第26話 いやぁ、僕が選んだとはいえバッチリ狂ってるね!

で、次の日。


まだいる運動部共をなぎ倒しながら、教室に入ると……。


「薬研君っ!!!」


栞が、俺の胸に飛び込んできた。


「おう、栞。今日も可愛いな」


俺は、栞を受け止めて、頭を撫でてやった。


「治ったんです!全身に転移していた癌が消えて無くなりました!投薬と手術でボロボロだった身体も全部元通りに!手術痕も全部消えて!」


嬉し泣きしながら、栞は俺にそう訴えかけてきた。


あ、やっぱり効いたんだ、エリクサー。


「おー、そりゃおめでとう!幸運の女神様はバイだったのかもなあ、美女にも微笑んでくれたか」


とりあえず、俺は惚けておく。


だが、あそこまで思わせぶりなことを言っていた以上、病気の治癒の原因は俺であるとバレているだろうな。


「ふふっ、では、そういうことにしておきましょうか」


などと言って、栞は俺の腕に抱きついた。


「……何かあったの?」


瑠衣の疑問は当然だった。


昨日まで、真っ青な顔をしたガリガリの女が、今日は、女らしい身体付きを取り戻しているんだからな。


「ま、ちょっとな」


俺は適当にはぐらかす。


言ってもいいが、ここはちょっとミステリアスな感じを残した方が主人公感が出てカッコいいと判断したので……。


「って言うかNTRだよ!ヒロインの座は渡さないよ!」


そう言って、俺のもう片方の腕に抱きついてくる瑠衣。


「お前、ヒロインだったのか?」


「え?ダメ?」


こてんと首を傾げる瑠衣。可愛いんだよなあ。


「まあ、それもアリか」


「わーい!」


そんなことをしていると、いつの間にやら登校していた勘次が、挨拶もそこそこに俺に言った。


「お、おい、理玖!」


「どうした?」


「なんか、お前がホモだって言う噂が……」


「そうなの?」


「違うだろ!……ち、違うよな?」


うーん……。


「いや、美少年なら抱けないこともないが……?」


俺がそう言うと、教室の連中が騒めいた。


「マ、マジかよお前?!」


勘次がたまげている。


「わ、じゃあ僕にもチャンスある感じなんだ!」


瑠衣が喜んだ。


んー……?


おかしいか?


「チンポぶち込んでメスにしちまえば、相手の性別なんて関係ないぞ」


と、俺が持論をぶちまける。


「そ、そうか」


勘次が一歩引いた。


「あとさ、こう言うこと言うと、箸にも棒にもかからない普通の男が『俺もレイプされるかも?!』みたいなこと言うけどな、自惚れんなよ。俺は良い女にしか興味ないし、男っぽい男は好きじゃない」


それなんだよな。


俺の実質的な育ての親である傭兵部隊にも、ホモの男がいたが、そいつも『イケメン以外に一切興味がないのに、ブサイク男にキモいとか言われんの意味わかんねー』と言ってたが、それに完全同意だ。


そもそも、俺はホモではない。


可愛ければなんでも良いだけだ。


可愛ければ、正統派美女だろうが、女装美少年だろうが、果ては猫耳人外少女だろうが、ロリだろうが熟女だろうがなんでも良いのだ。


俺はそう言った。


「あー……、なるほどな。可愛ければなんでも良い、俺のことは可愛くないから全然興味ない、ってことか?」


と、勘次が警戒を解いて言った。


「だから、そう言ってんだろ?」


「因みに、男とヤったことってあるか?」


「あるぞ」


「おおぅ……。女とヤったことは?」


「あるに決まってんだろ。あ、女の方が遥かに多いぞ」


俺がそう言い放つと、方々で批判の声が上がる。


やれ、最低だの、変態だの……。


そんなん言われてもなあ。


じゃあお前らは何で生まれてきたんだ?って話になるじゃろがい。


セックスの結果生まれてきた生命体がセックスを忌避するってバグだろ。


どれもこれもジーザスのクソ野郎のせいだ。


あいつのせいで、性的な快楽は悪!みたいな価値観が世の中に広まったんだ。ふざけやがって、もう一度磔にされちまえ!




さて、放課後……。


勧誘合戦が非常にウザいので、蹴散らすことにした。毎日付き纏われるし……。


俺は、放送室をジャックして、全校生に向けて宣言する。


『あー、あー、聞こえてるかな?俺は薬研理玖だ。運動部の連中に告ぐ。俺を勧誘したくば、俺に勝って見せろ!俺に勝てたら、その部活に所属してやる!まずはボクシング部からだ、一番強い奴はグローブをつけて待ってな!!!以上』




「ふふふ……、待っていたぞ、薬研!運動部全体に対する挑戦とは恐れ入るぜ!だが、この俺は、全国大会三位になった腕前だ!素人が勝てる訳ないだろ!」


なんか言ってるな。


ボクシング部のエースらしいが……?


野次馬もめちゃくちゃ多い。


という訳で、俺は上半身を曝け出す。


「「「「おおおーっ?!!!」」」」


「す、すっげぇ……!!!」


「何だあの筋肉?!」


「まるでハガネみてえだ……!」


「しかしあいつには勝てないぜ!」


「デカい……!」


俺は、ボクシング部の部員からグローブを受け取り、装着してからリングに上がる。


マウスピースを拒否して、無理矢理ゴングを鳴らさせる。


「な、舐めやがって……!後悔するなよっ!!!」


ボクシング部のエースの、ストレートパンチが俺の顔面に突き刺さる。


が……。


「効かねえなぁ……?」


「な、なぁ?!!!」


「おら、もっと打ってこい!!!」


「し、シィッ!はあっ!」


二発!三発!俺の身体に拳が突き刺さる。


「全くもって効かねえなあ!今度はこっちから行くぜ?」


「っ!!!」


その一言を聞いたエースは、顔面をガードする構えをとったが……。


「おらぁ!」


「〜〜〜ッ?!!!」


俺の、人体では到底あり得ない速度のストレートパンチは、エースの顔面をガードの上からしっかり捉えた。


ガードした腕は粉砕。エースの身体は、車に撥ねられたかのような勢いで吹っ飛ぶ。


リングのロープから飛び出て、ボクシング部の雑貨をしまう木棚にエースの身体は突っ込んだ。


「きゅ、救急車を呼べえええええっ!!!!」


大騒ぎになった。


が、俺は、レフェリーであるボクシング部の部長を捕まえて……。


「おい、俺の勝ちだろ?」


「ば、バカかお前?!!!あいつ、このままだと死んじまうぞ?!!!」


「俺の勝ちだ、勝利の宣言をしろ」


「い、今は、そんなこと言ってる場合じゃ」


「俺の勝ちだ。観客全員に宣言しろ」


「ああ、もう……!試合は薬研の勝ちだ!……これで満足かよ?!」


「ああ、満足だ」


俺は、グローブを返却してから、外野に向けて宣言した。


「次は剣道部だ」




こうやって全部活を周り、その部の主将を一騎打ちでぶちのめしてやった。


サッカー部は、俺一人vs一軍全員の勝負で、野球部は一番強い投手とやり合った。


どれも、相手0点のコールド勝ち。


一日にして校内最強の座を得た……。


あと、担任から怒られたが、どれも「スポーツのルールの上で問題はなかった」し、周りの生徒もそう証言したので、停学とかにはならなかった。

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