第12話 違和感 その①



「おはようございまーす」


 ガラガラガラと我が教室のドアをあけ、教卓の目の前の席(すぐ眠るため)に座る。

 てっきり、クラスメイトから声をかけられると思ったが、意外と何ともない。

まぁ、昨日あれだけ安藤さんから体裁を受けたし、憐れんでくれているんだろう。

 しばらく待つと、三十代にしては老け顔の担任、上垣(かみがき)先生が、朝のホームルームを始めだした。、


「……以上です。何か質問がある人はいますか?」

「はい」

「はい、高橋さん」

「ランキングの、上位者待遇について教えて欲しいです」

「上位者待遇? どうしてそんな事を?」


 質問に質問でかえされた。

 どうしてって、そりゃ。


「一番ですから」

「一番? ……あぁ、そうですね、一番ですからね(笑)」


「すみません先生、今笑いませんでしたか?」

「あっはっは、笑ってないですよ、あっはっは」


 イラっとしたが、僕も大人なので耐えられた。




 見る休み、冬至は親指と人差し指を顎に当て、深く考え込んでいた。


「どうしたの、冬至?」

「いや、大丈夫だ、多分気のせいだからな」

「そっか、じゃぁ、食堂にいこうか」


 我が学校の食堂は、ものすんごく広い。

 小学校や中学校の、体育館以上の広さを誇っている。

 注文は食券方式で、カレー等の定番メニューから、フォアグラ丼という、誰向けか分からないようなメニューまで、種類は100以上に及ぶ。

 召喚士の社会貢献度を考えると、これぐらいは当たり前というのが学校の方針らしいけど、高校の枠を超えていると常々思わせられる。


「あ、そういえば、カルビ丼奢ってもらえるんだっけ? あ、じゃあ、この前の賭けでつけておいたカルビ定食と相殺ってことでいい?」

「……」


 横を見ると、また親指を顎に当て、考え込んでいた。


「冬至?」

「ん、ああ、すまん、用事ができた。 先に食っててくれ」


 そう言うと、足早に食堂を出て行った。

 ……しまった、食券買ってもらうべきだった。

 でも、待遇があるから、通常の値段の半額で食べられる。ここだけに関しては一位になって良かったと思う。


「ごめんね、まだ連絡をもらってないから、割引することはできないのよ」


 フォアグラ丼の食券を手に、残酷な事実が言い渡された。

 本来なら、半額分のキャッシュバックが行われるはずだったけど、ただただ財布を軽くしただけになってしまった。

 これにより、僕の明日以降のお昼ご飯は、惣菜パン一個になってしまった。



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