第29話 再戦
「くっ、ヒヨコ、避けろ!」
グリフォンの猛攻を、瞬間移転術を活用して、なんとか耐え凌いでいるけど、いずれ限界が来てしまう。
前回の試合は、この猛攻に耐えられなかった。
このままじゃ、前回の二の舞になってしまう……!
『ピヨッッ!』
ヒヨコは頑張っているけど、そもそも、ダメージを与えられる攻撃手段がない。
「グリフォン!」
『クアァッ!』
グリフォンの周囲で生成される風の刃を、小さい体を生かしちょこまかと逃げるヒヨコ。
くそう、考えろ、どうやったら勝てる……!
攻撃力は養鶏場にいるヒヨコと同等、できることをいえば発光ぐらいだ。
……こうなったら、仕方がない、あの手を使うか。
「ヒヨコ、集合!」
『ピヨっ』
ピヨピヨと鳴きながら、僕の前まで走ってくるヒヨコ。
「よく聞くんだ、今のヒヨコじゃ、どう足掻いても、グリフォンに勝つことはできない」
『ピヨ』
「だから、今成長するんだ」
『ピヨ…… ピヨ⁉︎』
はっ! と何かとんでもないことに気づいた表情を見せるヒヨコ。
気づいたか、僕の完全なる作戦に。
「進化だ、レボシューションしろヒヨコ、今すぐに。さん、はい!」
『ピヨ!』
「……進化しても鶏になるだけじゃないんですか?」
「ヒヨコ、作戦は中止! たぶん弱くなる!」
ただでさえギリギリで攻撃を避けているのに、体がでかくてうるさい鶏なんかに進化して仕舞えば、ただの美味しい鶏肉そのものになってしまう。
だけど、ヒヨコの攻撃は、全く通用しない、それは前回実証済みだ。
だったら、ヒヨコの攻撃じゃなければいいんだ……!
目を閉じて、精神を集中する。
そして、グリフォンが風の刃を発射した瞬間、瞬間移転術を使……。
なっ! どうして、使えない!
「今、グリフォンに瞬間移転術を使おうとしましたね?」
「ど、どうかな?」
苦し紛れのポーカーフェイスをする僕。
「表情で分かります、おそらく、グリフォンの風魔法を瞬間移転術でグリフォン自身に当てようとしたのでしょうけど、無駄です。使うことが分かっていれば、簡単に抵抗できます」
さっき、ミドリガメに瞬間移転術を使用できたのは、神崎さんに注意引いていてくれたからだったのか。
あの術が効かない以上、グリフォンの攻撃範囲にグリフォン自身を入れるのは難しい……!
「さ、流石だね、僕の思考を読むなんて」
「……思考の読みやすい、単純細胞ですからね」
「……もしかしてバカにしてる?」
「それぐらい、自分で考えてください、グリフォン!」
グリフォンは、ばさっと翼を広げ、宙に舞い上がった。
そして、その時の可井君の頬を緩めた表情に、なぜか僕は違和感を覚えた。
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