第24話 VSミドリガメ その②

二発、三発とユニコーンは攻撃を放ったが、その全てがミドリガメに届くことはなかった。

 ……最強の召喚士とよばれるだけはある、神崎さんとユニコーンの攻撃をもろともしていない。


「勇気さん、何か気づいたことは⁉︎」


 戦闘を続けながら、横目にそう聞いてきた。

 わかったこと? えっと……。

 あっ。


「あの亀、種類はミシシッピアカミミガメだよ」

「……いえ、あの、そうじゃなくて、なにか、突破口は見つかりませんでしたか?」

「突破口? あ、玄関口ことだね、一階の南側にあるはずだよ」


 しかし、なぜ今そんなことを聞いてくるのだろう?


「……なるほど、彼が『勇気か? そうだな、一言で表すなら馬鹿だ』とおっしゃっていた意味が分かりましたわ」

「まって、その紹介を仕方をしたのはいったいだれ?」


 一万歩譲って、僕が馬鹿だとすれば、あいつは天性のアホだということになる。


「ですが、おかげで冷静さを取り戻すことができましたわ。勇気さん、可井日向との模擬戦闘時に使用していた、あの瞬間移動術は今使えますか?」


「う、うん、多分使えるよ」


「勇気さん、皇さんの召喚獣は、球状のバリアを展開しています。側面からの攻撃はすべて防御されてしまいますわ。瞬間移動術を活用して、バリア内に侵入して私が攻撃する隙を作ってくださいまし」


「ごめんなさい、もっと分かりやすくお願いします!」

「下から攻撃ですわ」

「了解、ヒヨコ!」


『ピヨッ!』


 頭の上で遊んでいたヒヨコを瞬間移動術で亀の頭の下の、バリア内に移動させる。

 そして、屋敷に侵入した時に使った、ただ光るだけの魔法を発動する。


『ピヨ!』


 だんだんと光量が増え、目が開けられないほどになる。


「な、なんだこの光は! ミドリガメ、バリアを張りなおせ!」


 ヒヨコと亀の間に、バリアが貼られる…… その瞬間。

 

 亀が宙を舞った。


 そして、右側の壁に激突する。


「なっ……!」

『ミドリガメ〜』


 亀が鎮座していた位置では、ユニコーンが凛々しい立ち姿を見せていた。


「……バリアを展開する寸前、バリア張り替え時に、一瞬、バリアを消す必要がありますわ、それが、無敵の防御の突破口です」


 その言葉を聞きた皇さんは、驚いた表情を見せた。


「……さすが、神崎さんの娘さんだな、冷静で優秀な判断能力だ。そして……」


皇さんは僕の方向に振り向く。


「今使った技は、瞬間移動術の応用、移転術だね。瞬間移動術は、魔力の操作が難しく、より精密に魔力操作ができる、自分の周囲にしか召喚獣を呼ぶことができない。それに反し、瞬間移転術は、自分の好きな位置に召喚獣を移転できる」


 可井くんも、たしか『瞬間移動術の応用』って言っていた。僕が使っていた技は、瞬間移動術じゃなかったのか。


「瞬間移転術は、より高度な魔力操作が必要ですわ、自分の周囲だけではなく、広い範囲で魔力を操作する必要がありますから」


 皇さんは、今まで感じたことのない敵意を視線とともに向けてくる。


「……学生で使う人間は初めて見た。すばらしい魔力操作だ。だが、君の召喚獣、攻撃はあまり強くないな?」


 あまり強くないだって、な、なんて失礼な奴なんだ!


「鳩には勝てますよ!」

『ピヨッ!』

「勇気さん、それはあとで聞きますから、今は戦いに集中をしましょう!」


 怒りにまかせヒヨコを特攻させようとした僕を、神崎さんが静止した。


「みくびっていたよ、正直、神崎さんの娘に警戒していれば、負けることはないと考えていたが……。訂正しよう、君が僕の勝ちを脅かす存在だと」


 皇さんは、瞬間移動術で自分の真横に亀を移動させる。


「かかってこい、君たちの攻撃、その全てを防御して見せよう」


 彼の目は、自信に満ち溢れていた。

 

 

 

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