第21話 何やってんのかなー?また女の子引っかけてんのかなー?
都立冷泉高校。
東京都某所の、偏差値60前後のなんちゃって進学校だ。
本日、四月七日に入学式が午前八時四十分時からある。
俺は、いつものように午前六時に起床して、日課のランニングを済ませる。
そして、朝食を摂り、身支度を整え……。
「デモハンでもやるッかぁ〜!!!」
二時間ほどゲームをしてから登校した。
え?昨日?
昨日はあの後、鰐の顎団殲滅を祝って夜通し飲み明かし、セシルにしばらく来れないと伝えてから日本に帰ってきたぞ。
この高校はどうやらブレザーらしい。
が、俺はこの、一昔前のエロゲみたいなブレザーは着たくない。
大体にして、俺が割とマッチョなのもあり、制服のサイズに身体が合ってないんだよな。
俺、やっぱりこう見えてもハーフだし、身体がデケェんですわ。
なんで、夏服の半袖ワイシャツを着る。
マッチョはね、代謝がいいからあんまり寒くないんだよ。
で、胸元のボタンを三つくらい開けて、首元にはネックレスを掛けておく。
あ、ワイシャツの中にはちゃんとシャツ着てるよ。
それと、財布と定期券、スマホを持ってハイ出発。
妹の奴は、外では真面目な文学少女で通っているから、俺のように入学式サボりのようなことはせず、ちゃんと学校に行ったみたいだ。
俺は、ウィンテンドウトゥイッチの電源を消して家を出る。
足立区の家から、ちょっと歩けばすぐに駅前。
満員電車じゃないのは助かるな。
しばらく電車に揺られて、墨田区に到着。
この辺はあんまり来たことないが、まあ、流石に高校までの道くらいは覚えている。
よし、高校に到着、と。
高校では、まだ入学式をやっているらしいな。
人気がないんだもの。
お?
「ひっ!き、君は……?」
おっと、事務員のおじさんと出会ったぞ。
「いやー、すいません!道に迷って遅刻しちゃいました!」
「あ、ああ、そうなんですか。えっと、クラスは?」
「あー、1-Aです」
「じゃあ、教室で待っていてもらえますか?1-Aはあっちですよ」
「はい、ありがとうございますー」
え?下手に出た理由?
いやそりゃ、弱そうな事務員のおじさんをいじめてもなあ。
このおじさん、俺のことを不良か何かだと思ってビビってるもんこれ。
クラスに到着、と。
「お?」「あ」
誰かいるぞ?
女だ。
栗毛の、眼鏡をかけたチビの女。ブレザーの上から白衣を着ている。
「よう、嬢ちゃん。アンタもサボりかい?」
「……ふん。君のような不良と一緒にしないでくれたまえ。僕はただ、式典などと言う時間の浪費を避けて、より為になることをしていただけさ」
ほー、生意気じゃねえか。
「言うねぇ。じゃあ、何やってたんだ?」
「君には関係ないね」
「そう言うなよ、暇なんだ、お喋りしようぜ」
「チッ……、君のような馬鹿には理解できないよ」
「おいおい、コミュニケーションは大事だぜ?嬢ちゃんはどうやら、お勉強が得意なんだろうが、それだけじゃ世の中は渡っていけねえぞ?」
「ハッ!それはどうかな?僕のこの圧倒的な頭脳をもってすれば……」
うーん?
「あのさ、お前のその圧倒的な頭脳とやらも、認めるかどうかを決めるのは大多数の凡人なんだわ。無駄に敵を作るのは良くないぞ?俺みたいに腕力で解決できるなら構わんのだが」
「ふん!腕力だと?この法治国家である日本で腕力なんぞひぁああ?!!!」
俺は、お嬢ちゃんを押し倒した。
「入学式で周りに人はいない、この部屋には二人きり。圧倒的な腕力で押さえつけられたぞ?さあ、どうする?」
「き、お、あ、お、お前っ?!お前、お前っ!!!な、な、何を?!!!」
「このまま、一枚一枚、お前の服を丁寧に剥いで……、『酷いこと』をしてやってもいいんだぜ?」
「う、うぁ……」
頬を染めるお嬢ちゃんの上着を……って。
まあ冗談だが。
俺はお嬢ちゃんを立たせてやる。
「とまあ、粋がってる女なんて、ヤベェ男に犯されるのがテンプレだからやめた方が良いぞ。お嬢ちゃんは顔がいいからなあ」
「あ、う、えっと……」
「で、お嬢ちゃんって何やってんの?研究分野とか教えてよ」
「あ、ああ、うん、物理だ」
「へー、物理の何?」
「量子物性物理学」
「へえ、マテリアルサイエンスか。物質のマクロ的な性質をミクロ的な観点から研究するんだったかな?量子力学と統計力学だからほぼ数学じゃん。良いじゃん、面白そう」
「……分かる、のか?!」
え?
いやそりゃ、チートで知能を上げたからな。
「わ、私は、今は高温超伝導の分野に興味があって……」
「炭素質水素化硫黄(CH8S)が267GPaの圧力下において、287.7K(15℃)で超伝導状態になる……、だっけか?ネイチュアーで読んだわ」
「それを知っているなら話は早い!実は、私の父が帝都大学で教授をやっていてだな、そこで……!」
お嬢ちゃんは、黒板にゴリゴリと理論を書き連ねた。
「ここが、こうなってることがわかったんだ!」
「え?でも、ここはこうじゃない?」
「いや、そう思われていたんだが、ここはこうだと判明したんだ」
「ふーん、どう言う実験をやったの?」
「この環境下において……、ああ、もう、日本語での議論は迂遠になってしまう!英語に切り替えても良いか?」
『良いよ』
『では、ここはこうなっていて……』
『でも、ここはこうした方が良くないか?』
『……ふむ、続けてくれ』
『いや、だからさ、ここはこうして、こうするんだよ』
俺が、黒板の空きスペースにゴリゴリと理論を書いてやる。
『メリットは?』
『ここはこうすると、ここがこうなるだろ?』
『微々たるものだが、確かにそうだな……』
一時間後。
「あ、あの……?」
「ん?何だ?」
俺が振り向くと、巨乳の女教師が立っていた。
良く見れば、他にも生徒達が来ている。
ああ、入学式が終わったのか。
「おっと……、すまんね。ほら、嬢ちゃん!」
「ま、待て、この理論をノートに書き写してから……」
「スマホで写真撮れば良いだろ!ほら、退がれ退がれ!」
「ウワーッ!」
お嬢ちゃんを膝の上に乗せて、と。
「ほら、ホームルームでも何でもしてくれよ、センセイ」
「あ、えっと……、は、はい!」
よし、じゃあ、初めてのホームルームと行きますか。
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