第30話 決着
おでこに滲んできた汗を右手で拭う。
瞬間移動術は、召喚獣の魔力を使わない代わりに、召喚士自らの魔力を使用する。
だから、魔力量が少ないヒヨコでも多用できるけど、僕の魔力がガッツリもっていかれ、だいぶ疲労感が溜まってきている。
「だけど……!」
魔法の発動速度、移動速度。
グリフォンの動きが確実に悪くなっている。
見えてきた、グリフォンの魔力切れが。
「はぁはぁ、ボクは…… 私は、勝つしかないのに……!」
………?
また、僕は違和感を覚えた。可井君とは最近知り合ったばかりなのに、昔から知っているような……。
頭をブンブンとふり、余計な思考を振り落とす。
今集中しなければならないのは戦闘だ、僕だって負けられない戦いなんだ。
ついにその時はきた。
『ク、クァ……』
空を舞っていたグリフォンが、地に足をつけた。
体にのしかかる重力を重そうにしているその姿から、魔力の枯渇が伝わってくる。
「私は、みんなを騙す道を選んだんだから、こんな所で躓いてちゃ、だめなのに……!」
「………」
「ママの願いを、私は絶対に叶える!」
はぁはぁ、と息を吐きながら、顔を強張りながら、そう訴えかけてくる。
「グリフォン! おねがい、最後の力を振り絞って!」
『クルァ!!』
グリフォンが、ゆっくりと体を起こした。
放ってくる、最後の攻撃を……!
グリフォンが大きく翼を広げ、その周囲に風の刃を生成する。
瞬間、僕はヒヨコをグリフォンの頭上に向けておもいっきりなげた。
『クアァ?』
『ピヨッ!』
そして、光の魔法を使用した。
凄まじい光量に、グリフォンは思わず、前足を上げ、たじろいだ。
「今、しか、ない!」
『ク、クア⁉︎』
グリフォンは、目を開けた瞬間、また驚きの声をあげた。
すぐ目の前にいる、僕の姿を目視して。
「ぐ、うぉぉおお!!」
グリフォンの前足と腹部分背中で支えるような形で持ち、力を込める。
グリフォンは風魔法で攻撃してくるが、無視する。
こんな痛み、彼に…… 彼女に比べたら、どうってことない。
「う、っららぁぁああ!!!」
『ク、クァ⁉︎』
僕は、2メートルにもなるグリフォンを、背負い投げした。
グリフォンは、頭から、木の板が張り巡らされている床に激突した。
「はぁ、はぁ、はぁ」
僕の体はボロボロだ、服は所々避けており、血も滲んでいる。もうまともに体を動かすこともできないだろう。
だけど、決着はついた。
「僕たちの勝ちだ」
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