第24話 何いちゃついてるのさ……?

次の日。


普通に、ごく普通に学業が始まった。


なので、俺もごく普通に授業を受ける。


そうしていると、スポーツテストをやりますよ!と言うことになった。


体力テストはこの時期にやるものらしい。


良いじゃない、やってやろーじゃん。




50m走だ。


「「「「大神君、頑張ってぇ〜!!!」」」」


「ああ!応援ありがとう!」


あー、なんだっけ?


そう、大神君とやら。


なんかモテるらしいね。ファンクラブとかあるらしいよ?友人キャラの勘次が言ってた。


大神君とやらは、6.2秒のタイムを叩き出し、女の子達にキャーキャー言われてるよ。


「ちぇっ、あいつ、ちょっと顔が良いからってさあ」


勘次が悪態をつく。


「ちょっとあんた!大神君に文句でもあるのっ?!」


「ひえっ!な、何でもないですっ!ごめんなさい!」


おっと、勘次が大神ファンクラブの女に絡まれてるな。


「そうよそうよ!大神君に嫉妬してるんだわ!(裏声)」


俺も暇なんで追撃しておく。


「何でお前がそっち側なんだよ?!」


と、勘次がキレてるが……。


「いや、少なくとも俺はそっち(非モテ)側じゃねえぞ?俺、ハンサムだし」


「まあそりゃ、お前のファンクラブも小規模ながら存在してるらしいけどよ……」


へー、そうなんだ。


「マジで?美人なら誰でも受け入れるから、コンドーム持ってうちに来いって言っといてくれる?」


「そう言うところがあるから、大神のファンクラブと比べて規模が小さいんじゃねえかなあ……」


悲しいね。


「おーい、薬研ー!早く来い!」


っと、遊んでるうちに俺の走る番になったらしい。


「位置についてー、よーい、『ピィッ!』」


体育教師の『岡島秀樹(おかしまひでき)』とかいうゴリラみたいなゴリラがホイッスルを吹く。


「はい」


ちょっと速めに走る。


で、ゴール。


そして急停止。


「……は?!4.0秒?!!!」


おっと、世界記録を超えてしまったぞ。


「測定ミスか……?薬研、もう一回走れ」


「おう」


「返事は『はい』だ!」


「おう!」


二回目の測定。


「位置について、よーい、『ピィッ!』」


「はい」


「3.8秒だとぉおおおっ?!!!!」


周りの奴らも、明らかにぶったまげるゴリラを見て、色々と察したみたいだ。


「は、速過ぎねーか?」


「3.8?!世界記録が5.4だぞ?!」


「ヤバくね……?」


騒めくクラスメイト。


その中に、例の大神君がいたが……。


「……チッ!」


こっそり舌打ちしたのを、俺は見逃さなかった。


……意外と性格悪いのかねえ?




その後も、大神は、全科目で優秀な記録を叩き出した。


が……、俺がその後、人外レベルの記録を叩き出しているので、俺の噂が大神の噂を上回る形となり、結果として真っ当に頑張った大神が空気になってしまった。


え?


うん!


狙ってやったぞ!


よく分からんけど、俺はヒール(悪役)っぽいことやるの大好きだからな!!!


さて、昼休み。


「……お前さ、実はゴリラだったりする?」


「こんなハンサムなゴリラがいてたまるかよ」


「いや……、握力測定不能て……」


まあ、確かに握力計は破壊したが……。


「そんなことより、飯にしようぜ」


「あ、ああ、そうだな」


そんな話をしつつ……。


「捕獲!」


「ぬわあ!何をする?!」


天才少女の千佳を確保した。


「飯食いに行こうぜ」


「な、何故私が……」


「いや、ぼっちだし。かわいそうだなーって」


「なっ?!気を遣わなくて結構だ!!」


「まあいいだろォン?来いよオラァ」


「ぬわー!」


はい、回収と。


「あ、学食?僕らも一緒に行っていい?」


女装男子の瑠衣と、その彼女の香苗が、二人で俺の前に来た。


「良いぞ」


了承する。


「わーい」


あとは……。


「よう、お嬢ちゃん!お昼一緒にどうだい?」


「え?あ、は、はいっ!」


何故か孤立している病弱少女の栞を誘う。


ついでに、クラス一番の美人である亜里沙も誘おうと思ったが、亜里沙は既にどっか行ったみたいなんで断念。




さて、学食に来たが……。


「俺、弁当派なんだよな」


そう言って、俺は弁当箱を六つほど机の上に出した。


「……何これ?」


瑠衣は放心しながらそう言った。


「いや、弁当だが?」


「いや……、いやいや!多い!多いよ?!」


「あー、御白だっけ?こいつ、中学の時からこうだぜ?」


俺の奇行に慣れている勘次は、そう言って自分の弁当箱を広げる。


「給食なんかじゃ足りねーって言ってさ、昼休みのたびに学校を抜け出して、近所の定食屋のメガ盛りメニューを食ってきてさあ」


「えぇ……?もうそれ、漫画キャラか何かだよね?」


「まあでも、こいつのこのガタイを見ればなあ……。身長210cmで、体重は145kgで、体脂肪率は9%だとさ……」


「……君はボディビルダーか何かかな?」


千佳が化け物を見る目でこちらを見る。


「え、えっと……、逞しい男性は素敵だと思いますよ?」


と、栞からの謎フォロー。


「ついでに言えば、これ全部俺の手作りだぞ」


「「「「えぇ……?」」」」


全員が困惑の表情を見せる。


何でじゃ。


「俺が料理しちゃおかしいのか?」


俺は、手作りのサバの味噌煮を口に運びながら文句を言う。


マッチョが料理しちゃいかんのか?


「いや、イメージに合わないぜ?」


冷凍の唐揚げを齧り、白飯をかき込む勘次。


勘次の弁当は、親が作っているらしい。


「家庭的な男性も良いと思うよ?」「私より上手い説」


そう言って、やたらとガーリィなピンク色の弁当箱から、タコさんウインナーを食べる瑠衣と香苗。


瑠衣と香苗の弁当は、香苗が早起きして作っているらしい。へえ、可愛いとこあるじゃん。


「そもそも、まともに食事できるのが羨ましいです……」


苦笑いを浮かべる栞は、ウイダーインゼリーだけ。そんなんだから身体悪くするんじゃねーのかな?


「平常時で体脂肪率が一桁とか、どう考えてもおかしいんだが……」


そう言って、クリーム入りのメロンパンをエナドリで流し込む千佳。エナドリは食事のお供じゃねえだろうがよ。


「千佳、栞。お前ら、そんなんじゃ身体壊すぞ?」


「僕はこれで良いんだ。脳に必要な糖分さえ摂れればそれで充分だよ」


「私はそもそも、あまり食べられなくて……」


うーん……。


「ほれ、あーん」


「むぅ……、だから要らないと……」


「あーん」


「はぁ、分かったよ。もぐ……?!美味しいじゃないか!」


その後、千佳は喜んで俺の弁当の一部を食べた。


栞は、固形物がどうも駄目みたいだな。


「……あれって、普通に間接キスだよね?」


「あんなことを平気でやる理玖がおかしいのか、それを受け入れる光坂がおかしいのか……」


瑠衣と勘次が俺達をおかしい人扱いしてくる。


そうか?おかしいのか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る