第3話

 よし、許可は貰った! 美味しく調理してあげる!!

 腰を抜かしている探索者から許可をもらったので、モンスターへと向き直る。


『ブッ――ブモオオオオォォーーーーッ!!』


 すると片割れを切られたことをようやく理解した番のミノタウロスが怒りに満ちた声を上げながら向かってきた。

 ドスドスと重みのある足音を鳴らしながら近づいてくるミノタウロスの姿は圧巻。


「ひ――ひぃぃっ!?」

「ステーキ、しゃぶしゃぶ、すき焼き……いや、調味料は塩だから作るのは限られるか。残念」


 背後から聞こえる情けない声を無視しつつ、ミノタウロス以外にも戦闘中の隙を見て石化ブレスを放とうとしていた射程内に居たコカトリスに向けて手に持ったほうちょうを投げつける。


『ゴゲ――ッ』


 投げつけたほうちょうは石化ブレスを吐き出す直前だったコカトリスの喉に命中し、その感触がほうちょうの柄頭に繋がった紐に感触が伝わると同時にミノタウロスに駆け出す。


『モ“ッ!?』


 自分に向かって駆けてくるという考えは無かったようで、近づいてくるボクに戸惑った声をミノタウロスが漏らしているけれどそれを無視して素早く通り抜ける。

 通り抜けたボクをミノタウロスが視界に入れようと振り向こうとするけれど、それよりも先にクイッとほうちょうと繋がった紐を引く。

 するとコカトリスの喉に突き刺さったほうちょうはスポッと抜けて、手元に戻る際にスッとミノタウロスの足を軽く斬りつける。

 すると振り返ろうとしてたミノタウロスは突然足をもつらせて転び、驚いた声をあげつつ立ち上がろうとする。


『モッ!? モォ、モォォォォッ!?』

「鶏も早く取らないといけないから、じゃあね」


 グッバイミノタウロス。そしてこんにちわ牛肉。

 そう思いながらほうちょうを振るい、首を切り落とすと道具袋に入れながらコカトリスを回収しに駆ける。

 ちなみに間違っても刀身には触れないようにする。――だって、そこにはコカトリスの喉元に溜まっていた石化成分がある液体が付着しているから。

 逆手にほうちょうを構えながら駆け、絶命したコカトリスを回収。


「鶏肉ゲット。続いて他の肉もいこうか」


 言いながら駆け出し、手早くほうちょうを振るって他のコカトリスの首を切り落としていく。

 コカトリスの首はミノタウロスよりも細い首だから、軽くほうちょうを振るだけで簡単に首が切り落とせるから嬉しい。

 けど、道具袋の中には豚肉は1匹だけだからまだ欲しい。

 そう思いながらオークに視線を向けると、何かを察したのかオークたちはボクから距離を取ろうとしていた。


『『ブギッ、ブヒィッ!』』

『『ブギャ、ブヒャギャブッ!!』』

「何言ってるかわからないけど、興味はない」


 互いが互いを押しだそうとしているオークたちだったけど、別に問題はない。

 塩と豚。……塩と胡椒を揉み込んだ塊肉をじっくりと炙り焼きにするのも良いかも知れない。

 オークの首が舞う。――けど煮込みも作りたい。

 オークの首が舞う。――小麦もあったっけ? あったらベシャメルソースを作ってシチューもいいな。

 オークリーダーの首が舞う。――とりあえず、怪我人の様子も見ておいた方がいいかも?


「――っと、豚肉の処理は完了してたか」

『『モ――モォォォォォォォ~~~~っ!?!?』』

「逃げるな。――【ロックバレット】」


 考えごとをしながら行動していたからか、何時の間にかモンスターハウス内に居たオークの首をすべて落としていたことに気づく。

 それを回収回収。

 麺類をすすっているみたいに道具袋がオークとコカトリス豚と鶏を収めていると、一方的な蹂躙に恐怖していたのか動けずにいた空気と化していたもう片方のミノタウロスの番が急いでモンスターハウス内から逃げだした。

 だけど逃がすつもりなんてまったく無い。カメ吉もいっぱい食べるからこれだけなんて問題はない。

 そう思いながら後ろを向くミノタウロスたちに向けて手をかざし、魔法名を唱える。

 すると体内から魔力が排出され、手元に拳大の岩が現れると磁石で弾かれるようにそれらの後頭部目がけて撃ち出された。


 ――グシャ。

 ――グシャ。


 撃ち出されたロックバレットはちゃんとミノタウロスの後頭部に命中し、頭が潰れて勢いに任せたままミノタウロスの胴体はズササと地面をこすりながら倒れた。

 とりあえず……、モンスターハウス内に残ったモンスターはない。気配でもわかるけど周囲を見ながら、倒れた牛肉を回収しに行く。

 ついでにハウス内に牛・豚・鶏以外の素材も探して……あ、上に出てる頭からして玉ねぎ発見。人参もある。

 キュウリにナス、長ピーマン、枝豆、ほうれん草や小松菜の葉野菜、トマトといった地上の作物……コショウ発見!!

 久しぶりの塩以外の調味料に思わず小躍りしたくなる!!


「あ、あの……」

「そういえば居たんだった。……無事?」

「は、はい、無事です。けど……仲間たちが」


 小躍りしなくて良かった。突然話しかけられてちょっと驚いたけど、そう言えば先に戦ってた人たちが居たんだった。

 無事か聞くとボクに獲物を譲ってくれた男性は暗い顔をしながらハウス内を見る。

 釣られて見ると彼の仲間たちだと思う人物が壁に叩きつけられて血塗れだったり、コカトリスのブレスを浴びて石になっていたりした。

 このまま放っておいても良いけど、肉を譲ってもらったから……。


「しかたない。ごちそうしようか」

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