第22話 最強の召喚士
「ほう、三人で挑んでくると思ったが、一人は玄関に行ったか、なかなか頭が回るじゃないか」
その人物は、広場のど真ん中に立っていた。
身長は180センチほどで、風も吹いていないなのに、なぜか髪がさらさらと宙を舞っている。
そして、その立ち姿からは、自信が満ち溢れいる。
……見たことがある気がする。
たしか、学校のどこかで……。
「召喚士の卵たちか、せっかく将来が約束されているのに、もったいないことを……」
右手で顔を覆い、はぁ、とため息を吐くイケメン。
「……久しぶりですわね」
神崎さんが一歩前に出る。
「君はたしか……、神崎さんの娘か、お父さんにはお世話になってるよ」
「ええ、父からもそう聞いてますわ」
神崎さんのお父さんって、たしか国家軍の指揮官? か何かだったはず、だとすると、軍に近い人物なのだろうか。
「いいだろう、君のお父様に免じて、質問に答えてあげよう」
「この屋敷にいる召喚獣が、国家規模の記憶操作をしています、その事実を認知していますか?」
すると、イケメンは神妙な面もちになり、神崎さんを睨んだ。
「……何を馬鹿なことを言っている。我が皇すめらぎ家が、そんな犯罪に手を染めるわけがないだろう。第一、そんな魔法の発動なんて、僕が許すわけがない」
……なるほど、つまり
「……間違いなく、彼も記憶を操作されていますわ、学園長様が抵抗できないほどの魔法です、当たり前と言えば当たり前なのでしょう」
どうして身内にも記憶操作を? と思ったけど、この性格だから、邪魔になると判断されたのだろう。
「……たしか、神崎碧だったか、こんなことをして、お父さんが悲しむぞ?」
「この状況で、ただ足踏みしているほうが、お父様に叱られてしまいますわ」
すると、イケメンはニヤリと笑みを浮かべた。
「ふふ、お父さんにそっくりだな、その頑固な所、いいだろう、この僕が相手をしてあげよう」
イケメンのすぐ横に、それは現れた。
体は鎧のようなもので覆われており、その鎧から、ちょこんと頭を出している。
見たことのある形、っていうか見たことある生物。
……カメ?
たしか、今問題になっている、外来種のミシシッピアカミミガメ、通常ミドリガメにすごく似ている。
「……君,今『え、亀?』と思っただろう?」
僕を指差しながらそう聞かれた。
「でっかいカメだなって思いました。」
なので正直に答えた。
「違う! 断じて亀じゃない、亀に見えるかもしれないが、断じて違う! 見てみろ、この麗しき鋼のボディ!」
「甲羅じゃないんですか?」
どこからどう見てもミドリガメなんだけど……。
「冷静に考えてみろ、この麗しい僕に、亀なんて似合わないだろう?」
「なんて名前をつけたんですか?」
「ミドリガメだ」
「ミドリガメじゃないですか」
もしかしたらこの人、冬至や神崎さんと同じように、どこか抜けているのかもしれない。
『ミドリガメ〜』
「これはミドリガメの鳴き声だ」
「やっぱりミドリガメですよね⁉︎」
くそっ、さっきまでのキザな雰囲気はどこに消えたんだ!
「彼は馬鹿ですが、実力は確かですわ、教科書で見た覚えがあるでしょう?」
亀とイケメン、そして軍に繋がりがある……。
思い出した、この馬鹿、たしか……!
「彼の名前は皇翔介すめらぎしょうすけ、現代最強の召喚士ですわ」
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