第43話 クソだねこいつ?!
江戸切子の作り方を学んだ俺達は、作った作品をアイテムボックスに放り込み、夜の歌舞伎町へと繰り出した。
「なんと煌びやかな街だ……。七色の光を放つ看板に、星の数ほどの人々。おまけに、夜でも昼間のように明るい……」
シドニアがフリーズしているが、俺はスルーした。
そして、向かった先は……。
「「「「いらっしゃいませ!」」」」
キャバクラである。
「……リック」
「どうした、セシル?」
「何だここは」
「あー、安心しろ、セックスする訳じゃねえからよ」
「……では、何をする?」
「ここはキャバクラっつってな。金はあるがモテない男達が、どうしても女と話したくて、金を払って会話してもらうという可哀想な空間だ」
「……この世界の男性は、度し難いな」
「因みに、ホストクラブって言う、モテない女達が男に金を払って接待してもらう逆バージョンもあるぜ!」
「もう訳が分からん!!!」
そんなん言われましても。
で、なんで来たかって?
「ドンペリタワーお願いしゃす!!!」
「ドンペリ入りまーす!!!」
「「「「キャー!!!」」」」
ドンペリが飲みたかった。
人生で一度はやりたいよね、ドンペリタワー。
「おお……、良いな!美女に傅かれながら、美酒を味わう……。なるほど確かに、金も払うべきだろう」
「それだけじゃないぞ?一流のキャバ嬢は、客を飽きさせないために色々な知識を持っているんだ。業務時間外にわざわざ勉強をしてる訳だな」
「それは素晴らしいな!この中に、カガクの知識がある女子はいるか?」
「はーい!」
「では、何か面白い話を聞かせてくれ。俺は何分、鄙者でな。この国のカガクという物を知りたいのだ」
まあそんな感じでどんちゃん騒ぎしてから、異世界で解散した……。
俺?
俺は好みのキャバ嬢をお持ち帰りして一晩楽しんだよ。
No. 1のリカちゃんって子だったんだけど、やっぱすげぇわ。
キャバ嬢も、トップともなると色んな知識持ってるし、頭も良いよ。
どんな業界でもピンキリだよなあ、信じられないようなアホも、素晴らしい知恵者も、どんなところにでもいるもんだ。
登校。
「「「「うわ、お酒臭っ!」」」」
うむ、仕方ないね。
「昨日は知り合いと歌舞伎町のキャバクラでな……」
「えっ、年齢……」
「バレなきゃヘーキよ、ヘーキ!」
この後、担任に音速でバレた。
で、反省文の提出を言い渡されたので、昨日のキャバクラでお持ち帰りしたキャバ嬢との情事を官能小説風に書いて提出したらクソ怒られた。
笑える。
「薬研君っー!!!」
「ははははは」
「何で!高校生が!風俗店で!お酒を飲んで!いかがわしいことをしてるんですかーっ?!!!」
「ははははは」
「笑い事じゃないですよ!!!」
「まあ落ち着けよ、俺は笑っている美幸が好きだぞ?」
あ、美幸は担任の教師の名前な。
「んにゃ?!た、担任の先生を口説かないっ!」
顔を真っ赤にして狼狽える美幸。
おいおい嘘だろ?
二十半ばくらいなのにおぼこなの?
レアキャラじゃん、かわいいなあ。
「んー?口説かれてると思ったのか?いやすまなかった、そんなつもりはなかったんだが……」
「な、ななな……?!」
「口説いて欲しかったとは夢にも思わなかったよ。これからはちゃんと可愛がるから、許してくれ」
俺はそう言って、美幸の肩を抱いた。
「にゃ、な、に、なな……?!!!」
完全にフリーズしている美幸を誉める。
「今日は一段と綺麗だな。君のその鳶色の瞳には惚れ惚れとするよ」
「ひゃ、ひゃいぃ……」
「ああ、そうだ。君に贈り物があるんだ。いきなり服やアクセサリを贈るのは良くないから、最初はこんなものはどうかと思ってね」
俺は、ライトボディで飲みやすいワインを渡す。
俺個人としては、フルボディのシラーワインが好きだなあ、鴨肉のローストにピッタリなんだ。
それに、シラーは、近頃ではフランス以外の産地のものも多い。
チリ産のシラーズとか、意外と馬鹿にできない美味さだぞ。
が、女の人は飲みやすいもの方が良いはず。
「これは、君のために選んだワインなんだ。俺のことを想って飲んでくれると嬉しい」
「あ、ひゃい!ありがとうです……!」
「それじゃ、また明日。愛してるよ、美幸」
俺は、美幸を抱きしめて、額にキスしてやる。
「はいぃ、また……」
美幸は、顔を赤く染めて、ふらふらと去っていった。
ヨシ!
ちょれぇわー。
あんなちょろいの、よく社会人やれてんな。
まあ、教師とか出会いがなさそうだし、男性耐性はあんなもんでも良いのかね?
俺が同僚だったら絶対ほっとかねえけどな。
絶対口説く。
ありゃ行けそうだったし、また今度押してみるか。
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