第41話 水辺学習
『……あれが、ランキング一位の戦闘か』
『おい、さっき試合ちゃんと見てたか?』
『見てたけど、速すぎてよくわからなかったわ』
奇遇だね、僕もよく分からなかったよ。
「本当に、お前は期待を裏切らないな」
悪友の冬至が、座り込んで落ち込んでいる僕にそう言ってくる。
「……それは褒めていると受け取っていいの?」
「めっちゃバカにしてるぞ」
「このやろう!」
くそう! 元話といえば、こいつが卑怯な手を使って僕を戦わせたっていうのに……!
新妻さんには負ける、冬至にはバカにされる。ヒヨコは星になってしまう。
あれもこれも全部、この不細工のせいだ……!
「くたばれ! そしめ死んで詫びろ!」
「……! 上等だ、魚の餌にしてやる!」
川のほとりで取っ組み合う僕たち。
現在、レクリエーションが終わり、次の行事である水辺学習をするため川に集合している。
服装は水着で、僕はパーカータイプ、冬至は海パンを履いている。
「また喧嘩ですの? 全く、本当に仲が良いのですね」
後方から、お嬢様口調の声がかけられた。
「何言ってやがる、どこをどう見たら仲良く……」
冬至は、神崎さんの姿を見た途端言葉に詰まった。
「? どうしたのですか?」
その恵まれた体型に、包みきれていない水着。
胸は溢れそうになっているけど、腕や足はすらっとしている。
出るところは出ていて、出ていないところは出ていない。
まるでモデルさんみたいなスタイルを前に、冬至は言葉を失ってしまった。
そして、言葉を失ったのは冬至だけではない。
周りの中学生たちも、神崎さんの姿に見惚れてしまったのか、ただじっと、目線を固定して動かない。
「……?」
騒がしかった水辺が急に静かになったためか、周りをキョロキョロと見渡す神崎さん。
「あ、なるほど……」
納得したように頷く神崎さん。
そして、あろうことか冬至に近寄り、冬至の腕にキュっと自分の腕を絡ませた。
「てめ、何しやがる……!」
「なぜ照れているのですか? いつもしていることじゃありませんか」
冬至が恥ずかしがる姿を見せると、さらにの体に冬至の腕を埋もれさせる神崎さん。
「は、離れろ、色々当たっているだろうが……!」
「ふふふ、嫌です♪」
さらに密着する二人。
……羨ましい、そして冬至の幸福がどうしても許せない。
「んー、どこかなどこかなーっと」
「勇気、なにをさがしてるの?」
ガサゴソと川のほとりであるものを探していると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「後ろから人をさせるほどの鋭利な武器はないかって……」
後ろを振り向くと、冬至と同じように言葉を失ってしまった。
その恵まれてない体型に、完全に包みきれている水着。
胸は完全に収まっているから、当たり前のように腕や足もすらっとしている。
出るところは出ていなくて、出てないところも出ていない。
まるで中学生モデルみたいなスタイルを前に、僕は言葉を失ってしまった。
「どうしたのよ、急に黙っちゃって?」
「いや、やっぱり、好実は期待を裏切らなくべら!」
「それはどういう意味かしら?」
ハンドボールみたいに僕の顔を鷲掴みにする好実、ミチミチと指がめり込む音が聞こえてくる。
「ご、誤解です好実様!」
「へー、先に碧ちゃんの水着をみたのね」
さらに力を込める好実、だめだ、これ以上は生命にかかわる⁉︎
「好実の水着が素敵だったから、言葉に詰まっただけだよ!」
そう、僕は神崎さんとは違う、好実らしい可愛い姿に見惚れてしまったんだ。
「そ、そうなら早く言いなさいよ、バカ」
鷲掴みされていた顔から手が離される。あ、あぶない、本当に天に召されるところだった……!
「そ、その、ちなみになんだけど、どの辺が良かったの?」
もじもじしながらそう聞いてくる好実。
そんなもの、一つに決まっている。
「中学生モデルみたいなスレンダーボディいいいいいい!」
「勇気、水泳をしましょうね。……息継ぎなしで、一時間みっちりと」
「し、死んでしまいます好実様! ご慈悲を、どうかご慈悲をぉおお!」
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