕は昨日、結果だけを見れば可井君に勝ってしまっている。
「でも、内容はボロ負けだったんだよ? ほら、ヒヨコを見てみて、恐怖のせいで、今朝からバイブレーションしてるんだよ?」
『ピ、ピヨピヨピヨピヨ』
「体に恐怖が刻み込まれてるな……」
あの激戦の後だから仕方ないけど、電話が鳴ったのかと勘違いしてしまいそうだから、あとでマッサージでもして落ち着かせよう。
「こんなの、ほぼ負けたようなもんだよ」
実際、僕とヒヨコは、逃げの一手で、攻撃はほぼできていない。
強いていえば、最初に少しだけ攻撃できたけど、まともにダメージを与える事はできなかった。
「だが、結果だけを見れば、間違いなくお前が勝ってる、公式戦にな。そして、ランキングが発表されてからの試合は、ランキングを掛けた勝負になる」
「う、うぅ」
「公式戦では、『勝利した召喚士が、敗北した召喚士より順位が低ければ、順位を交換する』というルールがある」
「き、聞きたくない……」
「つまり、お前、今ランキング1位だぞ」
僕とヒヨコは、最下位から突然最上位になってしまった。
ランキング上位に入れば、数々の恩恵を受けることができる。
例えば、食券割引、授業選択優先。そして、企業からのスカウト。
もちろん、誰もがなれるわけではなく、優秀な召喚獣と、正確な判断力をもつ召喚士のペアじゃなければ、達成することはできない。
ある者は尊敬を、またある人は嫉妬の目を向ける。
本来であれば、僕が成れることはまずない。ないんだけど……。
「……たしか、上位者って、週に一回は試合を受けなきゃならないんだっけ?」
「そうだ、申し込んできた奴の中から、1人選んで、ランキング戦を行わないとならない」
冬至の話により、ますます気分が重くなる。
もちろん、金欠気味な僕にとっては、若干割引はすごくありがたいけど、その恩恵も長くて一週間だ。
「間違いなく、強い人から申し出がたくさんあるよね……」
「間違いなくな」
僕以外の召喚士から見てみれば、今の僕は格好の的にすぎない。
なんせ、ヒヨコに勝つだけでランキング一位の座を貰えるんだ。
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