第7話 生配信時コメント抜粋回
【配信開始直後】
『はーい、どうも視聴者の皆! チーム<フライングイーグル>によるダンジョン探索配信の時間だぜ!!』
『今日、俺たちは岐阜ダンジョンの下層に来ていまーす!』
『そこで企業依頼として受けたオーク数匹の肉の回収を行うぜ!』
:キター!
:こん!
:ばんわ~~!
動画に映るイケメンというわけではないけれど話術が多彩な数名の男性たちが各々挨拶を行い、今日の配信の説明をしている。
しかし、少ししてドローンに映る彼らの前にミノタウロスが現れ逃走劇が開始された。
:ちょ!? ミノタウロス!?
:しかも番って、最悪だろっ!!
:逃げて逃げて!!
:バカ! そこじゃねぇ!! ああ、何処に向かってるんだよ!?
必死に逃げる彼らを見ながら善良な視聴者たちは必死に逃げるように訴えかけたり、進む道が違うと叫ぶ。しかし、ドローンを見ていない彼らは気づかない。
また、一方で悲惨な目に遭う彼らを嘲笑する視聴者も居た。
:wwwまたバカが死ぬぅ~~wwwwww
:pgrwwwww
:早く血を見せろよ血をよぉ!!www
【モンスターハウス到達時】
:は? モンスターハウス?
:っざけんなよ!? 早く通報しろ!!
:してる! けど、出発の準備をしていますしか言われねぇ!!
:あっ! あぁ、石が! 石がぁぁぁっ!!
:うはwwwモンスターハウスktkr!
:オークの集団にコカトリスの群れ、しかもミノタウロスの別の番! メシウマ!!
:PT全滅生配信だぁぁぁぁぁっ!!
次々に<フライングイーグル>の探索者たちが石化や叩きつけられる様子を見て視聴者たちから悲鳴と狂気のコメントが漏れる。
そして残った最後の探索者が画面に向けて別れの挨拶をしたとき、様々なコメントが流れた……が、画面上に舞ったミノタウロスの首に時は止まった。
:え?
:は?
:あ?
【少女がモンスターを蹂躙する様子】
:誰だあれ!?
:知らん! というか何をしたんだ今!?
:突然ミノタウロスの首が飛んだんですけどぉ!?
:というか助けじゃないってことは下層探索してた探索sy――って装備が凄い初心者なんだけど!?
:は? 何してるんだよ! 邪魔すんなよ!!
:バカが増えたwwwwww
:オークの群れに女が攻めるって、犯してくれって言ってるようなもんじゃねーかwwwwww
:全滅エンド! 全滅エンドが見たいじゃあ!!
突如現れた少女に戸惑う視聴者と、想像以上の地獄が始まることに期待する視聴者。
だがそんな彼らの予想を裏切るかのように少女は短剣を振るい、瞬く間にモンスターを倒していった。
【少女の奇行】
:は? え、ナニコレェ?
:見てわからねーのか? おれも分からん。
:だったら言うなよ!www
:モンスターを吊るして、グルグル回り始めてるけど……何だこれ、食肉加工でもしてる? わけない、よな?
:オレたちが求めてたものとちげーんですけどぉ!
: 解 体 シ ー ン !
:(ただし、モンスターのである)
:しかもドローンの配信モードでモンスターの解体されてる部分は規制がかかってるというwww
吊るし台に吊るされたモンスターたちがぼやけた状態で表示される中、少女が何かを取ったのを視聴者たちは見た。
それに気づいたのはある視聴者だった。
:あ? おいぃ!? 今、あいつ取ったのってコカトリスの石化液溜まった袋じゃ――って、中身を血が入った鍋に入れたー!?
:コカトリスの石化液? それを鍋に?
:これ、通報した方がよくね?!
:い、いや、分かんねぇぞ?
:モンスターによる虐殺じゃなくて、少女による殺人ショーだった件?
:うはっ、モンスターによる殺害じゃなくて、人殺し案件ktkrwww
:(掲示板に)通報しますたwwwwww
少女が行っている奇行に戸惑いを見せる視聴者、これから起きるであろう殺害に期待に胸を膨らませる視聴者。
そこへさらにアンチ視聴者が貼りつけたリンクによって視聴者は増えていき、何時もの<フライングイーグル>の配信視聴者数を軽く突破していた。
だがそんな視聴者からのコメントのほとんどは『やめろ!』とか『狂ってやがる』といった少女の奇行を非難するものばかりであった。
しかし、その過程が流れる中で何かに気づいたであろう視聴者の1人がコメントを起こして波紋が広がった。
:あれ、もしかしてこの子って……ダンジョン料理人じゃね?
:知っているのか放電!
:ダンジョン料理人って、ダンジョン食材を使って料理を作る料理人だよな? 一度食べたことあるけど、あまり美味しくなかったイメージがあるぞ?
:まあゴミにゴミ掛け合わせても美味しいわけないからなー
:ダンジョン料理人殺害事件!
:「食材はおめーらだ」ってやつwwwwww
「ダンジョン、料理人……っ」
コメントを見る余裕が出てきた配信者はそのコメントを見つけ、驚きの声をあげる。
だがそれは少女が何であるかということを知ったことと、何をしているのか理解した声であったのだが……視聴者たちは気づかない。
【料理実食】
出来上がったスープを持ち、少女が集められた<フライングイーグル>の探索者たちへとそれを流し込む映像が流れ、少しすると石となった探索者たちは元の姿に戻った。
:は?
:え?
:え? どゆこと?
:石化を回復させた!? ありえねーだろ!?
:石化は基本的に受けて全身石化したら死亡確定と思えばいい。腕とかの部位が石化とかだったら特殊な道具を使用することで石化は除去できるけど、石化した箇所は一生麻痺が残ってしまうから探索者としての人生は終了するんだよ。
:なるほど、thks。って、じゃあ、これってどういうことなんだよ!?
:だからわからねーって言ってんだろぉ!?
そんな視聴者たちの混乱を他所に、続いて少女は切り分けたステーキを傷だらけの探索者へと食べさせるとまるで昔流行っていたバトルマンガに出てくるアイテムと言わんばかりに一瞬で探索者は元気になった。
:ふぁ!?
:ふぁーーーーっ!?
:え、これって、フェイク動画だっけ?
:見たことあるぅ、漫画とかアニメで見たことあるやつぅ!(白目
:何で死んでないんだよ! 死ねよ!!
:少ししたら穴という穴から血が噴き出すんだろ? な?
配信画面の光景に戸惑いのコメントとその直後に期待するコメントが流れる中、食べずにいた最後の1人もついに食事を口にして一気に食べはじめるのが映る。
その様子はドローンを通して視聴者たちに送られるけれど、時折映っている少女の様子に気づく者などだれも居ない。
いや、数名ほどは少女の行動に注視しているだろうが、コメントなど行わずにジッと見ているだけだろう。
(ダンジョン料理人と思われるあの少女、素材を狩る腕も超一流の上に、料理の腕も超一流ときたか……)
(画面越しの『鑑定』は正確な数値は分からないけど……上がっているわね)
(調理中にも見てたけど、なんて美味しそうなトマト、ナス、玉ねぎ、ニンジンなんだ! 彼らの表情を見て美味いのは分かるが……いったいどれほどの味なんだ!)
物凄い勢いで食べ続ける探索者たちを他所に、少女は黙々と残ったモンスターの処理を行い、自生した野菜を収穫し、ダンジョンの壁を崩して近くから洩れた水を使って鍋の中で煮込んでいた。
それから剥がしたモンスターの皮を何かして、畳んで置くのが見え……何かを書くとその場から去っていった。
:ちょ! 去ってった。去ってたぞ!?
:呼び止めてーーっ!
:食べるのに夢中すぎて気づいてねぇ!!
:くそっ、ドローンは配信者に焦点が合ってるから美味しそうに食べてる様子しか映らねぇ!!
様々なコメントが送られるが、一心不乱に食べる<フライングイーグル>の探索者たちは気づかない。
そうして、気づいたころには少女の痕跡は彼らが食べていた料理が入れられた器と食卓、それとスープの余りで……何とも言えない状態の中で配信は終了したのだった。
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