第39話 中等部生徒会長


『がんばれぇー!!』

『いけぇ、やれぇー!』

『中学生の力を見せてやれ!』


 その会場は、怒号のような応援で溢れていた。

 そして、中央で相対する、二つの召喚獣は、一歩でも動けば攻撃する、そんな雰囲気を醸し出している。

 そう、醸し出しているだけなんだ。


「……どうしてこうなったんだろう」


 ヒヨコが、こんな強そうな召喚獣に勝てるわけがない。


『ピヨっ!』


 どうして、こんなにも勇ましい表情ができるのだろう。

 昨日、公園にいる鳩に勝てたからって、調子に乗りすぎではないだろうか。


「さぁ、始めましょうか、先輩」


 その少女は、薄桃色の髪を風で靡かせながら、ニコリと笑った。




 自然教室に着き、大食堂で僕、冬至、好実、神崎さんと昼ごはんを取っていると、生徒指導担当の上垣先生が、『自然教室のしおり』を手に、僕たちの前にやってきた。


「食事中すまない、お前たち、これからの予定を覚えているか?」

「覚えてません」

「興味がありません」

「高橋、斎藤、お前たちはあとで私の部屋にくるように。……神崎、わかるか?」

「はい、この後、昼食を取り終わったら、レクリエーション、召喚士による職能講和、水辺学習、夕食、天体観測ですわ」

「そうだ、そして、お前たちには、レクリエーションで仕事をしてもらう」 


 レクリエーションか、僕たちの代は、たしか……。


「召喚獣と触れ合う、みたいな内容でしたっけ?」


 僕がそういうと、上垣先生は頷いた。


「そうだ、召喚士見習いの中学生たちに、実際に召喚獣と触れ合ってもらう。だからお前たち、その時は召喚獣を触れさせてやって欲しい」




『全生徒の皆さん、今回のレクリエーションでは、召喚獣と……』 


 体育館で、中等部の生徒たちと、向き合う形で、現在レクリエーションの説明を受けている。

 横にいる好実から、クイッ、の袖を引っ張られた。


「どうしたの?」

「……この中に、私に手紙を送った人がいるのよね」


 そうだった、この中に、僕の事が好きかも知らない人がいるかもいるんだ。


「好実も不便だよね、好きでもない男の恋敵にされるなんて」


 僕と好実は恋人って訳でもないのに……。

 いつも一緒に行動しているから、勘違いさせてしまったのだろう。

「………あんた、本当にそんな風に思ってるのね」

「? 今何か言った?」

 プイッ、と頭を振る好実、どうしたんだろう、急に不機嫌になって。


『えー、では、次に中等部生徒会長の挨拶です』


 司会役の生徒が、そういうと、トコトコと、一人の少女が歩いてくる。

 身長は150センチ程、髪は桃色で、髪を後ろで纏めている、旅館の女将さんのような和風な髪型をしており、大人っぽさがある。

 そうて、何より……。


「……勝った」


 隣にいる好実が、僕に聞こえるか聞こえないか程度の声で、そう呟いた。

 そう、ぺったんこだ。

 好実に負けないぐらいの、断崖絶壁だった。

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